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そのご尊顔が露わになる。しかし星男のスタンスはサングラスのフィルターひとつを排除しただけでは変わらない。だが口調は、少し冷静でまともな雰囲気になった。
「もっともっと……君に彼女の星をあげよう!! まだ足りていないだろう!! ホハハハ」
「くれてもいいけど、俺は壊すぞ! あぁー……。この後も、きっと上のほうに予定があるからサァ! 悪ぃけど、星はもうそろそろいいかなって!」
飽きずに付き合ってくれた目の先にいる少年に敬意を表してか、素顔を見せた星男は緋色と翠色の特大の星のマジックを左右に侍らせるように並べた。
そしてピネスもいつまでも遊んでいるわけにはいかない。この星男の背を越え次へと続く、あの螺旋階段を突き進まなければならない。しかし一筋縄ではいかないジレンマがあるのも事実。やはり通せん坊する目の前の頑なな星を砕いて、知らない惑星の故郷へと満足しお帰りになってもらうしかない。
「そう予定通りにはいーーーーッかない、予定にない出会い……それは果たして幸か不幸かどのホシかァ? その魔力その剣その理解ッ、どれほどのものを扱えるのか、君が教え示す番だ! 慌てるな慌てるなこの星のバランスは、まだ崩れるほどじゃないーーッ。んっん~~? ──そんな顔をするなっ、そう何が言いたいかというと、つまりは!! 私の心にすむ彼女の星がッ、君の手を欲しているのだよ!! ナラバのナラバッ、じっくりみきっ」
それまでのようにおどけているだけではない、星男は感情豊かに饒舌に語り出した。だが、長々と分からぬ事を熱く少年に語りかけていると、突然──。
星男の両サイドで魔力をうずうずと煌めかせ待機していた緋色と翠の輝ける特大の星が、散り散りに────砕けた。
2つの三日月が今確かに、剣を構えていた少年の背を越え、警戒の意識の彼方遠方から煌めき、星男の両隣に鋭利な爪痕を描いた。
破壊されて飛び散り舞うスターダストの煌めき。勝手に大きな星が2つ砕けた──その光景に驚いた少年の目の前に現れたのは、淡い青髪の……パジャマ姿。
切っ先から水滴がぽつぽつと静寂に音を鳴らし滴る……。装備した【ふつうの亀のショートソード】を払い、その淡く美しい存在はピネスへと振り向いた。
「な……んだ?」
「いけっ」
「え?」
戸惑うピネスに、今振り返ったその端正な女性の横顔が言う。どこか見覚えのある剣を握り、とても見覚えのある柄の緑の布で縛った淡い青髪が、静かに揺れている。
「パン屋の娘に手伝えと依頼された」
振り向いた謎の女剣士は、緑の髪飾りをさりげなく見せ、味方であるとアピールしている。ピネスは確かにそんな柄のものを普段、緒方がよく身に付けているのを知っていた。
パン屋の娘ではなくおにぎり屋の娘だが、目に入った剣の形状も緒方がずっと使っている物であることをピネスは思い出した。しかし、それよりも先程飛んで来たモノは何なのか。戦いを通して倣ったことがあるような三日月、そしてどこか異質のその静かな佇まい……。
「行け。私にはないが、お前には大事な任務があるのだろう」
見つめてくる知らない淡い瞳、そこに宿る彼女の考えなど、ピネスにははっきりとは分からない。だが、彼女から溢れ出るその魔力は────きっとヤル気だ。
そんな彼女の輪郭を包むヤル気の塊が、次第に炎のように濃ゆく染まり、揺れている。凝らす必要もなく、ピネスの目にはそのように映っていた。
そして見せつけられたその青く揺らぐ質の良い魔力が、出会ったばかりのピネスへと、不思議と強制力を生み出すように────
「なんか分かんねぇけど……行ってくる!!」
彼は迷いながらも彼女の醸し出す強い炎にあてられ、決心した。
一度だけ深く彼女へと頷き走り出したピネスは、呆然と立つ星男の横顔を一瞥し合い、通り過ぎる。
そしてパネルモニター上の壊れた宇宙を堂々と駆け、次へと続く階段を駆け上る。静かに染まった星の視聴覚室へと響く急ぐ靴音が、遠く小さくなっていく────。
星男はゆっくりとポッケから取り出したサブのサングラスを掛ける。そして先ほどまであった全ての熱をリセットしたかのように、また、前屈みのおどけた仕草で出会ったばかりの彼女に問う。
「んっんー? 別の運命がワタシの邪魔をするかァー? ……ナラバのナッラバァァー、────星はいかがかな?」
「────水面にうつる月の方がよく似合う。貴様はどうだ」
この砂嵐に覆われつつある壊れかけの偽星にも水はある。モニターに映る水たまりから浮き上がった小さな三日月が、注意散漫なおどけた星男を包囲する。
男はかけたばかりの色眼鏡をゆっくりと外しながら……。浮かぶ冷たい殺気をおびた水属性の三日月に、試されているのは既にワタシの方であったと、悟る。悟らざるを得ない。
おどけている暇はないようだ。早くも引き出された星男の真顔から、流れた一筋の汗が水面にぽつり……滴り落ちた。
星と三日月と少年、唐突にも絡まり合う偶然の運命は、少年が星の元を過ぎ去り、すげ替えられた。
ここは何が起こり、何と出会い、いつ如何なるバトルが勃発するのか分からないダンジョンの中。
たとえ異なる世界の戦士たちが出会い、異なる思想と美学を持ち寄り語れど、互いを相容れぬと認めたならばその瞬間──。
