異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百二話 これは食べ物ではありません

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第百二話 これは食べ物ではありません


わくわくしながらナーブの所へ向かう。

「おはよう。ナーブ、ポチ」
「おはよう」
「おはようございます、主!」

ポチの頭を撫でてあげると、フワフワの尻尾が物凄い勢いでフリフリ・・・可愛い。
可愛いが、ちょっとムズムズする。何故か掴みたい衝動に駆られた。

「主?」
「はっ!いや、何でもないよ」

いかん、いかん。

「そう?じゃあ、種を出すね」
「出す・・・」

昨日からずっと気になっていた。どうやって出すんだろうと。
私が色々な意味でドキドキしていると、ナーブのお腹が光った。
その光がどんどん上へと上がって行く。そして、ナーブの口から光が外へと出た。

「(良かった。上からだった)」

ちょっとホッとしたのは内緒だ。

「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう」
「種の名前は、バスぷにの種だよ」
「バス・・・ぷに?」

バスぷに・・・想像ができん。

「悪い子じゃないから安心して。日当たりの良い所に植えてあげてね」
「分かった。ありがとね、ナーブ」
「ヒナの役に立てたなら、僕も嬉しいな」

種を見てみると、心なしか少し大きくなっているような?しかも、ほんのり光っているような気もする。

「お礼をしたいけど、何か欲しい物とかある?」
「え?欲しい物?う~ん・・・あ!ヒナちゃんの写真!」
「へい?」
「ツバキさんが、動画?から写真が作れるって言ってたの!だから、ヒナと僕とポチの三人での写真が欲しいなって」
「そ、そっかぁ。ツバキがねぇ。でも、写真なら私が持っているカメラで撮れるから、今直ぐ撮ろうか」
「う、うん!」

通りかかったエストにお願いして、ナーブを真ん中にしてパシャリ。ポチにも一枚あげた。

「ありがとう、ヒナ!」
「大切にします!」
「こっちこそ、ありがとね!」

二人にお礼を言ってその場を後にし、神社へと走った。
ツバキの部屋の扉を勢いよく開けると、何か作業をしていたツバキがビクリと背中を震わせた。

「ヒ、ヒナちゃん!?どうしたの?」
「ツ~バ~キ~。それ、なぁにぃ?」
「ここここれは、その・・・」

ツバキが慌てて隠そうとしているが、手遅れである。
私の足元に落ちた一枚を拾い上げると、箒に乗った私の写真だった。

「え、え~っとぉ。思い出・・・的な?」
「へぇ~」

自分が写っているとは認識できるが、ぱっと見・・・猫の写真集っぽい。
箒にまたがって、まるで飛ぼうとしている猫。
野菜をじっと見つめる猫。
小さな猫達とお昼寝中の大きな猫。
この姿になる前の自分だったら、ニヤニヤしながら見ていただろうな。

「はぁ~・・・まぁ、ほどほどにね」

ツバキが物凄い勢いで何度も頷いた。
それを見届け、畑に戻った。

「ふぅ~・・・良かったぁ」

ツバキが床に散らばった写真を拾い集める。

「こっちは見られなくて」

ヒナが見たのは猫の姿で映っている物だけだったが、実は人型の写真もある。
もしヒナが見たのがこっちだったら、まとめて焚火にされそうだ。

「ツバキ」
「ひぃ!?って、なんだセバスかぁ。脅かさないでよ!」
「先程、ヒナ様が神社から出ていくのを見かけましたので。まさか・・・」
「だ、大丈夫!こっちは見られてないよ!まぁ、ほどほどにとは言われたけど」
「そうですか、それは良かった。ふむ・・・十分な数が揃いそうですね」
「それは、もう!」
「大きさはL版で、ページ数は・・・」
「うんうん。で、表紙が・・・」

ツバキとセバスの悪だくみに、ヒナはまだ気づいていない。





「日当たりの良い場所・・・は、沢山ある」

背の高い物と言えば、下宿とモチ一家が住む樹だけだからね。
バスぷに。グミみたいな弾力で透明な種。
スライムの生る樹、とか?いや、バスどこ行った。
何となくだが、大きく育つ気がする。
ウロウロと歩き回って、果樹園と畑の真ん中に植える事にした。
土と肥料を混ぜ、種を植える。
魔法で出した水を降らせると、ぴょこん、と双葉が芽吹いた。

