異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百二十三話 セバスの想い

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第百二十三話 セバスの想い


「そして、永劫とも言える寿命、ですか」

セバスの言葉に、一瞬頭が真っ白になった。

「永劫って、不老不死って事?」
「‥‥‥はは! そこまでじゃあないさ。二百年か五百年は伸びるかもしれないけどな」

超アバウト! 千年も生きてると、二百も五百も大差無いのか?

「セバス?」

いつも柔らかい表情のセバスが、珍しく真剣な顔でワイズさんを見つめていた。

「ヒナ様。三百年だろうが五百年だろうが永劫だろうが、私は貴方の傍におります」
「へ? あ、はい」

突然どうしたんだ?

「長すぎる寿命は、時に呪いとなります」
「呪い‥‥」

セバスは道明寺さんが亡くなった後、ずっと一人でこの島の管理をしてきた。
人工生命体とは言え、ここまで感情があるのだ。寂しかったりしたのかな?

「ヒナ様がいない数百年など、私にとっては瞬きの様な物」

心を読まれた⁉

「お傍にいられる一分一秒の前には、全てが霞む」

なんか、愛の告白みたいだな‥‥。

「お傍にいられない時は、動画や写真が私の心を癒してくれる」

違った。ストーカーの告白だった!

「まぁ、本気はさておき」
「そこは冗談って言う所でしょうが!」
「多少寿命が延びる程度ならば、良いのではないでしょうか」

多少‥‥三百年から五百年が、多少? ってか、結局私って、何年生きるんだ?

「私も数千年とか仙人みたいな寿命になるの?」
「そうだなぁ‥‥行っても千年くらいか?」

あ、それくらいなんだ。いやいやいや!  ちょっと待て、自分! 寿命が千年って、十分長いぞ! 感覚がおかしくなって来てる!

「損は無いと思うぞ?」
「う~ん‥‥」

イヤーカフスを使わずに人型に変身できて、膨大な魔力を得られる。寿命が千年近くになる。
確かに損は無いなぁ。
でも、別に今のままでも困ってないしなぁ。

「ああ、お前さんならあれだ。普通の猫の大きさにもなれるようになるぞ」
「やりましょう、ヒナ様!」
「おい!」

あれだけ意味深に「やめた方が‥‥」的な事言ってたくせに!

「普通の猫のサイズですよ?猫だから、町に入る為に列に並ぶ必要も無い。一々町を出てから転移石を使う必要もない」

う‥‥それはちょっと、良いかも。

「屋根の上とか、走りたい放題」
「いや、それは別に‥‥」

ちょっと楽しそうだけど。

「まぁ、良いか」

セバスの押せ押せに負けた。

「じゃあ、始めるか」

ワイズさんと向かい合って立つと、両手を握られた。
そして、近付く顔‥‥‥と思ったら、額と額をくっつけた。

「いくぞ」

両手と額から、ワイズさんの温かい魔力が流れ込んでくる。
魔力がふわりと体中に行き渡ると、ワイズさんが離れた。

「どうだ?」
「う~ん、なんとも‥‥くっ‥‥‥あ‥‥」

突然、全身が熱くなった。息も苦しい! 自分の心臓の音が、ドクン! ドクン! と響く。

「ヒナ様!」

セバスが駆け寄って来るのが見えたが、私の意識はそこで途絶えた。





『ごめんね。‥‥‥を‥‥‥お願い‥‥‥』

「う‥‥ん?」

目が覚めると、見慣れた天井だった。
何か夢を見ていたような気がするけど、思い出せない。
確か、ワイズさんに引っかかりとやらを取ってもらって‥‥‥どうやらぶっ倒れたみたいだ。
起き上がろうとして、身体が動かない事に気が付いた。

「ん?あぁ、なるほど」

私の上の掛布団の上に、猫達とノアが寝ているのが見えた。
どうやら心配をかけてしまったみたいだ。

「う‥ん‥‥」

私が動いたせいで、コマが目を覚ましてしまった。

「おはよう、コマ」

頭を撫でると、最初はぼんやりとしていたコマの目が段々とハッキリしてきた。

「ヒナしゃま?ヒナしゃま!」
「ぐふっ!」

首に飛びつかれた。おぉぉ‥‥。

「ヒナさま⁉」
「ヒナさま!」

次々と起きて来た猫達とノアに飛びつかれた。

「ヒナ様!」

部屋の戸が勢いよく開いて、入って来たのはセバスだった。

「良かった‥‥お目覚めになられて」

あれ、涙目?

