異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百話 空へ

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第百話 空へ


コットさんが下宿に来てから数日が経った。
セバスの手伝いで無事引っ越しを終えたコットさんは、何だかんだギャアギャアと言い合いながら、ノナさんと縁側でお茶を飲むのが日課になりつつあるようだ。
それを微笑ましく、まんざらでもない様子のノナさんを生暖かく見守る今日この頃。
私はアルガバイスの図書館へ行こうと、転移石に向かっていた。

「ヒナ様」

セバスだ。
コットさんが来てから、前よりもここへ顔を出す事が増えた気がする。

「コットさんと将棋なら、もう少し待ってあげてくれる?今、お茶タイムだから」
「ヒナ様はお出かけでしょうか」
「図書館にね。ほら、飛行技術が廃れたって言ってたでしょう?廃れたって事は、前はあったって事だから、何かヒントが無いかなと思って」

私はまだ、自力で飛ぶ事を諦めてはいない!
この前のヤマタノオロチの時も思ったが、モチに危険な場所に行ってもらうのは怖いしね。

「さすがに羽を生やしたいとは思わないけど、魔道具とか魔法が残っていないか探しに行って来る」
「そうでしたか。それは丁度良かった」
「ん?」

セバスに連れられて、ツバキの所にやって来た。

「ヒナちゃん!」

人型から元に戻った私に抱き着いて来たツバキ。
相変わらず、首が痛い。

「離れなさい、ツバキ」
「ぶ~、ケチセバス!自分が出来ないからって」
「え、セバスもこのモフモフを味わいたい?」

思わず両手を広げる。だって、自慢の毛並みですから!手入れも欠かしません!
一瞬、一歩踏み出しかけたセバスが止まった。

「コホン。ツバキ、いい加減にしなさい。ヒナ様も、悪ノリは止してください」
「「ぶ~」」

もう少しだったのに。

「えっとねぇ・・・ここなの!」

ツバキが世界地図のある場所を指した。
島が浮いている場所からそんなに距離は無いみたいだ。

「ヒナ様がいらっしゃるまで、この島の魔力は枯渇寸前でした」
「ああ、うん。超ギリギリだったんだよね」
「はい。その為、この神社周辺を守る事を優先して、必要性の低い部分を切り離しました」
「へぇ~」

と言う事は、この島意外にも浮いている小島があるって事か。

「切り離した事で魔力の消費が抑えられましたが、小島と言えどそろそろ限界かと」
「大変じゃん!海に落ちるならまだしも、町の上とかだったら」
「大惨事ですね」
「大惨事ですね、じゃないよ!いや、大惨事なんだけども!ど、どうするの!?」
「海に落とすか、回収するかですね」
「あ、回収できるんだ」

早く言ってよ!
海に落とすと簡単に言うが、それはそれで大惨事だから!海の生き物に大迷惑だし、海流とか変わっちゃうし!
海にそっと下ろしたとして、道明寺さんが何か残していて、それが見つかって大騒ぎ・・・って事もあり得る。
と言う事は、回収するのが一番良いだろう。

「じゃあ、回収で」
「畏まりました」
「は~い」

新しい島かぁ。ちょっと楽しみだ。





「オーライ!オーライ!」

ゴン!と言う音と共に、隙間なくピッタリと引っ付いた地面。
その直後、毛細血管の様に細い光が本島から引っ付いた島へと走ったのが見えた。

「魔力が通ったようですね」

セバスによると、走った光は私が補充した魔力で、今ので完全にくっついたらしい。

「ここって、何があったの?」

目の前の元小島には、森が広がっていた。
奥に続く道は一応あるが、先に何があるのかは見えない。

「工房です」

セバスとツバキ、そして私で、道を進んで行く。
他の皆も来たがったが、もしかしたら魔物が住み着いているかもしれないので、先に調査をする事にした。
特にポチには、皆を守る為と森から何か出て来たら遠吠えで知らせる連絡係として残ってもらった。
探索を掛けてみたが、大きな魔物の気配は無い。
暫く進むと、開けた場所に出た。

