異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第六十六話 新しい一歩

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第六十六話 新しい一歩


「う~ん・・・ここがこうで・・・」

只今、新しい家の形を模索中。
目標は、昔の木造校舎。
出っ張った玄関屋根に、広い玄関。下駄箱も作って・・・。

「プライベート空間も欲しいし・・・」

私達が住む家と完全に離すのは不便だが、住み分けは有った方が良い。
食堂を真ん中にして、そこで分けるか?
建物がでこぼこしそうで美しくない。
やはりここは一つにまとめたほうが良い。
木造二階建て。
下宿の方は一階が被服室や浴場、食堂等。
二階には個人の部屋がある。
私達の方は、私とクロ、それに猫達の部屋を広げ、エストの部屋も広めに作る。
台所も少し広げた。下宿の人達がいない時は、こっちで食事出来る。
浴場は下宿と共同にした。その方が大きく作れるし、掃除も楽だ。
下宿と私達のエリアは扉で仕切る。ちょっと頑張ってステンドグラス風にしてみた。
全体的に、和風モダンな雰囲気が出たと思う。
建物の裏には縁側と、二階にはバルコニーを作った。
庭は猫達にお任せしたら、本格的な日本庭園に仕上がったのには驚いた。
猫達にお願いされて、ホームセンターで松や砂利、苔や芝を頼まれていたが、ここまでとは・・・。
出来上がった建物と転移石を繋ぐ道を作り、建物の表側にも樹や花を植えた。

「皆、お疲れ様!」

猫達の頭を撫でて回る。
エストやナーブ、ポチも手伝ってくれた。そして、キャロルも。

「素敵・・・」

キャロルが建物を見て、呆然と立っている。

「気に入った?」
「もちろん!」
「今なら部屋を選べるよ」
「やった!」

まぁ、どの部屋を選んでも、作りは一緒だけどね。
キャロルが選んだのは、食堂に一番近い部屋。予想通りで笑った。
各部屋にはベッドと机が入れてあり、ウォークインクローゼット付きだ。

「部屋は好きな家具を置いてね」
「私の部屋・・・夢みたい!」

その日の晩御飯はすき焼きにした。お祝い事には、すき焼きだよね!

「ん~!ここに来るまで、生の玉子なんて絶対に食べなかったのに!」
「お外では食べないようにね。それ一応、野菜だから」
「は~い」

コマのほっぺに付いていたクッキーの欠片を取り、お皿を取りに厨房へと入る。
大人数は想定していないので、いつもの台所より少し広い作りだ。
部屋も十部屋しかないしね。

「「「「ごちそうさまでした」」」」
「ごちとうだまでちた」
「きゅ!」

クロと猫達は食事が終わると、自分達が使った食器を厨房へと運び、新しくできたリラックススペースで遊び始めた。
大きなクッションやお絵描きセットも置いてある。
他にもリバーシや将棋等、大人も遊べる物も充実!

「お腹いっぱいぃ」

食後は縁側に出て、晩酌も出来る。

「キャロルの新しい一歩に」
「下宿の完成に」
「ヒナが作ってる、奇妙な植物に」

それぞれが何に乾杯するかの宣言をするが、最後のが引っかかった。

「奇妙とは失礼な」
「いや、あれは奇妙だろう。幹にびっしりと粒粒が・・・」

エストは鳥肌が立ったのか、自分の腕をさすっている。
彼が奇妙と呼んだものの正体は、芽キャベツだ。
見た目が微妙なのは、まぁ、認めるけども!

「さっき食べてたでしょ」
「は?」
「これっくらいのキャベツ」

ピンポン球くらいの大きさのキャベツに似たやつだ。
湯がいてマヨ付けても美味しいし、焼いて焼肉用のタレでも美味しい。味がほぼキャベツだからね。今日は湯がいたのを出した。

「てっきり、間引きしたキャベツかと」

むこうの世界でも、小さい時に採ったキャベツだと思ってる人がいたな。

「美味しかったでしょ?」
「美味しかった」
「じゃあ、良し。乾杯!」
「「乾杯!」」

楽しい時間はあっという間に過ぎ、キャロルが町へ帰る日が来た。
なので、ついでに私も町へ行く事にした。
絡まれない様に人型で行く。

「じゃあ、行ってきます!」
「行ってきます、師匠!」
「おう。気を付けてな」

エストに見送られ、先ずは二人で森へ飛んだ。

「なんか、懐かしいわぁ」
「ぶふっ」

あの時のキャロルを思い出して、思わず噴き出した。

「もう!」
「ごめん、ごめん」

二人で歩く事三時間。町へとたどり着いた。
私が身分証を持っている事に驚いたキャロルだが、「まぁ、ヒナだし」とか失礼な笑顔で言われた。
とにかく、先ずは冒険者ギルドへ行く。
キャロルはパーティから除籍されたので、ソロとして依頼を受ける事になった。
女性一人で冒険者というと、厳しい場面もあるらしい。
まぁ、私とエストで鍛え上げたので、そんじょそこらの冒険者に負ける事は無いだろう。

「お待たせ!」
「どうだった?」
「受付の子に、本人確認された」
「ぶふっ・・・まぁ、ほぼ別人だもんね」
「おかげ様でね。じゃあ、買い物行く?」
「そうだねぇ」

なんて話をしていたら、一団がこちらに向かって歩いて来た。

「うげっ」
「あぁ」

キャロルの、元冒険者パーティだ。
相変わらず数名の女性を引き連れている。
道を占領して歩くな。邪魔だろ。

「おや?」

通り過ぎるのを待とうと思ったが、向こうから来てしまった。

「そこの君達!冒険者だろう?」

もしかして、気付いてない?
私はお口にチャック。

「僕達のパーティに入らないかい?見た所、剣士だろう?うちの剣士が丁度辞めてしまってねぇ。君達みたいに綺麗な子が入ってくれたら」
「ぶふっ!」

噴き出したのは、キャロルだった。
私は我慢したのに!

「あはははは!な~んでこんなのが良かったんだろう!」

周りは困惑してキャロルを見つめている。本当に気付いてないみたいだ。

「行こう!」

私の手を取り、歩き出したキャロル。

「ちょ、待ってくれ!」

キャロルと目を合わせ、ふふふ、と笑い合う。

「「おとといきやがれ!」」

二人で振り向いて、あっかんべ~!うん、揃った。
クズ男はぽか~んと口を開け、それ以上追って来る事は無かった。

「ああ、すっきりした!」
「あの顔・・・ぶふぅ!」
「「あははははは!」」

それから二人で町を回り、楽しくお買い物をした。
夕方になり、町の入り口まで戻って来た。

「明日には帰るから」
「連絡頂戴ね」

キャロルの耳には、通信用のイヤーカフスが着けられている。

「連絡しないと、ご飯出ないから」
「それは絶対に嫌!」

ナイスバディになっても、食いしん坊は変わらない。

「じゃね!」
「また明日!」

キャロルと別れ、町の外へと出た。
振り返ると、まだ手を振っているキャロルが見えた。
手を振り返し、人目の無い場所まで移動してから。転移石を起動して家へと帰った。

「おかえり」
「ただいまぁ、エスト。ねぇ、例のクズにさ」

数年後、キャロルはソロの女性では珍しいSランク冒険者として名を挙げていく事になる。
彼女にインタビューをした新聞記者が活躍の秘訣を聞いた所、「美味しい食事と、大切な帰る場所」と答え話題となった。
記者達が躍起になって彼女の定宿を探し回ったが、結局彼女が引退した後も、見つける事は出来なかったとか。
たった一つ分かったのは、彼女が大の猫好きと言う事だけだった。
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