異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
113 / 141
連載

第百二十五話 やり過ぎも、偶には役に立つ

しおりを挟む
第百二十五話 やり過ぎも、偶には役に立つ


「許してやるとは言うても、それはヒナの事だけじゃ。酒の事はまた別」
「まぁ、まぁ、ドングリならまだ沢山あるからさ、ね?」
「むぅ‥‥その様な瞳で見ても‥‥くっ! 分かった! 分かったのじゃ!」
「ははは」

なんとかなった‥‥。

「それで、今日は泊まって行けるの?」
「いいや。このまま帰る。クロの顔を見に来ただけでの」
「キュ」
「あ、じゃあちょっと待って」

リシュナの腕から抜け出し、元の姿へ戻る。
自分のポーチから巾着へと色々移し、巾着をジェフさんに渡した。

「甘い物も少し入れておいたから、良かったら食べてね」
「‥‥ありがとう」
「そこの馬鹿鹿! これ以上ヒナに何かしたら‥‥」
「はいはい。何もしませんよぉ」

リシュナはギロリとワイズさんを睨むと、ジェフさんと帰って行った。

「いやぁ~、古龍の女王様は怖いねぇ」
「普段は優しいお姉さんですよ?」
「ええ、あれが⁉」
「半分は自業自得だと思いますけど。ってか、よく古龍のお城に忍び込もうと思いましたね」
「そこに美味い物があるなら、古龍の城だろうがブラックベアの巣だろうが、入る!」
「かっこよさげに言ってるけど、ただの腹ペコ‥‥」

まぁ、ジローの類友だしなぁ。

「あ、そうだ。えっと‥‥はい、これ」

ワイズさんに小さな袋を差し出された。思わず受け取ってしまった。

「俺も長い事生きて来たけど‥‥ここの野菜は美味い! 酒も、果物も、全部美味い! だから、俺にも女王の所みたいに欲しい!」
「リシュナの所みたいにって、ああ、色々詰め合わせ?」
「そう! そんで、時々泊まりに来たい」
「それは別に良いですけど‥‥って、金貨⁉」

袋の中を確かめてみたら、金貨がいっぱい入っていた。

「しかも、宝石とか雑じってる! こんなにいらないですよ! ってか、下宿代以上!」
「ここに住むってのも魅力的だが、俺はあっちこっち食べ歩くのが趣味なんでね。その土地の文化や町の発展を見るのも楽しみの一つ。次に行った時に店主が世代交代して孫にまでなってるとかな」

さすが長命種というか‥‥それを少しの寂しさも見せずに言えてしまうのは、ワイズさんの性格故だろうな。私は、どうだろう? 

「分かりました。いつでも好きな時に来てください。美味しい物いっぱい用意しておきますから」
「おう、楽しみにしてる」

それからワイズさん用の巾着を作り、島で採れる物を沢山入れて渡した。

「それと、転移石と通信用のイヤーカフスね」
「ありがとさん。へ~、便利なもんがあるなぁ。こういうのは確か、アールノルの聖女様が得意だって聞いた事あるなぁ」
「へ⁉」
「彼女は確か、異世界から召喚されたって」
「し、知ってるの⁉」

思わず詰め寄ってしまった。

「お、おう。あの国にも美味い店があったんだがなぁ。そう言えば、お前さんが作る料理と似て」
「うぇぇ! いや、だって、彼女は―――」

私がその聖女様、道明寺さんと同郷だと言う事、この島も彼女が作ったのだと言う事を話した。

「なるほどなぁ‥‥これも一つの縁ってやつか。こいつは有難く、預からせてもらうよ」

ワイズさんは魔力を登録すると、大きな鹿の姿へと戻った。

「先ずは扉でどこか‥‥そう言えば、どうやってこの島に来‥‥た‥‥」

ずっと不思議に思ってはいたんだよね。
この数日間、島にワイズさんの気配は無かった。島は浮いているのだから、そうホイホイと来れないはず。

「そんじゃ、またなぁ!」

大きな鹿が、空を駆けて行った。

「‥‥‥ぬぁ⁉」

突然やってきたファンタジーな光景に、思わず固まってしまった。
あっという間に見えなくなった鹿。

「はぁ~‥‥凄いなぁ」

なるほど。あれならこの島にも来れるわな。空を飛ぶと言うか、走れるんだもんね。
リシュナのお城にも、ああやって入ったんだろうなぁ。
この世界にも大分慣れたと思ったけど、まだまだ不思議はてんこ盛りの様だ。





「はわわわわ‥‥可愛いぃ」

目の前には、小さな子猫達がテコテコと歩いていたり、コロコロと転がったり‥‥ここは、天国か⁉
先に産まれていた黒猫さんの子供達もすくすくと育ち、離乳食も始まっている。
ミーミー、ミャーミャー、ミーミー、ミャ―ミャー。
私が床に寝転がると、少し警戒しつつも寄って来てくれた。一匹が腕によじ登る。

『こ、こら、お前達』
「良いよぉ。好きにさせてあげて」

毛をアムアムされようが、髭にじゃれられようが、幸せである。因みに、一番人気は尻尾だ。猫じゃらしの様にフリフリと動かすと、捕まえようと一生懸命飛びつく子猫達。
暫くそうして遊んでいると、子猫達が私のお腹の上で寝てしまった。

「ふふふ」

しかし、少しするとお腹が減ったのか、それぞれの母親の所へと帰っていった。
子猫達が眠りに入ったのを見届けて部屋を出ると、廊下の窓から畑で遊ぶコマ達が見えた。

「そう言えば、子供の遊び場が無かったな」

子供の遊び場と言えば、公園! 無ければ作れば良い!
早速外へ行き、場所決め。家と畑から近い場所で、ある程度の広さがある場所。

「よし、ここだな」

場所を決めたら、遊具だ。建築のスキルから「公園」の項目を選んだ。

「先ずは王道、ブランコだよね!」

座面は座りやすい様に少しカーブを付け、ロープは橋にも使われる強度の物を選択。
ノアも一緒に遊ぶだろうから、座面は六個用意。
シーソーは二つ置いて、ジャングルジムも作った。

「後は‥‥うんてい、てつぼう、平均台と‥‥」

ターザンロープも欲しいよね!
それから思いつく限りの遊具を作っては設置を繰り返し、ベンチや街頭も置いた。

「‥‥‥ちょっとやり過ぎたかも?」

見渡してみると、公園というよりもアスレチックになってしまった気がする。
真ん中にはドン! と大きな猫型の滑り台を置いた。
登れるようにもなっているし、トンネルも開けた。因みに私が今立っているのは、尻尾の上だ。

「ヒナしゃま~!」
「ヒナさま、ここすご~いね!」
「キュ~!」

ひと段落したのを見計らって、猫達が来たみたいだ。
私が飛び降りると、物珍しそうにキョロキョロと周りを見渡す猫達。

「これからは、ここでいっぱい遊んでね」

そう言うと、ぱぁっと顔をほころばせ、思い思いに走りだした。
楽しそうにはしゃぐ猫達と、ノアとクロ。

「ふふ、良かった」

皆が楽しそうなら、良いか。
それから数日後。

「これ、鍛錬にも良いな!」
「しかも、楽しい!」

以外な事に、大人にも大人気になった。運動の為にと使っているらしい。
次は、筋トレルームでも作ろうかなぁ‥‥。
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。