異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第三十二話 浮島生活、スタート

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第三十二話 浮島生活、スタート


「ヒナ様」
「は、はい・・・」

お風呂上り。猫達とクロは可愛らしい寝息を立てている。
セバスが上着を脱ぎ、シャツのボタンを外していく。
ゆっくりと前を開けると、綺麗な肌に鍵穴が・・・鍵穴?

「どうぞ」

小さな鍵を手渡された。これで開けろと言う事らしい。
ちょっと手が震えるが、なんとか鍵を差し込んだ。
カチャリ、と音を立てて鍵が開く。
爪を引っ掛けない様に扉を開くと、ムフフとでも言いそうな顔文字が描かれた紙が・・・。

「道明寺さんて・・・いい性格してたんだね」

剥ぎ取って破りたくなる衝動を抑え、紙をめくってみた。
そこには、ダイヤモンドカットされた薄紅色の魔石が埋め込まれていた。

「さ、触るね」

そっと触ると、ほんのり温かい。鼓動は聞こえないが、「生きている」と感じる。
ゆっくりと魔力を流していく。

「んっ・・・」

セバスが色っぽい!

「もう少しだから」
「は・・・い・・・ぁ・・・」

い~や~!
ゆっくり、だけど早く満タンになってぇ!

「・・・ありがとうございました」

魔力が満タンになると、薄紅色だった魔石がバラ色に染まった。
急いで蓋を閉めて鍵をかけ、セバスのシャツのボタンを留めた。
別に悪い事をしているわけじゃないけど、何となく。
とにかく、疲れた・・・精神的に。

「では、私は見回りに行ってまいります」
「もう夜だよ?」
「私に睡眠は必要ございません。この島には多数の動物もおりますし、いつもの日課ですので」
「え、動物がいるの?」
「はい。アールノル王国が亡ぶ少し前に、道明寺様が数種類の動物をこの島へと移住させました。千年たった今、下界とは違った進化を遂げた者もございます」
「見てみたい!」
「夜更かしは美容の敵だと、道明寺様が仰っておりました。ですので、明日、ご案内させていただきます」

そう言うと、セバスは出かけて行った。
ああやってずっと、ここを守っていたんだろうな。

「死なないというのも、難儀なもんだね」





翌朝、皆でご飯を食べた後に体操をしていると、セバスが帰って来た。

「ヒナ様、おはようございます」
「おはよぉ」
「昨夜お話した件ですが、是非ヒナ様にお会いしたいと言う者がおりまして」
「へ?」

お会いしたいと言う?

「ここの動物って、喋るの?」
「千年かけて、意思の疎通が可能になりました」
「頑張ったねぇ」
「どうされますか?」
「もちろん、会う!」
「承知いたしました」

セバスはそう言うと、口に指を当てて口笛を吹いた。
ピィーーー!っと高い音がして暫くすると、神社の方から何かが飛んで来た。
点だったそれが段々と近付き、平べったい何かに変わっていく。

「まさか・・・モモンガ!」
「はい。その中でも、エゾモモンガに最も近い種類、エルダーモモンガです」
「ふぁ~!一度、一度抱っこしたいと思ってたの!夢だったの!」
「それは良かった。彼女も喜びます」
「モモンガ♪モモンガ♪モモ・・・ねぇ、なんかちょっと、おかしくない?」

私の目がおかしいのか、モモンガがドンドン大きくなっている気がする。

「え、ちょ・・・うわぁ!?」

ボフッと砂埃を上げて着地したのは、間違いなくモモンガだ。
だが、その大きさが桁違い!

「こちらが、エルダーモモンガのモチさんです」
「ク」

可愛らしく笑っているようなお顔と、平たい尻尾は正しくエゾモモンガだ。
但し、私より数倍デカい!
この世界ではかなり大きい方の私でさえ、見上げる大きさ。

「か、可愛いぃ~!!」
「ク~!」
「照れるそうです」
「モフッても?」
「ク」

どうぞと言わんばかりに両手を広げるモチさんの胸に、思わず飛び込んだ。
ファッファ!フワフワを通り越して、ファッファ!

