異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百二十四話 酒の恨み

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第百二十四話 酒の恨み


ワイズさんに「引っかかり」とやらを取ってもらってから数日が経ち、何か変わったかと言うと‥‥特に何もなかったりする。
寿命が延びたとか言われても実感は無いし、魔力が増えたと言われても、元々そんなに魔法使ってなかったんだよなぁ。
ああ、一つ良い事がある。
今日の様な春のぽかぽか日和に、縁側でうたた寝が出来る事だな。
元の身体だと通り道を塞いでしまうが、座布団一枚で済むようになった。
パチン、パチンと将棋を指す音が子守歌の様に聞こえる。
今日の指し手はエストと大賢者さんだ。
ウトウトウトウト‥‥‥はっ⁉ いかん! この姿だと、ついついゴロゴロしてしまう!
元の姿に戻った。よし、畑に行こう!

「さて、どこにしようかなぁ」

不思議種が植えてある区画にやって来た。

「ハニーさんは、この辺かな」

土をちょっと掘り、種を入れて土を戻す。お水をたっぷりやると、ぴょこんと双葉が芽吹いた。そのままシュルシュルと育っていく。何度見ても、楽しい。
一分程で成長が止まった。

「これは‥‥スズラン?」

背丈は一メートルくらいあるが、見た目はスズランだ。白い鈴の様な花が咲いている。

「花も大きいな」

スズランと言えば小さくて可愛らしい花を思い出すが、目の前の花の大きさは、直径十センチ程ある。

「ん?」

じっくりみようと思ってしゃがんだ瞬間、花が一つポロッと茎から落ちた。

「うぇい⁉」

ふぅ、ナイスキャッチ! 地面に落ちるギリギリで、なんとか受け止めた。
花のわりにズッシリとした感触と重さ。花弁はまるで陶器みたいなツルツルとした手触り。
花の中に何か入ってそうだな。

「蓋だ‥‥蓋⁉」

開いた花弁の中には、蓋。ご丁寧に、真ん中に摘みまで付いてる!
恐る恐る摘んで引っ張ると、キュポン! と音がした。
花の中には、ハチミツ色の透明な液体が入っていた。
爪の先にちょっと付けて、舐めてみる。

「甘い!ハチミツだ!」

蜂を使わずに自力で蜜になるとは‥‥やるな。
これだとハチミツではなくなるが、まぁ、良いか。

「何を作ろうかなぁ。飴も良いし、料理にも使えるし」

ぼんやりと考えていると、通信が入った。

「もしもし」
『ヒナ、そちらに行きたいから扉を繋げておくれ』

リシュナだった。

「はいは~い」

そのまま扉へ向かい、鍵を使って扉を繋げる。
すると、リシュナとジェフさんがこちらに来た。

「随分と早かったな」
「ちょうど畑にいたからね」
「ん?それは‥‥ハニーの実か」

おお、知ってた!

「リシュナって、凄いよね」
「なんじゃ、急に」
「だって、一発で分かっちゃうんだもん」
「伊達に長く生きてはおらんからな。とは言え、実物を見たのは数百年ぶりだが‥‥お主、何があった」
「へ?ぶふっ」

リシュナに両手で顔を挟まれた。

「魔力量が桁違いになっておる。それに」
「あぁ、それなら俺がやった」
「あ、ワフィス」

私が起きた翌日、「安定したなら良いな」と言って何処かへ行ってしまったワイズ。
転移石も使わず、どうやって来たんだ?

「ジェフ、殺れ」
「母上、それは流石に‥‥」
「え、何? 知り合い?」

物騒な言葉が聞こえた気がする!

