異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第三十七話 田植え

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第三十七話 田植え


「それじゃあ皆、行くよぉ」
「「「「は~い!」」」」
「あい!」
「キュ!」
「おう」

今日は、念願の田植えの日です。
魔法で田園を作り、川から水を引ける様にした。
猫達は長靴とゴム手袋を装備し、腰には苗を入れるカゴを下げている。
私、猫達、ジローは一列に並び、あらかじめ付けておいた目印に苗を植えて行く。

「結構、歩きにくいな」
「あうぅ」

魔法で出来なくはないが、自分で出来る事はやる・・・ごめんなさい。やってみたかっただけです。

「うわぁ!?」

半分程来た所で、ジローの叫び声とビチャッという音が聞こえて来た。
何事かと思って見ると、ジローが見事に泥まみれになっていた。
どうやら持っていた苗が無くなり、取りに行こうとしたらしい。

「ぶふっ・・・だいじょう・・」
「こんなに歩きにくいとは」
「苗が無くなったら、クロに言ってねって言ったのに」

クロにお願いすると、両手一杯に苗を抱えて飛んできてくれた。

「意外と夢中になるな、これ」
「腰に来るけどね」
「確かに」

背中を伸ばすと、抜けるような青空が広がっていた。

「おこめ、おっこめ~♪」
「「つやつや、ふっくら♪」」
「「「おいしいおっこめぇ♪」」」
「「「「みんなで食べると、おいしいね~♪」」」」
「ね~♪」
「キュ~」

猫達が歌い出した。
可愛い!可愛いが!それはこの前、私が台所で歌ってたやつ~!
悶絶しそうになったが、猫達が楽しそうなので・・・うん。

「まぁ、いいか」

昔、まだ農作業が手作業だった時代。
田植えをしながら、歌を歌ったらしい。
豊作を願う物や、田の神様への感謝を歌ったそうだ。

「異世界に来て、日本を感じるとはねぇ」

外国に行くと、改めて自分が日本人だと感じる・・・と、会社の同僚が話していたのを思い出した。

「ヒナ様、準備が整いました」
「もうそんな時間?はいよ~。皆、お昼ご飯にしよう」

全員にクリーンを掛けて、セバスが用意してくれた天幕に向かった。

「キャンプみたいだね。これも?」
「はい」

道明寺さんは本当に何でもできたんだなぁ。
木製の枠に、綺麗な白い布の屋根とカーテンが付いている。
地面に敷いてあるのは、ゴザだけどね。

「いただきます」
「「「「いただきます!」」」」
「いたぁきます!」
「キュ!」
「いただきます」

皆で仲良く、昼食タイム。ちょっとしたピクニック気分で、気持ちが良い。

「そういえば、この島って動くのか?」
「ふぁ?」

ちょうどおにぎりを口に入れた時だった。
そう言えば、どうなんだろう?
この島には、認識阻害の結界が張られているらしい。
そりゃそうだよね。じゃなきゃ、こんな大きな物体が上にあれば、気付かないわけがない。
まぁ、リシュナさんにはあまり効果が無かったみたいだけど。「まぁ、見つけ難いかもしれんな」くらいの感想だった。

「動く、というのは?」
「そのままの意味だ。移動できるのか?例えば、他の国や海の上に、島ごと行けるかどうかだ」
「はい。出来ます」

出来るんだ。

「王室御用達も返したし、クレスには鍵があれば会いに行ける。だったら、ここに留まらなくても良いんじゃないか?」
「・・・確かに」

そうだよね。動けるなら、ここと言うかこの国の上にいる必要はないよね。
いつか日本の文化に似た国、ヒノモトにも行ってみたい。

「いいね!」
「では、明日。ご案内させていただきます」

ちょっとワクワクして来た!





田植えの次の日、セバスに案内されてやってきたのは神社だった。
ここにはこの島の核が祀られている。

「こちらへ」

祭壇の横、セバスが壁に手を当てると、スッと壁が動いた。

「へぇ~、隠し扉かぁ」

中へ入ると、大きなモニターに島の色々な場所が映し出されていた。
私達の家も見える。
こんな部屋があったなんて、神社を直した時には気付かなかったなぁ。

「ヒナ様、こちらへ」

モニターの前、部屋の真ん中にある台の上に水晶玉が置かれていた。

「触れてください」

言われた通りにすると、水晶玉が淡く光った。

『魔力認証。ようこそ、新しい主様』

突然声が聞こえて来た!

