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第三十六話 警戒中?
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第三十六話 警戒中?
「・・・・・」
「・・・・・」
「き、今日も良い天気だなぁ。なぁ、ゼスト」
「は、はい・・・」
「・・・・・」
しんと静まり返ったダイニングホール。
アレストロ王国国王、ガイナフォロスは、嫌な汗を背中に感じていた。
それはこの国の第二王子であるゼストも、同じである。
ゼストが仕出かした事により、ヒナから王室御用達を返上された。
ヒナの事を気に入っていた王妃と、ヒナと友人関係にあったヴァイスは事の顛末を聞かされ激怒した。
「もういい加減機嫌を直してくれないか?」
「もう?」
「いい加減?」
ガイナフォロスがしまった、と思った時には手遅れ。
「父上、兄上。お二人の事は尊敬しております。ですが、ヒナは私の友人です」
「私だって、これから仲良くなって、あのフワフワを撫でたり抱きしめたり、肉球をプニプニしたりしたかったのに・・・それを、飼い慣らす?」
「いや、その・・・それは、言葉のあやというか・・・その・・・」
「そうです!それに、あの場所・・・はっきりとは思い出せませんが、確実に国益になったはずです」
ヒナの記憶操作により、浮島である事や古代アールノルの技術が眠っている事等は消されている。しかし、自分がその様な暴言を吐く程には「凄い」物だったはずだと、ゼストは確信していた。
「黙らっしゃい」
ぴしゃりと言われ、思わず首をすぼめる国王と第二王子。
「他国の侵略に備える為の外交であり軍備。民を守る為の騎士団。民を飢えから守る?それは国王の仕事でしょう。それを、民から搾取しようなど・・・恥を知りなさい」
「ですが」
「あなた達二人の軽率な行動で、どれだけの国益が損なわれたか」
「それこそ、一、民ではありませんか。あんな猫もどき」
「あなたの言う、その猫もどきがもたらした物を知っていますか?」
「今では伝説となった植物、ですよね?確かに食べた事が無い程の美味ではありますが、本物かどうかも疑わしい。それに、種を解析して栽培も進めている。あの猫もどきに頼らずとも、直ぐに国中で栽培が始まり、輸出も可能となるでしょう」
ヒナが城に持ち込んだ食材。それらから種を取り出し、王族専用の畑で栽培が始まっていた。
栽培が成功すれば、外交や交渉に使えると見た国王が命を出したのだ。
ヒナに破格の報酬を渡し、王家以外に売らないように仕向けたのも、流通を防ぐ為である。
「今朝、全て枯れたと報告がありました」
「な!」
「本当か!?」
「それだけではありません。彼女が納品したポーション。部位欠損まで治す秘薬」
「そ、それも、宮廷薬師と魔術師で材料を解析して」
「世界樹の葉」
王妃が発した言葉に、その場にいる者全てが言葉を失った。
「材料はほぼ、通常のポーションと同じ。ただ一つ、微量な世界樹の波動を感じると報告が来ています。それも、老齢のエルフが微かに感じ取れるほど。これがどう言う意味か、おわかりですよね?」
世界樹はこの世界の中心にあると言われているが、その姿を見た者はいない。
かつて、世界樹の所有権をめぐり世界規模の戦争が勃発。血で血を洗う所業を憂いたのか、それとも別の理由か、世界樹は姿を消した。
世界樹は確かに存在している。
しかし、守り人として戦ったエルフでさえ、その存在を感じられるのみとなってしまった。
その世界樹の葉を、ヒナは持っていると言う事になる。
「飼い慣らす?冗談にしても、馬鹿馬鹿し過ぎて笑えません」
食事を終えた王妃がすっくと立ちあがると、ヴァイスもそれに続いた。
「反省、してくださいね?」
王妃はにっこりと笑うと、ヴァイスと共にダイニングホールから去って行った。
魂が抜けた様にぐったりとするゼストとガイナフォロス。
「コウシ」
呼ばれるのが分かっていたかのように、するりと影から現れたコウシ。
「御前に」
「どうだった?」
「家屋、畑、全て跡形も無く。残されていたのは扉のみ」
「扉?扉だけ?」
「部下数名が、ヒナ様方が扉の奥へと消えたのを確認しております。おそらく、何がしかの転移装置であると思われますが・・・」
「何だ?」
「部下が扉を開けると、何も無かったと。魔力すら残っておらず、解析は不可能かと」
頭を抱える国王だが、自業自得である。
「ヒナと共に暮らしていた二人は?」
「二人とも、王都に」
「そうか。目をはなすな」
「御意」
コウシが影に消えると、国王は深く息を吐いた。
*
「おい、ヒナ。それ、何とかならないか?」
「あはははは・・・」
ジローが島にやって来て二日目。
私の周りには、鉄壁のガードが張り付いている。
新たに島に来たジローを警戒して、猫達が私の傍を離れようとしないのだ。
「また、ヒナしゃまに嫌な事する」
「ヒナしゃまいじめたら、だめ」
「む~」
可愛い・・・。
「やれやれ。馬鹿王子の事は聞いた。俺は、ヒナに酷い事なんてしない。絶対にだ」
お、少し警戒が緩んだ?
