異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
76 / 141
連載

第九十話 弟分

しおりを挟む
第九十話 弟分


「た、ただいま・・・」

ジローが島に帰ってきたのは、ヤマタノオロチ事件の二日後の深夜だった。
お腹が減ったというので、ミトの実丼(味付けは牛丼風)を作って出した。

「美味い!ヒノモトの味付けと似てるのに、やっぱり違うんだよなぁ」

ヒノモトは見た目通り、日本に似た文化を持っている。
建国者が作ったと伝わる醤油や他の調味料もあるし、和食っぽい食事もある。
まぁ、ここではミトの実やココの実等、島で採れる食材を使っているからね。

「随分と時間が掛かったね」
「冒険者ギルドの方は直ぐに終わったんだが、あのクソ眼鏡が・・・」
「クソ眼鏡?ああ、あの白いローブの人?」

一瞬だけここに来た時はフードで見えなかったが、ツバキが見せてくれた映像でフードを上げた姿を見た。確かに眼鏡を掛けた、真面目そうな人だった。

「クレスや俺と同じ施設の出なんだが、少し見ない間にほんっとに可愛げが無くなりやがって!何故森に入っただの、滞在先は何処だだの、ネチネチ・・・ここに来るのも一苦労で」

ん?

「やっと解放されたかと思ったら、ずっとついて来やがって!なんとか撒いて来たが」

突然、ビー!ビー!と凄い音が外から聞こえて来た。

「何だ!?」
『ヒナ様』

セバスから通信が入った。

「セバス、何この音」
『侵入者です』
「侵入者?今まで結構な侵入者が入って来てる(ネネルとか魔王とか魔王の部下とか)けど、こんな音しなかったよね?」
『はい。魔王襲撃より学び、ツバキと相談して新たに付けました。迎撃しても宜しいでしょうか?』
「迎撃!?え、敵なの!?」
『さぁ?』
「はい?」
『悪意や敵意は無いようですが』
「じゃあ、駄目かな!?」

サラッと「迎撃」なんて言うから、また魔王みたいなのが来たのかと思った。

『・・・そうですか』

なんか、しょんもりした!

「えっと、因みに、迎撃ってどんな・・・」

まさか、あの空も飛べちゃう奴か!?肩に小動物乗せて、お墓参りとかしちゃうアレか!?

『島の動物による遊撃及び陽動。最終的には落とし穴により地上へと』
「メルヘンな迎撃ですこと・・・最後は可哀そうだけど」
『まだ訓練中ではありますが、本格的な迎撃もご用意できるかと』

私の知らないところで、何かが始まっていた!訓練って!?

「悪意も敵意もない相手に、何をぶつける気だ」

警戒音が消えたと思ったら、今度は玄関チャイムが鳴った。

「侵入者が律儀にチャイム鳴らしたから、行って来る」
『私もそちらに参ります』
「はいはい」

通信を切り、玄関へと向かった。

「はいはい、どちら様・・・あ」

玄関の戸を開けると、あの白いローブの眼鏡の男性が立っていた。

「私はヒノモト国、ドウシン団第三部隊隊長、カムラと申します」

ドウシンって、同心?確か、江戸時代の警察みたいな組織が同心って呼ばれていた気がする。
まぁ、遥か昔の授業で習った事だから、詳しくは覚えていないけど。
侵入者って、この人の事なんだろうけど・・・。

「おい、ヒナ?って、あ~!なんでここにいやがる、このクソ眼鏡!」

ああ、やっぱりその件の眼鏡さんか。

「ヒナ様」

セバスも来たな。

「そちらの・・・眼鏡殿」
「カムラさんだって」
「カムラ殿、どうやってここへ?」
「そんな事はどうでも良い!ヒナ、さっさと」
「はいはい、ジローはちょっと黙っててねぇ」

とりあえずガムテープで口を塞いでおく。
便利だよね、ガムテープ。昔のは真っ直ぐ切れなくて、ハサミを使って切っていた。
何回か使ってると、ガムテープの粘着がハサミに着いて切れなくなるんだよねぇ。
それを小さく切ったガムテープでペタペタと取っていた。
今は手で真っ直ぐ切れるのがあるし、ハサミも「引っ付かない」のが出てきたっけ。
でも今度はそのガムテープを手で切ろうとして、端っこの糸がミ~!って出てきて、結局ハサミで切るという・・・いや、何の話だ。

