異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
20 / 141
連載

第三十四話 ちょっとした日常

しおりを挟む
第三十四話 ちょっとした日常


「うわぁ、毛がベトベト!」

イカとの闘いで潮風と海水が掛かったせいで、毛がゴワゴワになっていた。
なので、お風呂に入るぞ!
お湯が溜まるのを待つ間、お風呂のチェック。

「あ、シャンプーが少ないな」

一回分くらいはありそうだけど、夜には猫達も入る。
ならば、作らねば。
作業小屋に入り、材料チェック。

「先ずは、香石を少し削って」

香石は、ゲーム時代にあったアイテムの一つ。
読んで字のごとく、香りのする石。
バニラやミント、ラベンダー等、向こうの世界での香油とかアロマを石にした感じだ。
中には「焼肉の香り」なんて物もあったな。ネタとしか思えないが、魔物をおびき寄せる時に使っていた人を見た事がある。
私が作りたいのはシャンプーなので、使うのは桃とミルクとバニラの香石。
香が強くなり過ぎないように調節しながら、ゴリゴリとすり鉢で粉にする。

「おお、良い香りに出来た」

香が完成したら、ムクロジの登場!
これは向こうの世界にもあるが、私が持っているのはゲーム内で品種改良した物だ。
江戸時代には洗濯用の石鹸として使われていたムクロジ。
本来なら四センチから五センチ程の大きさの実だが、私が持っているのは十センチ程ある。

「そして、種を取って乾燥させた物が、こちらに!」

細かく切って、またすり鉢でゴリゴリゴリゴリ。
完成した粉を、香石の粉と合わせて混ぜれば、完成!
密閉容器に入れて、お風呂へGO!

「ムッフフ、ムッフフ」

シャワーで身体全体を濡らし、粉を一匙手に取る。
その上に水をちょこっと垂らすと、もこもこと泡が立ち始めた。
泡はあっという間に全身を覆っていく。

「着ぐるみオン着ぐるみ?と言うか、本物の猫になったけどもね」

これだけでも洗えるが、毛の奥まで洗うなら、やっぱりこれ!
ペット用シャンプーブラシ(大型犬用)!
シリコンで出来ているので、肌を傷付けない。マッサージ効果も抜群。背中用もあります。
ゲーム時、現実でトリマーをしているテイマーの友人に作ってもらった。
因みに顔用は、もう少し細かいブラシがあります。

「ふぃ~・・・」

全身を洗い終えて湯舟に浸かると、思わず声が出た。
久しぶりの一人入浴は、ゆったり入れるけれどちょっと寂しい。
早々にお風呂から上がり、バスタオルで丁寧に水気を取って風と火を合わせた風魔法で全身を乾かしていく。
私が品種改良したムクロジには、保湿成分もたっぷり含まれている。
なので、乾いた後はサラサラふわっふわっ。もはっとした毛にブラシを掛ければ、艶も出る。

「後は保湿クリームを肉球に塗れば、プリッとプニッと完成。おっと、そろそろお昼ご飯か」

お昼ご飯はチャーハンに決定。
クロと私の分を作り、猫達のはおさかなの形をした実を収穫してそれぞれの器に盛る。

「ご飯だよ~!」

縁側から外に向かって叫ぶと、畑のあちこちから猫達が集まって来た。
順番に手洗いを済ませ、食卓に着く。

「いただきます」
「「「「いただきます」」」」
「いたぁきます」
「キュ!」

カリカリと良い音が聞こえて来る。

「クロ、ご飯粒付いてる」
「キュ」

取ってあげると、嬉しそうにまた食べ始めた。なんとも可愛い。
続きを食べようとすると、コマがもじもじとしながら顔を上げた。

「ヒナしゃま、ん」

可愛いお口の横に、カリカリの粒が付いていた。

「コマも取ってほしいの?はい、取れたよ」

頭を撫でてあげると、嬉しそうにほほ笑むコマ。

「ヒナしゃま、ミケも」
「キジも」

可愛いので、全員撫でてあげた。
うちの子達、可愛すぎ!
甘やかし過ぎだと言われても良い!むしろ本望!
いつも頑張って畑仕事してくれてるからね!
お昼ご飯の後は、自由時間。猫達はそれぞれ散歩したりして好きな事をしている。