「島の制御を担うAI。ツバキです」
「初めまして、ツバキ。私はヒナ」
『・・・ヒナ様・・・うふ、うふふふ』

ん?笑い声?

『やっと、お会いできましたわぁ!』

ポン!っと、突然何も無い所に、綺麗な女性が現れた。

「ふぁ!?」

首に抱き着かれたが、全然重さを感じない。浮いている?

「ツバキ、自重すると約束したでしょう」
「だぁってぇ、やっと会えたんだものぉ。セバスったら、全然会わせてくれないんだから!」
「ヒナ様、申し訳ございません」
「驚いたけど、大丈夫だよ。声だけより、姿が見えた方が話しやすいし」

元の世界でも、AIは普及し始めていた。携帯やらスピーカーにまで入っていたし。
携帯に入っているAIも、画面に顔が出たら良いのに。
顔や服装もカスタマイズ出来て・・・おっと、脱線した。

「ツバキ、いい加減にヒナ様から離れなさい」
「ケチセバス」

悪態をつきながらも、ツバキが離れてくれた。

「やっぱ、浮いてるんだ」
「私はセバスとはちょっと違うの。セバスは道明寺様に作ってもらった体があるけれど、私はこの中だけの存在だったのよ。つい最近までは、ね」

ツバキが水晶玉に触った。さっきもそうだったが、私や水晶玉に触れるので、実体が無いわけじゃない。

「つい最近まで?」
「そう。私がこうして外に出られたのも、ヒナちゃんのおかげなのよ」
「何もしてないけど」
「ヒナ様の魔力と、残っていた道明寺様の魔力が混ざった影響でしょう」
「混ざった・・・あぁ、最初の充電ね!影響って、大丈夫なの?」
「はい。影響を受けたのは、ツバキだけの様です」

良かった・・・のか?
まぁ、喜んでいるみたいだし、良いだろう。

「それで、ヒナちゃんはこの島を動かしたいのよね?」
「そう。出来る?」
「もちろん、出来るわよぉ。ちょっと待ってね」

ツバキがモニターに手をかざすと、島の各地を映していた画面が一つになり、大きな地図を映した。

「これが、この世界の地図よ。ああ、地図はちゃんとアップデートされてるから安心してね。因みに、こっちが千年前の地図」

地形は同じだが、国の名前や新しい国が作られていたりと、細かい場所に違いが見られる。その中には、道明寺さんが生きていたアールノルという国もあった。

「この点が、この島のある場所よ」

私達はアールノルとは違う大陸にいるみたいだ。

「それで、何処に行きたいの?」
「そう言えば、決めて無かった」
「そうねぇ・・・私のお勧めは、此処かしら」

ツバキが指したのは、ここから少し離れてはいるが同じ大陸にある国だった。

「この国はちょ~っと変わってるけど、ヒナちゃんも気に入ると思うわよ」
「へぇ~。じゃあ、そこにしようかな」
「はいは~い」

緊張感の無い返事をすると、ツバキは目を閉じ、体が淡く光った。

「はい、おしまい」
「へ?」
「まぁ、ここじゃ分かり辛いかもねぇ」

かなりゆっくり動き出したらしく、何も感じなかった。

「分かった。ありがとう」
「うふふ。どういたしまして」

ツバキにお礼を言って外に出たが、まだ分からない。
とは言え、動いていると言っていたから大丈夫だろう。

「薄暗い所にいたから、外の風が気持ちいいねぇ」
「はい」
「本当ねぇ」

ん?

「ツバキ?外出ちゃって大丈夫なの?」

どうやらついて来たようだ。

「大丈夫みたい。うふふ」

相変わらず浮いているけど。
みたいって、分からないのに出てきたのか。

「大丈夫ですよ、ヒナ様。それが消えたとしても、島の制御はあの水晶玉で出来ますから」
「酷い!この陰険執事!」
「フッ」

鼻で笑った!
しかも、すっごい見下したような顔で!
ツバキがちょっと涙目になってるよ!

「あ~ん、ヒナちゃ~ん」

ツバキが首に抱き着いて来たので、よしよしと背中を撫でてあげた。

「ヒナちゃん、優しい~。大好き~」
「くっ・・・」

何故そこで悔しそうな顔をする、セバスさん。
やれやれ。また、賑やかになりそうな予感だ。
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