「この馬鹿鹿は、メイドを誑かして我の酒を盗んだのじゃ!」

馬鹿鹿‥‥ダブル鹿。

「誑かすなんて、人聞きの悪い。ちょっとお願いしただけだって」
「どっちでも良いわ!」
「確かに」
「だって、ドラゴンの涙なんて久しぶりだったしさぁ」

ん? ドラゴンの涙? もしかして、家のか? ドングリの正式名称が、ドラゴンの涙だったような‥‥。

「ジェフさん、もしかして」
「はい。ここで頂いた物です」

やっぱりかぁ。てか、島を出てから数日しか経ってないのに、リシュナの所まで行ったって事? 凄いな。

「酒ばかりか、我のヒナにまで手を出しおって! この害獣が!」
「いや、出されてないし!」
「我が頃合いを見て、やろうと思っておったのに!」
「へ? もしかして、リシュナも気付いてたの?」
「勿論じゃ。だが、この世界に完全に馴染むまではと思うて‥‥それがこの馬鹿鹿がぁ」
「リシュナ、元の姿に戻るのは止めてね⁉ 畑が燃える!」

リシュナの腕に鱗が現れ始めたので、慌てて止めた。

「とりあえず、中へ入ろ? ね? コレを使ったお茶でも飲もう! クロー! お母さんが来たよぉ!」

なんとか宥める事に成功し、食堂へと移動した。
やれやれ‥‥。





「キュ!」
「いや、だが」
「キュ~」
「うぅ‥‥」

最強古龍も、息子には勝てないらしい。
何を言っているかは分からないけど、見た感じはリシュナがクロに怒られているようだ。

「まさか、古龍の女王がいるとはなぁ」

お茶は何にしようかな。せっかくハチミツが手に入ったし、紅茶にしようか?

「ヒナ」
「ん?」

ジェフさんがカウンターにやって来た。

「その‥‥アレに手を出されたって‥‥」
「へ? 無いよ、無い無い! 引っかかりとか言うのを取ってもらったけど、おでこをくっつけただけだし」
「そうか‥‥」
「?」

あまり表情が動かないジェフさんが、一瞬少し嬉しそうに見えた。直ぐに戻ったけど。
ダイフクとネリが、ハニーの器(花の部分?)を挟んでプルプルと震えている。

「少しだけね」

醤油皿を二枚出し、それぞれのお皿に少しずつハニーを取り分けてあげた。
最初は様子を見ていたダイフクがお皿に乗り、ハニーにたどり着いた途端、プルン! と震えた。それを見たネリもお皿に乗り、ハニーに触ると同じようにプルン! と震えた。
美味しかったらしい。可愛いなぁ。甘い物好きなスライム。

「俺「キュ~!」」
「はいはい、クロもね」

甘い匂いを嗅ぎつけたクロがすっ飛んできたので、スプーンに少しだけすくって「あ~ん」してあげた。

「キュ、キュ~!」
「はい、ジェフさんも」

別のスプーンにすくって渡そうとすると、無言で口を開け、そのままパクリ。スプーンごと持って行かれた。
図らずも、「あ~ん」をしてしまった。

「‥‥‥甘い」
「ジェフさんも、甘い物好きだよね」

リシュナもクロも、甘い物が好きだ。
この世界のドラゴンが皆甘党なのだろうか? と言うより‥‥。

「ふふ、親子だねぇ」

そう言うと、少し照れた感じのジェフさん。
お茶の用意が出来たので持って行くと、クロを膝に乗せたリシュナとワイズさんが少し離れて座っていた。

「はいはい、お茶ですよぉ」

二人の真ん中に座ると、リシュナは渋々といった感じで近付いて来た。

「お茶菓子もあるから、どうぞ」
「「‥‥‥美味い」」

お茶を一口飲んだリシュナとワイズさんがハモッた!

「それで、どうなったのじゃ?」
「へ?」
「魔力の滞りが採れたのだろう?」
「ああ、うん。自力で人寄りの獣人の姿と」

姿を変えるのにも、慣れた。

「それから、こっちも」

今度は猫の姿へ変わると、リシュナにそのまま抱きしめられた。
右にクロ、左に私を抱えたリシュナが超嬉しそうにほほ笑む。

「おぉぉ、なんとも愛い姿!」
「キュ!」
「おぉぅ、リシュナ、折れる!」
「すまん、すまん。つい、な」

少し力を抜いてくれた。

「ヒナのこの姿に免じて、その馬鹿鹿は許してやろう」
「そりゃどうも」

リシュナの機嫌も直り、ワイズさんもようやく「やれやれ」と肩の力を抜いたようだ。
まったく‥‥勘弁してよね。
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