水面へと滴りゆくたった一粒の合図を境に、互いの体に向け合っていた闘争の熱と魔力を今、激しくぶつけ合った────────。
「もっともっと……君に彼女の星をあげよう!! まだ足りていないだろう!! ホハハハ」
「くれてもいいけど、俺は壊すぞ! あぁー……。この後も、きっと上のほうに予定があるからサァ! 悪ぃけど、星はもうそろそろいいかなって!」
飽きずに付き合ってくれた目の先にいる少年に敬意を表してか、素顔を見せた星男は緋色と翠色の特大の星のマジックを左右に侍らせるように並べた。
そしてピネスもいつまでも遊んでいるわけにはいかない。この星男の背を越え次へと続く、あの螺旋階段を突き進まなければならない。しかし一筋縄ではいかないジレンマがあるのも事実。やはり通せん坊する目の前の頑なな星を砕いて、知らない惑星の故郷へと満足しお帰りになってもらうしかない。
「そう予定通りにはいーーーーッかない、予定にない出会い……それは果たして幸か不幸かどのホシかァ? その魔力その剣その理解ッ、どれほどのものを扱えるのか、君が教え示す番だ! 慌てるな慌てるなこの星のバランスは、まだ崩れるほどじゃないーーッ。んっん~~? ──そんな顔をするなっ、そう何が言いたいかというと、つまりは!! 私の心にすむ彼女の星がッ、君の手を欲しているのだよ!! ナラバのナラバッ、じっくりみきっ」
それまでのようにおどけているだけではない、星男は感情豊かに饒舌に語り出した。だが、長々と分からぬ事を熱く少年に語りかけていると、突然──。
星男の両サイドで魔力をうずうずと煌めかせ待機していた緋色と翠の輝ける特大の星が、散り散りに────砕けた。
2つの三日月が今確かに、剣を構えていた少年の背を越え、警戒の意識の彼方遠方から煌めき、星男の両隣に鋭利な爪痕を描いた。
破壊されて飛び散り舞うスターダストの煌めき。勝手に大きな星が2つ砕けた──その光景に驚いた少年の目の前に現れたのは、淡い青髪の……パジャマ姿。
切っ先から水滴がぽつぽつと静寂に音を鳴らし滴る……。装備した【ふつうの亀のショートソード】を払い、その淡く美しい存在はピネスへと振り向いた。
「な……んだ?」
「いけっ」
「え?」
戸惑うピネスに、今振り返ったその端正な女性の横顔が言う。どこか見覚えのある剣を握り、とても見覚えのある柄の緑の布で縛った淡い青髪が、静かに揺れている。
「パン屋の娘に手伝えと依頼された」
振り向いた謎の女剣士は、緑の髪飾りをさりげなく見せ、味方であるとアピールしている。ピネスは確かにそんな柄のものを普段、緒方がよく身に付けているのを知っていた。
パン屋の娘ではなくおにぎり屋の娘だが、目に入った剣の形状も緒方がずっと使っている物であることをピネスは思い出した。しかし、それよりも先程飛んで来たモノは何なのか。戦いを通して倣ったことがあるような三日月、そしてどこか異質のその静かな佇まい……。
「行け。私にはないが、お前には大事な任務があるのだろう」
見つめてくる知らない淡い瞳、そこに宿る彼女の考えなど、ピネスにははっきりとは分からない。だが、彼女から溢れ出るその魔力は────きっとヤル気だ。
そんな彼女の輪郭を包むヤル気の塊が、次第に炎のように濃ゆく染まり、揺れている。凝らす必要もなく、ピネスの目にはそのように映っていた。
そして見せつけられたその青く揺らぐ質の良い魔力が、出会ったばかりのピネスへと、不思議と強制力を生み出すように────
「なんか分かんねぇけど……行ってくる!!」
彼は迷いながらも彼女の醸し出す強い炎にあてられ、決心した。
一度だけ深く彼女へと頷き走り出したピネスは、呆然と立つ星男の横顔を一瞥し合い、通り過ぎる。
そしてパネルモニター上の壊れた宇宙を堂々と駆け、次へと続く階段を駆け上る。静かに染まった星の視聴覚室へと響く急ぐ靴音が、遠く小さくなっていく────。
星男はゆっくりとポッケから取り出したサブのサングラスを掛ける。そして先ほどまであった全ての熱をリセットしたかのように、また、前屈みのおどけた仕草で出会ったばかりの彼女に問う。
「んっんー? 別の運命がワタシの邪魔をするかァー? ……ナラバのナッラバァァー、────星はいかがかな?」
「────水面にうつる月の方がよく似合う。貴様はどうだ」
この砂嵐に覆われつつある壊れかけの偽星にも水はある。モニターに映る水たまりから浮き上がった小さな三日月が、注意散漫なおどけた星男を包囲する。
男はかけたばかりの色眼鏡をゆっくりと外しながら……。浮かぶ冷たい殺気をおびた水属性の三日月に、試されているのは既にワタシの方であったと、悟る。悟らざるを得ない。
おどけている暇はないようだ。早くも引き出された星男の真顔から、流れた一筋の汗が水面にぽつり……滴り落ちた。
星と三日月と少年、唐突にも絡まり合う偶然の運命は、少年が星の元を過ぎ去り、すげ替えられた。
ここは何が起こり、何と出会い、いつ如何なるバトルが勃発するのか分からないダンジョンの中。
たとえ異なる世界の戦士たちが出会い、異なる思想と美学を持ち寄り語れど、互いを相容れぬと認めたならばその瞬間──。
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