「ほんとうに?」
「ああ。絶対にヒナを守るから」
「・・・・・」
あともう一押しかな。
「皆、大丈夫だよ。嫌な事されたら、もいで捨てるから」
私がそう言うと、猫達は頷いて放してくれた。
まだ少し警戒しつつも、畑仕事へと向かう猫達を見送った。
「ふぅ、やれやれ」
「何が、やれやれだ。お前はもう少し警戒心を持てと、あれだけ言ってあっただろうが」
「い、いや~、警戒、してたよ?うん」
「ちょっと目をはなした隙に、あの執事みたいなのとこんな所に来ておいて、警戒ねぇ?」
いつの間にか、壁際に追い詰められている!?
「それに、あのクラーケンの事もある。何だ、あのポーションは。部位欠損が治るポーションなんて、聞いた事ないぞ」
「そうそう、ポーション!腕、動く?大丈夫?」
ジローの左腕を触ってみた。ちゃんと温かいし、脈もある。
「作ってみたものの、ちゃんと治るか分からなかったから。良かったぁ」
「作ったって、ヒナが作ったのか!」
「うん。普通のポーションの時は肉球切って試してみたけど、流石に部位欠損はねぇ。治らなかった時が怖くて」
わざわざやる事でもないし。
「当たり前だ!切ったって、何処だ」
「へ?何処だったかなぁ。左手の」
言い終わる前に、今度は私の手を取られてしまった。
「傷はちゃんと確認したし、もうずいぶん前だから」
「まったく・・・次に何かを試す時は、俺に言うように」
「・・・」
「めんどくさいとか思っただろ」
「ぐっ・・・」
何故バレた。
「・・・善処します」
「そうしてくれ」
きっと、この尻尾のせいだな。
意外とこの尻尾に気分が出るんだよね。
ポーカーフェイスじゃ顔が。ポーカー・・・テイル?になれるよう、頑張ろう!
「・・・・・」
「・・・・・」
「き、今日も良い天気だなぁ。なぁ、ゼスト」
「は、はい・・・」
「・・・・・」
しんと静まり返ったダイニングホール。
アレストロ王国国王、ガイナフォロスは、嫌な汗を背中に感じていた。
それはこの国の第二王子であるゼストも、同じである。
ゼストが仕出かした事により、ヒナから王室御用達を返上された。
ヒナの事を気に入っていた王妃と、ヒナと友人関係にあったヴァイスは事の顛末を聞かされ激怒した。
「もういい加減機嫌を直してくれないか?」
「もう?」
「いい加減?」
ガイナフォロスがしまった、と思った時には手遅れ。
「父上、兄上。お二人の事は尊敬しております。ですが、ヒナは私の友人です」
「私だって、これから仲良くなって、あのフワフワを撫でたり抱きしめたり、肉球をプニプニしたりしたかったのに・・・それを、飼い慣らす?」
「いや、その・・・それは、言葉のあやというか・・・その・・・」
「そうです!それに、あの場所・・・はっきりとは思い出せませんが、確実に国益になったはずです」
ヒナの記憶操作により、浮島である事や古代アールノルの技術が眠っている事等は消されている。しかし、自分がその様な暴言を吐く程には「凄い」物だったはずだと、ゼストは確信していた。
「黙らっしゃい」
ぴしゃりと言われ、思わず首をすぼめる国王と第二王子。
「他国の侵略に備える為の外交であり軍備。民を守る為の騎士団。民を飢えから守る?それは国王の仕事でしょう。それを、民から搾取しようなど・・・恥を知りなさい」
「ですが」
「あなた達二人の軽率な行動で、どれだけの国益が損なわれたか」
「それこそ、一、民ではありませんか。あんな猫もどき」
「あなたの言う、その猫もどきがもたらした物を知っていますか?」
「今では伝説となった植物、ですよね?確かに食べた事が無い程の美味ではありますが、本物かどうかも疑わしい。それに、種を解析して栽培も進めている。あの猫もどきに頼らずとも、直ぐに国中で栽培が始まり、輸出も可能となるでしょう」
ヒナが城に持ち込んだ食材。それらから種を取り出し、王族専用の畑で栽培が始まっていた。
栽培が成功すれば、外交や交渉に使えると見た国王が命を出したのだ。
ヒナに破格の報酬を渡し、王家以外に売らないように仕向けたのも、流通を防ぐ為である。
「今朝、全て枯れたと報告がありました」
「な!」
「本当か!?」
