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63 雲行き
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⬜︎モンスター情報
【ジャイアントロックスパイダー】:
地属性の巨大蜘蛛型モンスター。
通常の蜘蛛型モンスターより硬さと攻撃力ともに高くなっている。
ただし糸を吐く能力は失われている。
そのかわりに地に宿るマナを脚から吸い上げて行う再生能力と、厄介な【ロックスパイダーボム】を召喚する能力をもつ。
【ロックモック】:
地属性の雲型モンスター。
常に浮遊しているが硬い。硬いだけではなくその体は柔軟性や弾力もあり、空を主戦場とする上に動きも素速い。たとえ上手く捉えても生半可な攻撃ではこのモンスターのことを倒しきれないだろう。
雷や雨雹を模した地属性の遠距離魔法に注意。
【ロックスパイダーボム】:
触れると自爆する小型の石蜘蛛。
足元に注意。
⬜︎
やって来た《ちゃいろのダンジョン80階》、上階になるほどにやはり敵は強くなりダンジョンの攻略難易度は厳しさを増す。しかし備えあればそこに恐れと油断はない。階層主であると思われるボスコンビとの戦闘になったブク高パーティーは、閉ざされた石色の大部屋にて蜘蛛型と雲型、2体のボス級モンスターの分断に成功した。
巨大石蜘蛛の相手をすることになったのは、やはりブク高唯一の男子生徒であるピネス。
鋭く長い前爪脚の攻撃は言うまでもなく強烈。八つ脚を操り地を抉りとる攻勢凄まじい巨大蜘蛛に対して、ピネスは赤と緑のSPスニーカーで地を駆け回る。とにかく汗水を垂らし、串刺しにされないように動き回り巨大な敵を翻弄する。
攻守鉄壁の蜘蛛のリーチと殺気をかいくぐり、ピネスが虎視眈々と敵の隙を探そうとしていたその時──
ピネスの残像へと振り下ろされた蜘蛛の脚爪は、地を抉る本来の威力を発揮することはなかった。
巨大蜘蛛のモンスターが今抉ろうとした地が不思議な弾力を帯び、そこを踏みつけた途端何故か軽やかな音色が鳴り響いた。そして、なんとも奇妙にも巨大蜘蛛らその地を踏み抜けず。踏ん張りの利かなくなったその長脚ごと上方へぴょんと跳ね返されてしまった。
「音?? サーチさんか、さんきゅー!」
羽帽子を被るサーチは彼の声を耳にし口角を上げた。さらに練り上げ楽器を満たした魔力と共に、手持ちのハープを厳かに奏でた。
奏でられる【ツチの歌】──届いた音を吸収し魔力を含んだ地面が、不思議に弾む愉快な天然の楽器になり、巨大蜘蛛の持つ敏感な蜘蛛脚があわあわと立つ地にまるで踊らされるように弾かれてしまう。
ただただ手強く冒険者たちの命を狙う、巨大蜘蛛のモンスターの愉快なタップダンスなど滅多に拝めない。
そうそう拝めないそんな踊りつかれたチャンスには──
大きな魔力の刻まれた六芒星のエリア内から繰り出したのは、雷光纏う三日月。必中のタイミングでヒットした【サクイチゲキ】が、踊り明け暮れていた右の蜘蛛脚をまとめて鋭くもいだ。
だが依然、倒しきれず──。はちゃめちゃに踊り動く蜘蛛ボスの胴体を狙いきれなかったようだ。まだまだ精度に課題のある外れたイチゲキでは、蜘蛛ボスの息の根を絶てず。
「やべっ!?」
蜘蛛ボスは、子蜘蛛【ロックスパイダーボム】たちを脅威である剣士へと体内から召喚し急速発進させる。
八つの内の三つ脚をすっぱりもがれたとて、地属性虫型モンスター由来のその生命力は伊達ではない。
大技を放った剣士の隙へとわらわらと送り込まれた増援の子蜘蛛たちは、地を高速で這い進みながら────弾む地面、弾む音色に起爆。
蜘蛛の子が散っていく、逃げる間もない。
断末魔は『ドレミファドドド──』
またしてもサーチが奏で音を地面に記録し仕掛けたトラップにより、ロックスパイダーボムたちを一掃、ピネスへと向かった攻撃を遠隔から援護し防いだ。
「よっしゃー!! 反げ」