「私、どれくらい寝てたの?」
「‥‥三日です」
「三日⁉」

マジか。
皆を落ち着かせ、とりあえず食堂へと移動する事に。
三日も寝ていたわりに身体は元気いっぱいだ。

「ヒナ!」
「ヒナちゃん!」

食堂には、ジローとクレスがいた。

「もう!心配したのよ!」
「ごめん、ごめん」
「大丈夫なのか?」
「うん」
「ヒナざまぁ~! ご無事でぇ」

半泣きのアヌリも参加。すると、エストやキャロル、他の皆も続々と集まって来た。
かなり心配をかけてしまったみたいだ。

「だから、大丈夫だって言っただろう」

最後に入って来たのは、ワイズだった。

「調子は?」
「おかげさまで」
「ふむ・・・」

不意にワイズの顔が近付き、額と額がくっついた。

「引っかかりは取れたな。反動で寝ているだけだって言ったのに、煩くってなぁ」
「眠るなんて事、聞いておりませんでしたので」

おお、セバスが怒ってる!

「まぁ、猫達がいたので心配はしていませんでしたが」

ああ、そうか。私にもしもの事があれば、猫達も消えるんだっけ。

「ぷふ、セバスったら、ずっとヒナちゃんの部屋の前から動かなかったくせに」
「だな」
「そう言うあなた達だって、ウロウロと歩き回っていたでしょう」

やれやれ、起きて早々にこれか‥‥と思っていたら、ぐぅ、とお腹が鳴った。
三日も寝ていれば、お腹も空くか。時計を見ると、丁度お昼時だ。

「よし、皆でお昼ご飯にしよう!」
「大丈夫なのか?作り置きもまだあるが」

まだ少し心配そうな顔のエスト。

「大丈夫!なんだったら、前より元気なくらい」
「はは。それは、違う意味で心配だな」

頭を撫でられてしまった。
それから一緒にお昼ごはんの支度をして、皆でご飯を食べた。

「それで?」
「ん?」
「人型になれるようになったんだろ?」
「う~ん、多分?」

正直、良く分からない。

「その魔道具で姿を変えていた時の感覚は覚えているか?」
「うん」
「それと同じだな。魔道具に流す魔力を、身体の中で循環させる」

イヤーカフスの時は、人型を思い浮かべて、魔力を流すだけだった。
魔力を身体の中で循環‥‥こうか?

「「「「「おお!」」」」」
「あ、出来た」

視界が低くなって、自分の手が人間の手になった。耳や尻尾は‥‥ある。
うん。なんとなくコツが分かった気がする。

「では、もう一つの姿は?」

ああ、確か、普通の猫のサイズになれるって言ってたな。
普通の猫‥‥猫‥‥。更に視界が低くなった。
手や足、身体は元の姿だ。

「「「おぉ~!」」」
「ちゃんと猫になってる?」
「なってる!凄いな!」

短足は変わらずか。

「クレス殿!」
「任せて!」

セバスとクレスが動いた、と思ったら‥‥‥。

「ヒナ様、視線をこちらに!」
「次はコレ着て、こっちの帽子も良いわねぇ」

撮影会が始まった。
いつの間に作ったのか、猫用の帽子や衣装が山積みにされている。

「ねぇ、セバス」

雑誌やネットで見た時は「かわいい~」と思っていたけど、自分がそうなってみると‥‥微妙な気持ちになるな。

「まさか、この為に賛成したんじゃないよね?」

ワイズさんにお願いする事に途中までは難色をしめしていたセバスだったが、突然やる気になったよなぁ。
セバスの肩が、「ギクッ」と分かりやすく揺れた。

「大丈夫です。どのお姿でも、ヒナ様が世界一ですので」

答えになってねぇ‥‥。
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