異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
25 / 141
連載

第三十九話 久しぶりの身体

しおりを挟む
第三十九話 久しぶりの身体


セバスに渡されたイヤーカフスを耳に着け、魔力をながす。
身体が淡く光り出したと思ったら、猫の手が見る見る内に人の手へと変わって行った。
視線が低くなり、ゆったりと着ていたシャツはブカブカに。
落ちそうになるシャツとズボンを抑えた。
光りが収まり、自分の手を見てみた。
見慣れたはずの人の手なのに、違和感がある。それだけあの猫の身体に馴染んでいたんだろうな。
髪は腰まで長い薄桃色。洗うの大変そう・・・。

「ヒナしゃま、つるつる~」
「つるつる~」
「キュ~?」
「ヒナしゃま、ちぃさい~」

猫達に囲まれ、顔や腕に肉球が!プニプニプニプニ・・・はぅ、天国か!?

「どうしたの?」

口元を抑え、顔を背けるジロー。
もしかして、超ぶちゃいくとか!?
慌ててマジックバッグから手鏡を取り出し、自分の顔を確認する。

「う~ん、面影があるような、無いような?」

基になった顔は、むこうの世界での自分の顔だろう。薄桃色の獣耳と尻尾がある。
肌は透き通る様に綺麗になり、シミ一つ無い。
しかも、まるでトリミングされた様に可愛くなっている?年齢は二十代前半くらいか?
嬉しいような、複雑な気分だ。
あ、でも、この世界での美的感覚には合わないのかもしれない。
もしかしたら、直視できない程に・・・。

「ジロー?」

近付いてみると、ジローはかなり背が高かった。
私より、頭一つか二つ分大きいか。
ん?よく見ると、ジローの耳が赤い?
もしかして、笑いを堪えている?

「笑う程可笑しい顔ですかい」
「ち」
「違いますよ、ヒナ様。ヒナ様のあまりのお可愛らしさに、照れていらっしゃるだけかと」

あ、首まで赤くなった。
良かったぁ。
ほっと胸を一撫で。

「おっと」

服が大きすぎる。上も下もブカブカ。
クローゼットの中身は全部猫仕様だし、アイテムバッグの中身も人用の物は入っていない。

「セバス、扉出してくれる?」
「はい」

セバスに扉を出してもらい、鍵を使った。

「お、おい!?」
「クレスの所で洋服買ってくるね」

扉を開けると、クレスのお店に出た。
キョロキョロと見渡すと、いつもの少女と目が合った。

「あ、お久しぶり!クレス、いる?」
「え、あ・・・しょ、少々お待ちください!」

少女が慌てて店の奥へと走って行った。

「あ~、しまった」

今はいつもの猫じゃないんだった。
不審者だと思われたかも?