子蜘蛛たちをけしかけた間にも、抜け目なく、もがれた脚の再生を始めていたボスモンスターの姿が見える。
そんな悠長をする猶予を許すわけはない。ピネスは意気揚々と前へと駆け出した。彼のその猛る剣がアンバランスな五脚で聳える巨大ターゲットへと向かう。
だが、勇ましき魔力を帯びたその剣の切先が辿り着くよりも速く、────抉り取った。
「やっぱ弾があるといい感じだね。でもでも色んなお膳立てと仕込みありでこれかー。単純威力はそこそこだけど、えらく長い溜めがあるのが難点だねぇ。これだと人型相手のガチの実戦では出す間も────あっ、弟子っちおつかれー」
切先の先を駆け抜けたのは、緑の球体。ターゲットへとぶち当たった球体は岩蜘蛛の胴体をみるみると削り取った。
登別の異能カードで付与されたグー属性と稲妻を纏ったエネルギー球は、敵の後ろまで貫通し、やがて消滅──。
八つ脚の連なる胴体を修復不可能にまでやられ、形を保てなくなったボス級【ジャイアントロックスパイダー】は、ごろごろと石塊を地に落としながら崩れ去った。
突然放たれた緑に光るドッヂボールで弟子の手柄をかっさらった用務員の池原は、顎に手をやりながら、ぶつぶつと何かをぼやいている。どうやら先ほど試射したその技が彼女の中で納得がいかないご様子だ。
「おっ、おつかれ……?? 弟子っちって言われたことねぇが……ってまだ終わってねぇぞモンスっ」
「まま、君の出番はあたし戦闘のプロのアシスタントで終わってなよ。ここはダンジョンっみんなチカラ試ししたいの、よっ!」
納得いかないのはこちら側だと言いたげな消化不良のピネスは、まだ残るモンスターの方へと援護に向かおうとしたが、池原がそんな急く彼のことをやんわりと止めた。
「おっ、おぅ……って俺アシストもタントしたつもりもなくてさ」
「え、そうなの? じゃそりゃ君が下手なだけだぁー。にゃはは」
「ご、ごもっとも……!」
池原の言葉はごもっとも。苦笑しながら受け入れたピネスは、向こう側で奮闘している仲間たちの活躍をここから見守ることにした。
【ジャイアントロックスパイダー】:
地属性の巨大蜘蛛型モンスター。
通常の蜘蛛型モンスターより硬さと攻撃力ともに高くなっている。
ただし糸を吐く能力は失われている。
そのかわりに地に宿るマナを脚から吸い上げて行う再生能力と、厄介な【ロックスパイダーボム】を召喚する能力をもつ。
【ロックモック】:
地属性の雲型モンスター。
常に浮遊しているが硬い。硬いだけではなくその体は柔軟性や弾力もあり、空を主戦場とする上に動きも素速い。たとえ上手く捉えても生半可な攻撃ではこのモンスターのことを倒しきれないだろう。
雷や雨雹を模した地属性の遠距離魔法に注意。
【ロックスパイダーボム】:
触れると自爆する小型の石蜘蛛。
足元に注意。
⬜︎
やって来た《ちゃいろのダンジョン80階》、上階になるほどにやはり敵は強くなりダンジョンの攻略難易度は厳しさを増す。しかし備えあればそこに恐れと油断はない。階層主であると思われるボスコンビとの戦闘になったブク高パーティーは、閉ざされた石色の大部屋にて蜘蛛型と雲型、2体のボス級モンスターの分断に成功した。
巨大石蜘蛛の相手をすることになったのは、やはりブク高唯一の男子生徒であるピネス。
鋭く長い前爪脚の攻撃は言うまでもなく強烈。八つ脚を操り地を抉りとる攻勢凄まじい巨大蜘蛛に対して、ピネスは赤と緑のSPスニーカーで地を駆け回る。とにかく汗水を垂らし、串刺しにされないように動き回り巨大な敵を翻弄する。
攻守鉄壁の蜘蛛のリーチと殺気をかいくぐり、ピネスが虎視眈々と敵の隙を探そうとしていたその時──
ピネスの残像へと振り下ろされた蜘蛛の脚爪は、地を抉る本来の威力を発揮することはなかった。
巨大蜘蛛のモンスターが今抉ろうとした地が不思議な弾力を帯び、そこを踏みつけた途端何故か軽やかな音色が鳴り響いた。そして、なんとも奇妙にも巨大蜘蛛らその地を踏み抜けず。踏ん張りの利かなくなったその長脚ごと上方へぴょんと跳ね返されてしまった。
