【R-18】異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:

山下敬雄

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 深夜に校長室に訪れたのは、PINEに送りつけられたメッセージに「至急──」と書かれていたからだ。

 何事かと思いつつも、今日はあちこちと校内をうろつき忙しかったピネスが、呼び出された部屋の中へと来てみれば、聞かされた用件は以下の通り。

『愛用していた不黒文魂の武器【ふぅーちゃん棒SP改(刺股魔法杖)】なる装備が、新加入メンバーを優先し外されてしまった今、私にはお下がりではない次なる魂の武器が必要だ。〝だから〟ピネスくん、キミにも校長先生のその大事な武器の選定を手伝ってほしいのだよ』ということであった。

 〝だから〟の意味はいまいち飲み込めずにいたピネスであったが、確かに愛用していた武器がなくなったその気持ちは理解できる。彼自身、直近の記憶でも修理したばかりの武器が粉々になったばかりだ。結果的には運良くまた剣は直してもらえたものの、だからと言ってまったくの他人事とは思えなかった。

 ふぅーちゃん棒あらため刺股ダブル改は、自分の元相棒でもある。目の前にいるのはそれを自分から取り上げお下がりなど宣う張本人であるものの、少しは共感できる部分もあったので、頷いたピネスは校長の武器選びに協力することにした。



 信頼を置く男子生徒からの協力を得た不黒文校長はさっそく、剣、斧、ハルバードと基本的なものを順々に構えて武器に魔力を流し試したが──

 攻撃魔法と召喚術を主に扱う魔法師かつネクロマンサーであるという自負があるため、校長はいかにも前衛がするような装備には、手に取ってみてもあまりしっくりこないご様子だ。

 その後も校長はダンジョンでこれまで拾った様々な種類の武器を試遊し厳選を重ねていった。

 小一時間──オシャレ好きの女子の服選びに付き合うほどの待ち時間が過ぎてゆき……不黒文校長の魂の武器、その最終候補として挙がったのは、


 【杖】武器に刻み込まれた魔法師らしい魔法の習得が可能、魔法の微細なコントロール、発動位置を指定したりの要素を補助しやすい。さらに近距離戦での鈍器としても非常に使いやすい。木浪も使い込んでいるスタンダードタイプ。迷ったらこれ!

 【弓】味方を召喚して戦う不黒文のスタイルには合っている。しかし身体的な技量と集中力に影響されやすい武器のため、魔法と併用するのにはこなすべきタスクが多い。今までとはまったく違った練度が必要な武器である。だが、不黒文の異能との噛み合わせは悪くない。使いこなせればますますスペシャルな女性になれることだろう。ブク高のマドンナのVenus生徒も、影ながら弓の鍛錬を積んでいるのだとか……。

 【サイス(鎌)】体内のどこかにある漆黒の血が騒ぐほどお好きらしい。眼帯にも似合うからとても良いらしい。校長様のお通りである。


 以上の三種に加えて、もうひとつ。

「その傘をさしていてくれ」

 校長にそう言われたピネスは、もらった傘をパッと天へと広げ咲かせてみたものの。

 ここは室内、とくに雨など降らない。

 だが、これも何か深い意味があるのだろう。そう思ったピネスは、この校長室をダンジョンの一室と見立て、頭の中でモンスターを配置しシミュレートしてみる。しかし、どうこう考えてみるも、モンスターを倒せるイメージは湧かない。ピネスにはこれを立派な武器としては、どうにも使いこなせそうもないようだ。剣のようにごっこ遊びをし扱うのが関の山だろう。

(そもそも傘は武器なのか? あぁー確かに、開いたら効果やら強度しだいでは盾にはなるかんじか? ぅーー……でもなんか俺としてはなぁ……傘だと気合いが入らないっつぅか。イメージ湧かないな)

 傘をさし、数分シミュレートしてみたものの、やはりイメージは湧かない。その時何故かふと、『強くなる』そんな幼い時に言ったか、言ってないか記憶にあやふやな言葉を彼は思い出した。

「校長せんせー、あのぉー……そろそろいいでっ────」

 何か妙な握り心地だ。その曲がった傘の柄から、やはりあまりいい感覚を得られないと思ったピネスは、そろそろこうして立ったまま傘をさす行為をやめていいかと、校長に尋ねた。

 だが、意味のない影に覆われていたピネスは言葉途中で────ばたり。その場に突如、力なく倒れた。


「フッフ、なるほど……。そろそろ効いてきたといったところか。フッフッフ……」

「なっにっ……を……────────」


 『コツ……コツ……』と音を鳴らしゆっくりと近づくヒールの音。やがて屈み伸ばされた手が、床に無造作に転がっていた傘を拾い上げた。

 女は真っ黒な傘をさす……。

 疼く眼を覆う眼帯をはずし、プラチナ髪がわずかに部屋に吹いた妖しげな風に流され、ユラユラと靡いている。

 さした傘から落とした薄い影が、徐々に濃く染まる。妖しげに蠢きながら、まるで彼女の元へと帰るように影は重なり集っていく。

 舌をなめずり微笑う黒い瞳と灰色の眼、その悪魔的な表情を最後に……。

 2-D男子生徒浦木幸は、校長室の絨毯の上でへばりついたように動けず、気絶した────。
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