「おい、ヒナ!」
「あ、ジローも来たんだ」

服を買ったら帰ろうと思って、開けっ放しだった扉からジローが入って来た。

「ちょっと、何よカーナちゃん!」
「いいから、見て」
「見てって、何を・・・」
「クレス、おひさぁ」

固まるクレスに手を振る。もしかしたら、私だと分からないかも?
と思ったら、視界が反転。天井が見えた。

「へ?」
「カーナちゃん、後はお願い」
「はい」

どうやらクレスにお姫様抱っこされた様だ。
そして、景色がまるで線の様に過ぎ、気が付いたら違う場所にいた。

「???」
「ヒナちゃん、よね?」
「え?あ、うん。人型にうぇぇえ!」

クレスが壁に寄りかかり、そのままズルズルと床にへたり込んだ。
私を抱えたまま落とさないのは器用だけど、ちょっとびっくりした。

「想像より百倍可愛い」
「そ、そう?」

鏡を見て可愛いとは思ったけど、基が自分なだけに、ここまでの反応をされるとは思っていなかった。

「それで、今日は服を買いに来たんだ。人型用のは持ってなく、て!?」

むき出しの首筋に、クレスの顔が!髪がくすぐったい。

「クレス?もしかして、お疲れ?」

クレスとは、度々イヤーカフスで連絡を取り合っていた。
なので、彼が今とても忙しい事も知っている。
頭を撫でてあげると、ぴくっと動いた。

「こら、弱っている男にそういう事しない」
「ふふ、泣いちゃう?」

猫の時に何度か触った事のあるクレスの髪は、人の手で触ると一層柔らかく感じる。
頭を上げたクレスと間近で目が合った。

「惚れちゃう」

鼻が付きそうな程の距離に、一瞬ドキッとした瞬間、ゴン!と鈍い音がした。

「おお、悪い」
「ジロー・・・」

どうやらジローが扉を開け、その扉がクレスの頭を直撃したようだ。

「すみません、オーナー」
「・・・はぁ、良いわよ。この脳筋馬鹿エルフを止めるなんて、無理だもの」

そう言いながら、クレスが立たせてくれた。
彼もやっぱり背が高い。
なんか、悔しい。

「その姿って、固定なの?」
「ううん。このイヤーカフスを取れば、元の姿に戻るよ」
「じゃあ、これからは二種類のお洋服が必要ね!人型の方は猫ちゃん達と一緒に渡すとして、いつまでもその恰好じゃねぇ・・・」
「なんだよ」
「脳筋ムッツリ馬鹿エルフが狼男に種族変化しないように、お着替えしましょ」
「人の事言えんだろうが」
「お前と一緒にするな」
「あぁ?」

懐かしいな、この光景。
いつもなら止めに入るが、この背じゃちょっとね・・・。

「ヒナ様、こちらへ。馬鹿は放っておいて、お洋服を選びましょう」
「へ?あ、はい。お願いします」

二人を残してお店の方へと向かい、色々と見繕ってもらった。
しかも、ここには売っていない下着類も、試着している内にカーナが買ってきてくれた。
なんとも至れり尽くせり。

「ありがとう!本当に助かったよ!」
「お礼なら、私の方から」
「へ?」
「ヒナ様から頂いた品の数々と、それによりオーナーが未だかつてない程に仕事が捗っております」

よく見ると、少し疲れた顔をしているカーナ。
お店の運営と並行してクレスの補佐もしていると聞いている。

「カーナちゃん、これ」
「これは?」
「チョコレートっていうお菓子。クレスには内緒ね」

そう言って渡すと、カーナが少しだけ頬を緩めた。

「ありがとうございます」

思わず頭を撫でてしまった。猫達の頭を撫でるのが癖になっているようだ。

「ごめん、つい」
「いいえ。お気遣いなく」

う~ん、淡泊!
代金を支払って買った物をアイテムバッグに入れ、扉へと向かう。
クレスと言い合っていたジローに声を掛けると、「ふん!」と鼻を鳴らして戻って来た。

「じゃあな、クレス」
「くっ・・・」
「クレス、あんまり無理しないようにね」
「ありがとう、ヒナちゃん!そのお洋服、とってもよく似合っているわ!」
「ありがとう。じゃあ、またね」

クレスとカーナにお別れを言うと、ジローと一緒に島へと戻った。

「おかえりなさいませ、ヒナ様。とてもよくお似合いです」
「ただいま。ありがとう」

カーナに選んでもらった服はとても着心地が良く、シンプルで動きやすい。
今は、シャツと七分丈のオーバーオール。靴は自前だ。

「これで、普通の獣人に見える?」
「少し珍しい毛色ですが、獣人に見えます」
「じゃあ、町に行けるね!」
「キュ~?」

クロがどうしようかと迷うように近くで飛んでいる。
ああ、今までは肩にとまっていたけど、今の身体にはクロは大きいもんね。

「試しに、肩に乗ってみる?」
「キュウ」

恐る恐る私の肩にとまるクロ。あれ?思ったより大丈夫そう。デカいけど。

「姿が人寄りになると、身体能力も合わせて下がるんだよね?」
「はい。ですが、元々のヒナ様の身体能力が異じょ・・・かなり高いのでしょう」
「異常って言ったよね?」
「人に寄ったところで、そこらの獣人以上にあるかと」

スルーしたな。まぁ、納得してあげよう。

「まぁ、これで町に行く準備は出来たし!行くぞ、観光!」
「俺も行くからな」
「・・・え?」
「お・れ・も・い・く」
「・・・・・はい」

迫力に押されました。
そんな風に言わなくても、別に嫌とは言わないのになぁ・・・多分。
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。