「音?? サーチさんか、さんきゅー!」
羽帽子を被るサーチは彼の声を耳にし口角を上げた。さらに練り上げ楽器を満たした魔力と共に、手持ちのハープを厳かに奏でた。
奏でられる【ツチの歌】──届いた音を吸収し魔力を含んだ地面が、不思議に弾む愉快な天然の楽器になり、巨大蜘蛛の持つ敏感な蜘蛛脚があわあわと立つ地にまるで踊らされるように弾かれてしまう。
ただただ手強く冒険者たちの命を狙う、巨大蜘蛛のモンスターの愉快なタップダンスなど滅多に拝めない。
そうそう拝めないそんな踊りつかれたチャンスには──
大きな魔力の刻まれた六芒星のエリア内から繰り出したのは、雷光纏う三日月。必中のタイミングでヒットした【サクイチゲキ】が、踊り明け暮れていた右の蜘蛛脚をまとめて鋭くもいだ。
だが依然、倒しきれず──。はちゃめちゃに踊り動く蜘蛛ボスの胴体を狙いきれなかったようだ。まだまだ精度に課題のある外れたイチゲキでは、蜘蛛ボスの息の根を絶てず。
「やべっ!?」
蜘蛛ボスは、子蜘蛛【ロックスパイダーボム】たちを脅威である剣士へと体内から召喚し急速発進させる。
八つの内の三つ脚をすっぱりもがれたとて、地属性虫型モンスター由来のその生命力は伊達ではない。
大技を放った剣士の隙へとわらわらと送り込まれた増援の子蜘蛛たちは、地を高速で這い進みながら────弾む地面、弾む音色に起爆。
蜘蛛の子が散っていく、逃げる間もない。
断末魔は『ドレミファドドド──』
またしてもサーチが奏で音を地面に記録し仕掛けたトラップにより、ロックスパイダーボムたちを一掃、ピネスへと向かった攻撃を遠隔から援護し防いだ。
「よっしゃー!! 反げ」
子蜘蛛たちをけしかけた間にも、抜け目なく、もがれた脚の再生を始めていたボスモンスターの姿が見える。
そんな悠長をする猶予を許すわけはない。ピネスは意気揚々と前へと駆け出した。彼のその猛る剣がアンバランスな五脚で聳える巨大ターゲットへと向かう。
だが、勇ましき魔力を帯びたその剣の切先が辿り着くよりも速く、────抉り取った。
「やっぱ弾があるといい感じだね。でもでも色んなお膳立てと仕込みありでこれかー。単純威力はそこそこだけど、えらく長い溜めがあるのが難点だねぇ。これだと人型相手のガチの実戦では出す間も────あっ、弟子っちおつかれー」
切先の先を駆け抜けたのは、緑の球体。ターゲットへとぶち当たった球体は岩蜘蛛の胴体をみるみると削り取った。
登別の異能カードで付与されたグー属性と稲妻を纏ったエネルギー球は、敵の後ろまで貫通し、やがて消滅──。
八つ脚の連なる胴体を修復不可能にまでやられ、形を保てなくなったボス級【ジャイアントロックスパイダー】は、ごろごろと石塊を地に落としながら崩れ去った。
突然放たれた緑に光るドッヂボールで弟子の手柄をかっさらった用務員の池原は、顎に手をやりながら、ぶつぶつと何かをぼやいている。どうやら先ほど試射したその技が彼女の中で納得がいかないご様子だ。
「おっ、おつかれ……?? 弟子っちって言われたことねぇが……ってまだ終わってねぇぞモンスっ」
「まま、君の出番はあたし戦闘のプロのアシスタントで終わってなよ。ここはダンジョンっみんなチカラ試ししたいの、よっ!」
納得いかないのはこちら側だと言いたげな消化不良のピネスは、まだ残るモンスターの方へと援護に向かおうとしたが、池原がそんな急く彼のことをやんわりと止めた。
「おっ、おぅ……って俺アシストもタントしたつもりもなくてさ」
「え、そうなの? じゃそりゃ君が下手なだけだぁー。にゃはは」
「ご、ごもっとも……!」
池原の言葉はごもっとも。苦笑しながら受け入れたピネスは、向こう側で奮闘している仲間たちの活躍をここから見守ることにした。
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