異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百四十八話 元勇者とご対面

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第百四十八話 元勇者とご対面


「足元、お気をつけください」

セバスに先導されて暗闇へと一歩踏み入れると、壁に埋め込まれた照明に灯りが灯った。
ここは、アールノル‥‥らしい。
セバスの「ギリ?」発言を受け、とりあえず連れて行けとセバスを脅‥‥お願いした。
セバスが持っていた鍵を使い、扉を開いたらここに出た。
地上はすでに瓦礫も無く森になっていて、ここはアールノルのお城があった場所の地下だとセバスが言っていた。
照明のおかげで分かったが、全方向、壁。六畳程の広さだが、入って来た扉を閉めてしまうと、でまるで箱にでも入った感じだ。
セバスがその壁の一部に触れた。

「少々揺れますので」

セバスがそう言うと、少しの揺れと共に下へと動く感覚が伝わって来た。

「エレベーターかぁ。懐かしぶふっ!」

久しぶりの感覚を楽しもうと思っていたら、急に横移動! 壁に鼻をぶつけた。
その後も、下に横にと、何度か方向を変える箱。セバスはと言うと、一歩も揺るがない! 流石と言うか、なんと言うか。
箱が止まると、チ~ンと聞き慣れた音が聞こえた。そして、壁が今度は横へと開いて行った。

「ここは‥‥」

目の前には、地下であろう空間とは思えない程に広く、明るかった。
一歩踏み出すと、ピチャリと水の音がした。
空間の真ん中には、この世界でもめったに見ない大木。だが、葉は枯れ落ち、幹の色も黒っぽい。一目で「枯れかけている」と思える。

「ここは、道明寺様が残された封印でございます」

セバスの後について木へと近づく。

「う」

一歩踏み出すごとに、息苦しさが襲ってくる。
よく見ると、木の幹に男性が半分埋まっていた。半分、埋まっていた⁉ 出ているのは、腰から上と肘まで。下半身と肘から先は幹に飲み込まれている様に見える。
項垂れているので顔は見えないが、時折こちらを見上げる目は、全てを憎んでいるかの様に暗い。

「‥‥また、来たのか」

喋ったぁ! 声の感じからして、若い。

「コレが元勇者です」

男性をガン無視したセバスが、にっこりと微笑んだ。

「あ? なんだ、そのクソね」

元勇者が言い終わる前に、スコン! と言う音と共に彼の額にナイフが刺さった!
あれ? 貫通してる?

「‥‥汚物が」

セバスの低い声に、ビビビ、と背中の毛が立った。
いやいやいや! 世界樹! 世界樹にナイフ投げた! ってか、元勇者の額からは血が出ていない。

「え、え~っと、生きてるの?」
「いいえ。あれは今、魂だけの存在です。なので、残念ながらナイフは刺さっておりません。

残念なんだ‥‥。

「あれの遺体はあちらに」

セバスが指した先には、木の根と苔に飲み込まれかけている頭蓋骨が!

「今はただの悪霊ですね」

侮蔑を込めた視線を元勇者に向けるセバス。
主である道明寺さんを殺した張本人だもの、しょうがないか。

「はっ! せっかく異世界に来たんだ。金! 女! 楽しんで何が悪い!」

男性の身体(霊体?)からブワリと黒い炎が燃え上がった。

「‥‥あいつらだって‥‥俺は最強になったんだ‥‥こっちの俺が本当の俺なんだ! やっと俺を正しく扱う世界に来たんだ!」

余程向こうの世界で嫌な目にあっていたのか、延々と叫ぶ男性。その瞬間、淡く白く光る鎖が現れ、元勇者の身体に巻き付いた。

「ガァァァ‥‥」

元勇者が苦しそうに叫ぶと、大人しくなった。

「この阿呆は愚かにも悪霊となり、全てを呪っております。道明寺様がなけなしの魔力を使い、世界樹に繋ぎ封印しました」

忘れそうになるが、道明寺さんは聖女としてこっちの世界に召喚されたんだっけ。

「聖なる力を帯びた鎖と、世界樹による浄化。一石二鳥だと道明寺様は仰っておりましたが‥‥なんともしぶとく、コレの浄化が先か、世界樹が枯れるのが先か」
「大丈夫なの? 見た感じ、枯れてそうだけど」
「はい。あの最後の葉で、コレも浄化されるで‥‥」