「好き」
「ク~」

抱きしめられた!

「ヒナしゃまぁ?」

はっ!いかん。意識が飛びかけた!

「モチさん。この子達も良い?」
「クゥ」

モチさんがおいでおいでをすると、猫達とクロが恐る恐る近づいてきた。
そして、私と同じように抱き着くと、ゴロゴロと喉を鳴らした。

「ふぁ~、気持ちいい~」
「モフモフ」
「キュ~」

そんな君達も、可愛い。
たっぷりと堪能した後、モチさんの話を聞く事になった。

「モチさんは神社のご神体である桜の樹に住まわれているのですが、ここ数年、その桜が枯れ始めているのです」
「桜!」

この世界に桜!善は急げで神社に向かう。
建物は相変わらず倒壊寸前で、周りにまで目が行ってなかった。
しめ縄が掛けられた巨木に、神社の周りにも数本枯れかけている樹がある。
本来なら、もうそろそろ咲く為に幹が色づき始める頃。しかし、色どころか蕾さえ見当たらない。

「クゥ」
「モチさんのご一家です」

桜の樹の上、大きく開いた穴から、モモンガが数匹こちらを見下ろしていた。
あそこがモチさんのお家らしい。

「ちょっと見せてくださいね!」
「クゥ!」

一斉に頷かれると、ちょっと怖い。

「土も痩せているし、樹にも元気が無いね」
「クゥ・・・」
「ああ、心配しないで!これなら、何とかなると思う」

アイテムバッグから畑用の肥料を取り出し、猫達に手伝ってもらって根元に撒く。

「それから、これ。世界樹の秘薬!」

周りの樹から一滴ずつ根本に垂らし、最後にご神木へ。
すると、桜の樹がパアッと光り出し、モチさんご一家が慌てて穴から飛び出した。

「お、おおぉぉぉ?ちょっとやりすぎた感が・・・」

今にも枯れそうだった樹が元気を取り戻し、一回り成長。幹の色が薄っすらと染まり、枝という枝に蕾が付いた。

「クゥ!」
「クゥ!クゥ!」

モチさん一家、大喜び。

「よし。結果オーライ」
「お見事です」
「ありがとう。ついでに、ここも直して行こうか」
「はい?」
「材料はまだあるし、設計図も・・・うん、大丈夫そう」

必要な材料を取り出し、スキルを発動。
完全な立て直しではなく、補修する事にした。
折れた柱は新しく、瓦は無事なのでそのままに。床板も綺麗にすれば・・・。
一時間後、補修が終わった。

「あ、これは無理だった」

障子の枠は無事だったので、後は張替だけ。

「待たせてごめんね。これ手伝ってくれる?」
「「「「「は~い」」」」」
「キュ」

皆でボロボロになった障子を剥がし、新しい和紙を張っていく。
懐かしいなぁ。

「皆、お疲れ様」

綺麗になった障子をはめて、今度こそ完成。
ご神体はこの島の核だから神様は祀られていないが、一応皆で参拝。

「これを持って、揺らして」

クロと猫達が鈴緒を持って左右に揺らすと、カランカランと良い音が響いた。

「私の真似してね」

昔お祖母ちゃんに教えてもらった二礼二拍手一礼をやって見せると、皆も真似してくれた。

「これからよろしくお願いします」
「「「「お願いします」」」」
「おねがします」
「キュキュ」

モチさん一家に挨拶をしてから、皆で帰路についた。
綺麗な景色に、前を歩く猫達と肩に乗るクロ。こりゃあ、鼻歌も出ますよ。

「ヒナしゃま、もっとお歌うたって」
「歌ってぇ」

改めて言われると、かなり恥ずかしい。
だから、そんなクリックリの瞳で見つめないでぇ!

「うぅ・・・」

負けた。
結局家に着くまで、二曲歌う事になった。
もう、勘弁してぇ!
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