「工房って、あれ?」
「はい」

草が伸び放題に伸びた先に、レンガ造りの洋風建物が建っていた。
中からエプロンを着けたス〇ラおばさんが出て来そうな雰囲気だ。
セバスが木製の扉を開けると、パッと部屋の中が明るくなった。

「掃除が必要ですね」

床にはたっぷり埃が積もり、セバスの足跡が付いている。
因みに私の方は、肉球がくっきり・・・ちょっと可愛いと思ってしまった。

「工房の半分は休憩室で、こちらが工房になっています」

部屋の奥の扉を開けると、少し埃が舞った。
その部屋には大きな窯と言うか、炉の様な物も有り、鍛冶も出来るようになっている。

「ヒナ様、こちらへ」

更に奥の扉を開けると、倉庫になっているようだった。
空の棚が置いてあり、埃が積もっている。

「切り離す時に、ある程度の物は運び出したのですが」

部屋の一番奥、布が掛けられた棚があった。

「こちらをすっかり忘れておりました」

セバスがゆっくりと布を取ると、ズラリと並ぶ・・・箒?
掃除道具か?

「ヒナ様、空を飛びたいと仰っていましたよね?」

箒、空を飛ぶ・・・まさか!

「こちらを」

セバスに手渡されたのは、デッキブラシ。
先端にはご丁寧に、小さなラジオと黒猫のヌイグルミが・・・完全アウト!

「セバス?」
「冗談です」

その手の冗談は危険だから!

「こちらを」

大小様々な箒が並ぶ中、一番大きな箒を手渡された。

「残念ながら、このままではただの掃除道具ですが」

ここまで期待を持たせておいて!?

「ここに魔石を入れる場所があります」

箒の柄の先に、くぼみがあった。

「魔石がなければただの箒ですので、コットさんに会うまですっかりさっぱり記憶の彼方へ・・・」
「その魔石も、かなり特殊だったわよね」
「はい。残念ながら、その魔石を完成させる前に大戦が起きてしまいました」

箒のくぼみは、まるで花の様な形をしていた。

「この形、どっかで見たような・・・ああ、あれだ」

確か、手芸が得意な防具職人の人が作った髪飾り!
アイテムバッグから取り出してはめ込んでみると、ぴったり!

「「おぉ~」」
「でも、何もおきないね」

その時、「防具としては何も役に立たないんだけどねぇ」と言う声が聞こえて来た。
とりあえず倉庫の中では怖いので、外に出てみた。

「座るのって、ここ?」
「もう少し後ろの方です」

てっきり棒の部分に座るのかと思ったら、穂を括り付けてある部分に座るようだ。
まぁ、棒に直でまたがって全体重掛かったら、痛いわな。

「さて・・・」

どうすんだ?
と言うか、ツバキ、目が赤く光ってるんですけど。まさか、録画モードか!?

「軽く地面を蹴ってみてください」
「う、うん。よっ」

棒の部分をギュッと握り、ピョン、と飛んでみた。そして着地。

「ぶふっ」
「か、かわいい~!」
「セ~バ~ス~?」
「ぐふっ・・・失礼いたしました。箒に魔力を流してください」

うぅ、無駄に恥をかいた気がする。
ゆっくり魔力を流すと、魔石に灯りが灯ったように光った。

「地面を蹴ってみてください」
「・・・」
「今度は、本当です」

ちょっと怪しいが、言う通りにちょっとだけ飛んでみた。

「お、おぉぉ!」

浮いてる!?足が着かない!

「前進、後進、右左折は体重移動で行います」
「おぉぉ」

行ったり~、来たり~・・・楽しい!
これなら、大丈夫そうだ。
後ろに体重を掛けて高度を下げると、地面に足が着いた。

「ちょっと行って来るね」
「お気をつけて」
「いってらっしゃ~い」

グッと足に力を込めて地面を蹴ると、一気に空の中へと舞い上がった。
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