「ふぁ~・・・」

朝からバタバタしたせいか、眠くなってきた。

「ちょっとだけ」

畳の上に寝転がると、開けっ放しの縁側から気持ち良い風が入って来る。
段々と瞼が重くなり、意識を手放した。

「キュ?キュ~」
「クロたん、しー」

散歩から帰ってきたクロとコマが、居間で寝ているヒナを発見。
急いで玄関から入ると、手洗いを済ませて居間へと向かう。
気持ちよさそうに眠るヒナの横に同じように転がると、恐る恐る引っ付いた。
フワフワで温かい。
クロもコマも、そのまま眠りについた。
数時間後、セバスがヒナの家へと向かっていた。
いつもの見回りを終えてヒナの家の前へとやってくると、思わず足が止まった。
縁側から見える居間で寝息を立てるヒナと、彼女によりそって眠る五匹の猫とドラゴンの子供。
なんとも奇妙な組み合わせのはずだが、その光景はとても幸せそうに見えた。

「やれやれ、風邪を引きますよ」

自分のアイテムバッグから大きなタオルケットを取り出すと、皆を起こさないようにそっと掛けた。
季節は初春。もう直ぐ桜が咲き始める。

「道明寺様、今日も島は平和です」

セバスは縁側に座り、空に向かって呟いた。





畑仕事中、猫達が集まっているのが見えたので行ってみると、何かを囲んで見ているようだ。

「どうしたの?」
「ヒナしゃま、この子、むし?」
「フワフワなの」
「葉っぱ食べてるの」

虫なのに、フワフワ?毛虫か?

「ちょっと見せてくれる?」

猫達が少し広がってくれたので覗いてみると、シャクシャクと美味しそうにキャベツの葉を食べる小さな・・・。

「メェ~」
「羊!?」

見た目は羊だが、サイズがおかしい。
ネズミ・・・ハムスター?サイズの羊。
全部毛を刈っても、毛糸玉一球分にも絶対届かない。

「おや、羊ですね」
「うわぁ!」

突然セバスが現れた。この人、偶に気配を感じないんだよね。

「・・・その子、羊なの?」
「はい。モチさんもそうですが、この羊も千年の間に変化した一種です。いつもは別の場所にいるのですが、どうやら仲間とはぐれてしまったようですね」
「じゃあ、連れていってあげよう」

もっちゃもっちゃと葉を食む羊を捕まえようと手を伸ばした瞬間、羊が消えた。

「え?」

見失った、だと?

「ヒナしゃま、あそこ!」

キジが指した方を見ると、羊は別のキャベツの隣にいた。

「この島の羊は、身体が小さくなった代わりに、素早さを手に入れました」
「棒読みどうも!皆、捕まえよう!」

このままでは、せっかくの野菜が食い散らかされてしまう。

「「「「はい!」」」」
「あい!」
「キュ!」

そして、大捕り物が始まった。
右へ左へと消える羊に、追う猫達と私とクロ。

「まて~!」
「まって~」
「キュ、キュ!」

三十分程追いかけ、猫達はリタイヤ。
クロは目が回ったらしく、猫達と休憩。
羊も疲れて来たらしく、今はキャベツを挟んでにらめっこ中。
じりじりとお互いの動きを伺う。
今だ!っと思った瞬間、セバスがあっさり捕まえた。

「皆さま、お疲れ様でした」
「ええ・・・まったく」

無事捕まえられたのは良かったけどね!
皆でお茶を飲んで休憩した後、セバスに連れられて来たのは広い野原だった。

「ここが、羊達の暮らしている野原です」

野原と表現はしたが、草が剥げ、砂が見えている場所の方が多い。

「そこにある泉が涸れた影響で、このような状態に。別の場所に移動する様に説得をしていましたが、中々話をするのもままならないのです」

泉の中を見てみると、カラカラの状態。

「そんじゃ、ちょっくらやりますか」

腕まくりをして、意識を集中。探索の応用で、地下の水脈を探る。

「水はあるけど、通り道が塞がってるみたい」

これなら、少し掘れば水が出るはず。
アイテムバッグからショベルを取り出し、泉の中心に立った。
魔法でやるとやり過ぎそうなので、人力ならぬ猫力でやります。
猫達もやると言ってくれたけど、危ないので待機。

「よっ、ほっ」

五分くらい掘り続けると、何か固い物に当たった。

「何だろ?」

手で土を払うと、縁が見えた。どうやらこれが蓋をしているようだ。
ショベルをグッと差し込み、取っ手に体重を掛けた。
すると、スポ~ン!っと何かが水と一緒に飛び出て来た。
慌てて泉から出る。

「あれは・・・亀爺ですね」
「え、亀?」

吹きあがる水柱の上に、深い緑色の亀が乗っていた。
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。