セバスが指した方には、ゆらゆらと揺れる葉が一枚‥‥ポロリと落ちた。

「「「あ」」」

ま~じか~。「ギリ」にも程があるでしょうが! いや、むしろギリアウトだろ!

「ふ‥‥はははははは! ようやくあのクソ女の力が尽きたか! 俺の勝ちだ!」

男の身体がズルリと世界樹を通り抜け、一歩を踏み出した。完全に世界樹から出ると、黒いモヤの様な物が元勇者から立ち上がった。

「先ずはそうだな‥‥そこのデブ猫と爺を」
「デブとは失礼な! ぽっちゃりだ! ってか、人の外見どうこう言える立場か!」
「あ?」

一歩一歩、ゆっくりと歩いていた元勇者の足が止まった。

「上下ピッチピチの黒はまだ良いとして、羽織ってるローブの裾はボロボロ! 俺の心と同じって感じ? 右手の包帯は怪我? それとも、紋章的な物が浮かび上がったりする?」

お、黒いオーラが強くなった!
身体にピッタリな黒いシャツとズボン。黒いブーツに、ローブまで黒い。そして、ローブの裾はボロボロに破れており、勇者と言うより暗殺者って感じがする。

「右目の眼帯は疼いちゃう感じですか? さっきまで無かったよね?」

木に埋まっていた時には、ちゃんと両目あったし。
あれだな。怪我していないのに、絆創膏とか張っちゃう感じ。

「あと、その刀。鞘も鍔も柄も真っ黒! もしかして、名はコテツとか言っちゃ? 満月になると血に飢え」

そこまで行った所で、ビシッ! と何かに亀裂が入る音がした。
よく見ると、元勇者の右足の下から地面に亀裂が走っていた。

「‥‥テメェの皮を剥いで、三味線にしてやる」
「え、マジ? 三味線作れるの⁉ 職人じゃん。」
「クソ猫‥‥」

おっと、煽りすぎたか?
黒いオーラ倍増! さてはて、どうしたもんかね。

「へぇ、お前‥‥あのクソみたいな島にいるのか」

ニヤリと嫌な笑みを浮かべる元勇者。眼帯で隠された右目から、青黒いオーラが立ち上る。
見た目だけじゃなかったか。鑑定持ち、だろうなぁ。勇者として召喚されているから、チートモリモリだろうし。
元勇者が左手を天井に向けると、黒い球体が宙に現れた。勇者がそんなどす黒い魔法使うんじゃないよ!
そして、その球体から黒い光が上へと放たれた。次の瞬間、まるでスポットライトみたいに一筋の光が勇者と世界樹を照らした。

「地上までの道をぶち抜いたんかい」

何の音も無く、落ちて来る土もなかった。黒い光線で吹き飛ばしたと言うより、地上までの地面が消えてしまった。とんでもないな、元勇者!

「手始めに島を破壊し、地上に瓦礫の雨を降らせようか」

元勇者が両手を広げると、その身体がふわりと宙に浮かぶ。こいつ、自力で飛べるのか。

「セバス。私はアレを追うから、セバスは鍵で島に戻って防衛を」

ポーチから扉を取り出して地面に置いた。

「ヒナ様‥‥お気をつけて」
「はいよ」

セバスが扉の向こうへと消えるのを確認すると、やれやれと自分の頬をムニムニと押す。

「さぁ、やりますか」

頑張りますよぉ!
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