異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
69 / 141
連載

第八十三話 冬のお客様

しおりを挟む
第八十三話 冬のお客様


ノアが来てから、数日が経った。
クロと猫達はすっかり馴染み、ノアは無表情ではあるものの、身体を縮める事は無くなった。
食べる物も甘酒からお粥になって、少しずつ食べられる量も増えて来た。
今は猫達と一緒にこたつに入り、絵本を読んでいる。
アニマルセラピー的な感じだろうか。まぁ、うちの子達は皆超かわいいしね!

「さぁ、そろそろ寝る時間だよ」
「「「「は~い、ヒナしゃま」」」」
「キュ」
「あい」

皆で一つのお布団に入る。一番端っこは私だ。
最初、ノアは部屋の隅で縮こまって寝ようとしていた。いつもそうしていたかのように。
なので、抱えて布団の中へと入れ込んだ。今は猫達に手を引かれ、戸惑いながらも自分から入るようになってくれたんだよね。
私の隣は毎回違う子が来るが、ノアが来てからはずっとノアが隣で寝ている。

「おやすみぃ」

布団を掛け、軽くポンポンと叩く。
ノアは暫くぼんやりと天井を見つめると、ゆっくりと目を閉じた。
少し経つと、穏やかな寝息が聞こえてくる。だが・・・。

「う・・・ぐ・・・」

真夜中頃、ノアは必ずうなされる。

「大丈夫、大丈夫」

涙をぬぐってあげると、少し落ち着く。
こういう時は・・・そうだ、お祖母ちゃんが小さい頃に歌ってくれた歌があったな。

「ねんねこころりん、ころりんよ♪」

両親を亡くした頃、私も夜泣きをした頃があったらしい。
その度にお祖母ちゃんが寝かしつけてくれた。

「フワフワ小鳥はまん丸で、日向ぼっこが大好きで♪」

ポンポンとリズムに合わせて軽く布団を叩く。
ノアの顔色が段々と良くなっていき、穏やかな寝息が聞こえて来た。
さて、私も寝ますかね。





「うわぁ、つもったねぇ」

朝起きると、外は一面雪景色。
家の中にいても、少し寒い。完全防寒も出来たけど、この方が季節を感じられるから好きだ。
食堂にあるこたつとストーブのスイッチを入れ、玄関から外に出た。

「おぉ、寒いなぁ」

吐いた息が白くなって風に流されていく。

「ヒナひゃま!」

声のした方を見ると、ポチだった。
ん?「ひゃま」?
よく見ると、何かを銜えているみたいだ。

「おはよう、ポチ」
「ふふぁふぉうふぉふぁいまふ」

何言ってるか分かんないけど、とりあえず可愛いので良し。
頭をなでてあげると、凄い勢いで尻尾を振るポチ。
フェンリルらしいが、どう見ても白いちょっと大きな犬にしか見えない。

「ところで、何を銜えているの?」

雪玉かと思ったけど、フワフワしているようにも見える。

「ふぉふぇふぁ」
「ごめん、私が悪かった」

私がそう言うと、ポチが銜えていた物を離した。
それはやっぱりフワフワで・・・宙に浮いた。

「あ・・・」

白いフワフワが風に乗って行ってしまった。

「ごめん、私のせいで」
「問題ありません。まだあちらに沢山いますので」
「います?」

生き物なのか?
ポチが見た先には、ナーブの木がある。
ポチと一緒に近付くと、ナーブがフワフワに囲まれていた。

「凄いねぇ。ポチの抜け毛みたい」
「抜け毛・・・」

今は冬の真っ最中だから、少し早いか。

「ヒナ」
「おはよう、ナーブ。それって、何?」
「冬の精霊」
「へぇ~、冬の精霊・・・精霊?」

異世界っぽいのが来たなぁ。

「ふふ、ヒナも気に入られたみたいだ」
「へ?」

いつの間にか、私の周りにもフワフワがいる!
指でつついてみると、フワっとしていた。

「意外と可愛いね」
「冬の精霊が訪れた土地は、肥沃になるよ」
「可愛い上に、凄いんだねぇ」

雪の上にいたら、見失いそうなくらいに真っ白。

「ここが気に入ったみたい」
「そっか、良かった。でも、ずっと冬のままだと困るなぁ」
「大丈夫。少ししたら風に乗って、また別の地に冬を運ぶ」

さっき飛んで行った子みたいな感じか。
上を見ると、数十個のフワフワが風に乗って飛んでいた。
向こうの世界で言う、冬将軍みたいな感じだろうか。
少し風が吹くと、綿毛の様に飛んでいく冬の精霊。

「綺麗」

もう少し浸っていたいから、その銜えた精霊さんを放してあげようね、ポチ。





「そろそろ食べごろかな」

縁側に吊るしておいた柿が、いい感じにしわしわになっている。
一口齧ると、優しい甘さが広がる。

「んん~、懐かしい。ん?」

視線を感じたので見ると、ノアだった。
おいで、おいでをすると、ゆっくりと近寄って来た。

「食べてみる?」

一つ見せると、おずおずとだが頷いて受け取ってくれた。
ノアは一口食べると、味わう様にゆっくりと噛む。
気に入ったのかな?

「・・・美味しい」

久しぶりに聞いたノアの声は、男の子とも女の子とも言える声だ。

「来年の秋は、ノアも一緒に作ろうね」
「・・・来年・・・秋・・・ここにいて、良いの?」
「もちろん。お正月には、皆で沢山ご飯食べて、お餅をつくの。春には種を撒いて、田んぼも広げようか。夏には皆で泳ぎに行くのも良いね。花火もしようね。秋になったらキノコも作って、干し柿に焼き芋・・・ああ、来年は干し芋も作ろう」
「うっ・・・ひっく・・・」
「いっぱい遊んで、いっぱい食べて、そしたら皆でお風呂に入って、寝よう」

ノアの目から、大粒の涙がポロポロと零れる。

「・・・うん」

初めて見たノアの笑顔。まだどこかぎこちなさが残っているが、笑ってくれた。

「こんなに泣いてぇ。おめめが真っ赤」
「・・・ふふ、元から真っ赤です」
「確かに」

私が真剣な顔で言うと、ノアがまた笑ってくれた。

その日の夜から、ノアは夜泣きをしなくなった。
しっかりとご飯を食べるようになり、少しずつ話す言葉も増えていった。
まだ大人は少し怖いみたいだが、時折ポチやナーブ達とも話すようになったらしい。
ノナさんや三婆とも、少しずつ話すようになった。

「元気なのは、良い事なんだけどねぇ・・・」

夜、お腹に衝撃を受けて目が覚めた。
見ると、ノアの足がクリーンヒットしていた。どうやら、寝相まで元気になったらしい。
ベッドを広げるか、分けるか・・・もう少し、このままでも・・・。

「ぐふっ」

今度は頭突きが脇腹へ!?
よし、明日にでも皆に聞いてみよう!
とりあえず、ミケのお腹の上に乗ったノアの足をそっと戻した。
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。