「相変わらず、早い・・・ねぇ」

あっという間に私の身長を超え、大きな樹へと成長した。
そして小さな白い花が咲き、赤茶色の表面が少しデコボコした実が生った。

「どっかで見た事あるような?」

大きさはテニスボール程だが、この見た目に見覚えがあった。

「ああ、ライチ!」

結構好きなんだよね、ライチ!
サイズがちょっと気になるが、切れば問題無し!
成長が止まったのを確認。一つ採ってみた。
きっと甘い香りが・・・ん?
甘いは甘いが、食べ物の香りじゃない気がする。
皮をむいてみると、ぷるんとした実が現れた。

「んん~?」

薄いピンク色のそれは、少しポコッとした部分がある。
横から見てみたり、日に透かしてみる。

「あ、ああ!肉球か!」

ポコッとした膨らみが、肉球の形に見えた。
可愛い。

「試しに一舐め・・ぶふっ!」

ペロリと舐めてみたら、甘みと苦みとが混ざり、食べてはいけない物だと分かった。
鑑定を掛けてみると、「バスぷに:お湯に溶かすと、色々な効能が付く。桃色:リラックス効果・魔力回復」と出た。

「あ~!だからバスぷにね!入浴剤かぁ」

ここは浮島だから、流石に温泉は無理だろうなと諦めていた。
これなら、気軽に楽しめる!
まだ樹に生っている他の実を鑑定してみると、「魔力と体力全回復」や、「美容効果」「浄化特化」等、様々な効能があるのが分かった。

「リシュナにあげたら喜ぶかな?」

今度、お酒と一緒に渡してみよう。
疲労回復もあったから、冒険者組に良いかも。

「むふふふふ」

そして夜が来た。
男性用の大風呂に向かっていると、エストに会った。

「どうした?」
「むふふ。今から、ちょっとした実験をね」
「・・・俺も行く」
「変な事はしないよ?」
「お前の「普通」と「変な事」の境界線はおかしいからな?」
「失礼な。まぁ、見ればわかるよ!」

エストと一緒に男風呂に入って、お湯を張る。

「これを」

バスぷにの皮をプリっとむいて、お湯へ投入。
てっきり沈むと思っていたバスぷにはぷっかりとお湯に浮いた。
そして、バスぷにを中心にお湯の色が薄い青色へと変わっていった。

「へぇ~、綺麗な色!」
「ヒナ、それは?」
「バスぷに。お風呂に入れると、色々な効果が出るんだって。因みにこれは、疲労回復」
「聞いた事ないな」
「因みに、樹に生ってる」
「は?」
「あ、後で効果を教えてね。女湯の方には別の効果があるのを入れるから」

少しして皆が帰って来た。
晩御飯を終え、それぞれにお風呂へ。
私が食堂でお茶タイムを楽しんでいると、食堂の扉が凄い勢いで開いた。

「ヒナ!」
「な・・・うわぁ!」

振り向いた先、食堂の出入り口に、下半身にタオルを巻いただけのエストが立っていた。

「これ、凄いぞ!」
「ちょ、ねぇ」

そのままの姿で近寄ってくるエスト。
騎士団を引退したとは言え、日々の農作業で鍛えられた筋肉が・・・って、そうじゃない!

「一気に疲れが取れた!」
「それは良かったけども!」

ひぃぃぃ!どうしたら良いの!?

「ちょっとエスト!」
「その声は、クレス?ちょ、助け・・・ぎゃぁ!」

助けに来てくれたのかと思ったら、クレスも同じ半裸!

「ヒナ、すっごいぞ!」

今度こそ、助け・・・ジロー、お前もか!
半裸のイケオジ三人に詰め寄られる・・・なんかもう、色々と駄目な気がする!

「・・・何か着ろぉぉぉ!」

耐えられず、食堂から一目散に逃げだした。
もうホント・・・勘弁してください!
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