【R-18】異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:

山下敬雄

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 暗黒巌流島で、剣と剣は合わさりもう何合目か。

 試し合うその度に互いのクセや性格、剣の特徴、纏う魔力の質まで、理解は図らずしも刃と刃で拒み合うほどに深くなっていく。

(やはりコイツ、剣を通して俺の中の魔力をいじろうとしている。気持ちが悪いな)

 鍔迫り合い睨み合うサンフンとピネス。しかし、これ以上ただでやるのはおもしろくない。サンフンは他人の魔力に寄生しようとするその奇剣の使い手の腹に、強烈な蹴りを浴びせた。

 完全に鋭い蹴りをまともにもらったピネスは、後ろへと大きく飛ばされた。

 すかさず高速で魔力を練り上げたサンフンにより蹴り放たれたのは【黒 不知火】さらに【橙 不知火】。黒とオレンジの2つの中玉が、コントロールされ対象へと高速で迫り追撃をする。

 魔力の質が違う二つの弾を浴びせる。一種ならともかく性質の違うこれを生半可な剣と技で攻略するのは至難、妥協のない悪魔じみた攻撃であった。

 しかし魔力と実力でピネスに勝るサンフンに知らない誤算があるとすればそれは────

 島の波打ち際の水面に燃えゆく漁火から……黒と橙の三日月が、真っ直ぐに飛び交う。

 誤算があるとすれば────この男がなんとなくコツを掴みつつあるということ。朝に比べて昼、夜の浦木幸は高みを味わい知る別人になっていた。

 相手の魔力・技を利用し得意とする中遠距離技【サクイチゲキ】その鋭い弧を描く二連技へと変換する。

 カオスに燃える怪火の中からカウンターで放たれた場違いで大雑把な三日月を、サンフンは反応し避けた。

 だがいくら冷静を装おうと、刹那に生じたその極僅かな動揺は隠し切れない、一瞬の隙を生み出す。三日月が黒服の横を通り過ぎた後に────突進する二刀の乱舞がサンフンを襲った。

 戦闘で昂るテンションのままに、見つけた好機に駆け抜けてゆく、その不意打ち荒削りの12連撃。

 そして13連撃目──これまで刃と刃を弾けぶつけ合い奇しくも繋がり合った互いの気を、再び強く──。

 重なり合わさったその緋色の剣に爆発させるように、色鮮やかに発動したクリティカル陽術【バーンファイア】で締めた。

 反応良く差し込まれる相手の黒剣ごとついに弾き返す。確かな手応えが、ピネスの握る緋色と翠の二刀に重く痺れて余韻となる。

 一矢報いる──いや、違う。何もできなかった、させてもらえなかった朝のグラウンドとは違う。砂地に溺れ這いつくばりながらも招かれた円形校舎ダンジョンの頂上、この暗黒の島地で、ヤツを狙いのクリティカルで吹き飛ばした。


「なに勝手に攻めを終わらせてる。今のでまさか息切れか?」


 しかし相手は褒めやしない。爆する緋色の景色が明けて、白煙立ち昇る砕けた黒い魔剣を手にしながら、さっさと追撃をして来ないピネスの手ぬるいやり方に皮肉を言う。

 そして離れて間合いを保ち、再び睨み合う戦いの最中の緊張、静寂に……。

 悠然と突っ立つ黒尽くめのサンフンの魔力が、ピネスの目にどんどんと高まり広がり熱帯びる。不気味な風が唸り吹いては島舞台の草地が黒く染まってゆく。


「────────【ダークピースフィールド】」


 男の立つ黒い地それが一体なんの意味を持ち、なぜ今にも止まらず広がっていくのかが、ピネスには分からない。ただ、草地が、島が、足元が、みるみると唐突な黒いジグソーパズルに呑まれてゆく。

「お前はこれを理解できるか? 気持ち悪りぃだろ?」

 ピネスは返そうとした余計な言葉を、何も言えず、乾いた口の唾を呑む。「理解できるか?」敵にそう問われ、地に広がり組まれてゆく謎の黒いピースを一度冷静に見つめるも────そんな暇はない。

 刃を復活された黒の魔剣がまた、ピネスの体へと瞬く間に噛みついてきた。

「半分どころじゃねぇ! お前という存在お前を構築する概念、そのピースすべてッ、悪魔的に全部殺してやる!」

 刃が自在に伸びる黒剣に、ノリにのって読めない相手の足癖。それでもピネスは反撃を試みる、だが練り上げる魔力がおぼつかず。急に己の手や体の勝手が変わったというのか、上手くいかないピネスは、反面スイッチが切り替わったようなサンフンの猛攻を受けるので精一杯であった。

 そしてさらに、敵は勢いを増す。

 飛んでくる【黒 不知火】【橙 不知火】見たことのある危険な技を避け、斬る。上がる戦闘スピードと何故だかおぼつかなくなった自身の魔力に、ピネスはそれでもなんとか緋色の技を起爆し合わせ、己の剣で相殺まで持ち込む。

「褒めてやろうか? ハッ──羽をばたつかせて足元がお留守だぜ?」

 この男が他者を褒めるのは、己が圧倒的に勝っているから。そこから来る悪戯な余裕でしかない。

 前しか敵しか視えていなかったピネスは、嘲笑う目先の男の醸し出す嫌な予感に、自分の今立つ足元のピースを覗いた。

 隣接する全ての大きな黒ピースには、グレーに灯る数字がある。その謎の数値が刻刻とピネスが驚き瞬きしない間にも、減っていく。

 3、2、1────────

 カウントダウンは仕掛け通りに爆発する。凄まじい黒炎が、必死にもがきまんまと誘われた浦木幸を、連鎖爆発し呑み込んだ。


「立つ地を知らず。アタマ空っぽの才能だけで勝とうとする馬鹿め」

 地を燃やし尽くした黒炎がやがて、もくもくと揺らぐ黒煙となる。

 まさかの時間差で起爆した罠に迂闊にもシールド値を削られ、よろよろと立ち上がったピネスは、それでもまだ死んではいない。

「逐一馬鹿にしてっけど……ハァハァ……まだ、ヤレてねぇけどっ……」

「まだ、欲しいか? ハッハッハ、ならヤルよ────その、舌先まで焦げ尽くすまでな」

 黒い地と天は解かれてゆく、そして宙に浮かび上がる幾多のピースボム。

 黒煙が明けると──気づけば島全てを黒く覆われていた……。

 ピネスはこの黒いジグソーピースで接がれ形成されたこの四角い箱こそが、サンフンの技なのだと、口答えをした今になって漸く理解をした。

「あぁーっ!? …………んなの、ありかよ……!」

「相当に、馬鹿だろ。熱にうなされ勝機でも視えたか? ハッハッハ」

 技の規模、技を成す魔力の規模、そして囲まれただけでたじろいでしまうほどの脅威。

 全てが想像以上の規格外、真の強者が真の強者としての実力を晒し出せばそこに弱者が敵う術はない。

 しかし、ピネスはそれでも剣を構えた。反抗的な冒険者に悪魔サンフンはニヤリと嗤う。

 向けられた黒い魔剣の切っ先でタクトを振るう。従えたピースを接がれ出来上がった悪魔の両翼がはばたき、ちっぽけな剣を構えた冒険者を襲った────────。
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