「それだけではありません。彼女が納品したポーション。部位欠損まで治す秘薬」
「そ、それも、宮廷薬師と魔術師で材料を解析して」
「世界樹の葉」
王妃が発した言葉に、その場にいる者全てが言葉を失った。
「材料はほぼ、通常のポーションと同じ。ただ一つ、微量な世界樹の波動を感じると報告が来ています。それも、老齢のエルフが微かに感じ取れるほど。これがどう言う意味か、おわかりですよね?」
世界樹はこの世界の中心にあると言われているが、その姿を見た者はいない。
かつて、世界樹の所有権をめぐり世界規模の戦争が勃発。血で血を洗う所業を憂いたのか、それとも別の理由か、世界樹は姿を消した。
世界樹は確かに存在している。
しかし、守り人として戦ったエルフでさえ、その存在を感じられるのみとなってしまった。
その世界樹の葉を、ヒナは持っていると言う事になる。
「飼い慣らす?冗談にしても、馬鹿馬鹿し過ぎて笑えません」
食事を終えた王妃がすっくと立ちあがると、ヴァイスもそれに続いた。
「反省、してくださいね?」
王妃はにっこりと笑うと、ヴァイスと共にダイニングホールから去って行った。
魂が抜けた様にぐったりとするゼストとガイナフォロス。
「コウシ」
呼ばれるのが分かっていたかのように、するりと影から現れたコウシ。
「御前に」
「どうだった?」
「家屋、畑、全て跡形も無く。残されていたのは扉のみ」
「扉?扉だけ?」
「部下数名が、ヒナ様方が扉の奥へと消えたのを確認しております。おそらく、何がしかの転移装置であると思われますが・・・」
「何だ?」
「部下が扉を開けると、何も無かったと。魔力すら残っておらず、解析は不可能かと」
頭を抱える国王だが、自業自得である。
「ヒナと共に暮らしていた二人は?」
「二人とも、王都に」
「そうか。目をはなすな」
「御意」
コウシが影に消えると、国王は深く息を吐いた。
*
「おい、ヒナ。それ、何とかならないか?」
「あはははは・・・」
ジローが島にやって来て二日目。
私の周りには、鉄壁のガードが張り付いている。
新たに島に来たジローを警戒して、猫達が私の傍を離れようとしないのだ。
「また、ヒナしゃまに嫌な事する」
「ヒナしゃまいじめたら、だめ」
「む~」
可愛い・・・。
「やれやれ。馬鹿王子の事は聞いた。俺は、ヒナに酷い事なんてしない。絶対にだ」
お、少し警戒が緩んだ?
「ほんとうに?」
「ああ。絶対にヒナを守るから」
「・・・・・」
あともう一押しかな。
「皆、大丈夫だよ。嫌な事されたら、もいで捨てるから」
私がそう言うと、猫達は頷いて放してくれた。
まだ少し警戒しつつも、畑仕事へと向かう猫達を見送った。
「ふぅ、やれやれ」
「何が、やれやれだ。お前はもう少し警戒心を持てと、あれだけ言ってあっただろうが」
「い、いや~、警戒、してたよ?うん」
「ちょっと目をはなした隙に、あの執事みたいなのとこんな所に来ておいて、警戒ねぇ?」
いつの間にか、壁際に追い詰められている!?
「それに、あのクラーケンの事もある。何だ、あのポーションは。部位欠損が治るポーションなんて、聞いた事ないぞ」
「そうそう、ポーション!腕、動く?大丈夫?」
ジローの左腕を触ってみた。ちゃんと温かいし、脈もある。
「作ってみたものの、ちゃんと治るか分からなかったから。良かったぁ」
「作ったって、ヒナが作ったのか!」
「うん。普通のポーションの時は肉球切って試してみたけど、流石に部位欠損はねぇ。治らなかった時が怖くて」
わざわざやる事でもないし。
「当たり前だ!切ったって、何処だ」
「へ?何処だったかなぁ。左手の」
言い終わる前に、今度は私の手を取られてしまった。
「傷はちゃんと確認したし、もうずいぶん前だから」
「まったく・・・次に何かを試す時は、俺に言うように」
「・・・」
「めんどくさいとか思っただろ」
「ぐっ・・・」
何故バレた。
「・・・善処します」
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きっと、この尻尾のせいだな。
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