「どうしてもその馬鹿エルフが宿を教えなかったもので、追跡魔法をかけておいた。突然国から消えたので、後を追って来た」
「なるほど、追跡魔法ですか・・・飛行技術が途絶えた事で油断しておりました。ヒナ様、どうやら問題はなさそうですので、お任せしてもよろしいでしょうか?」
「へ?ああ、うん」
「何かございましたら、アレと一緒に落とせば良いかと」

セバスが、ガムテープを剥がそうとしてもがくジローを指して言った。

「んんん~!!」
「それでは、失礼いたします。問題になりそうならば、その男の記憶を消すのをお忘れなく」

後半は私にしか聞こえない声でぼそりと呟いたセバス。相変わらず、ジローやクレスには塩だ。

「まぁ、立ち話も何だし、どうぞ」
「ありがとうございます」
「ほら、ジローもいつまで遊んでる・・・の!」
「いっっってぇぇぇ!!」

勢いよくガムテープを剥がしてあげた。

「夜中なんだから、大声出さない」
「最近、俺の扱いが雑な気がする」
「・・・気のせいです(棒読み)」
「今の間は何だ!」
「気のせいです」

食堂に向かっていると、階段を降りて来る足音が聞こえて来た。

「ふぁ~、なぁにぃ?こんな夜中にぃって、やだ!カムラじゃない!大きくなったわねぇ!」

あ、そうか。同じ施設だったんだよね・・・ん?同じ施設?
二人はエルフで、こう見えても二百歳は超えている。
その二人が施設にいた頃に、この人もいたって事は・・・少なくとも百歳オーバー!?
でも、耳はエルフじゃない。

「クレスまでいるんですか」
「そうよぉ。私達、一緒に暮らしているの」

間違ってはいないが、誤解を招くような言い方をしない!

「ちゃんとお金をもらっている、下宿です」

結局皆で食堂に移動。
三人にはコタツに座ってもらいお茶を用意していると、突然怒号が聞こえて来た。

「今、何て言った」
「私は、真実を言っているだけです」

ちょっと目を離した隙に、何が起こったんだぁ?
ジローがカムラの胸ぐらを掴み、今にも殴り掛かりそうになっている。
クレスはそれを止めようともせず、険しい顔でカムラを睨んでいた。

「何、何?どうしたの?」

お茶を持って戻るが、一触即発状態。

「どう見たって、おかしいでしょう。獣人の変異種のメス?に、下宿?魅了か幻惑の魔法にでも掛かったとしか思えません。直ぐに解呪の」
「まぁまぁ、落ち着いて」

あらら、どうやら私の事で喧嘩しているようだ。

「外に出ろ」

完全に頭に血が上ってるなぁ。

「良いでしょう。私がお二人の目を覚まさせて頂きます」

立ち上がりかけた二人の顔を、鷲掴みして止めた。

「人の話を聞け」

真冬の真夜中に何をおっぱじめようと言うのか。

「クレスも止めようよ」
「嫌よ。だってそのクソ眼鏡が悪いんだもの」
「二人が心配なんでしょうが」

今でも「化け物」と言われると少し傷つくが、自分でも怪しいと思うからね。
二メートル越えの二足歩行の喋る猫。
もしも自分の身内がそれと「一緒に暮らしてる」なんて言ったら、心配もするだろう。
始祖の血が濃いって事は、変異種と言われるのもあながち的外れでもないしね。
魅了の魔法も幻惑の魔法も使ってないけど。

「と言うか、こんな夜中に喧嘩なんかされたら、皆が起きる」

エストとキャロルは留守だが、クロ、猫達、ノアの年少組はぐっすりお眠の時間だ。
白とナーブにはセバスが説明しているだろうから、今頃寝ているだろう。
そう考えると、ついつい手に力が入っちゃうし、爪も出ちゃう。だって・・・猫だもの。
さて、どちらが先にギブするかなぁ。
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。