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前半ミュア視点 後悔、そして希望
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壁際に座り込んだミュア。
グォォォォォォォォォォォォォォ!
私は、身体を恐怖に震わせ、発狂しそうな心を懸命にこらえながらポルセドラを見つめている。
私達は、大変なことをしてしまった。
フライとは、子供のころからずっと一緒だった。
職業を告げられた時も、それは変わらなかった。
自分の望んでいた職業になれなくて腐る奴なんてこの世界に吐き捨てるほどいる。
彼は使いどころがない職業を与えられてしまったとしても、それに腐ることはなく、自分のできることを率先してやっていた。
しかし、それを職業に恵まれていた私達は「誰にもできる」「変わりはいくらでもいる」といって完全に見下していた。
役割対象となる精霊がいないということで完全に彼を見下し、適当なタイミングを見計らって首にした。
心の底では、わかっていた。
自分の周囲のサポート術式は、フライの下位互換であり、彼にかなうわけがないと。
フライがいなくなった後、彼の加護がなくなり、私を含めてパーティーの動きは見る見るうちに弱くなっていた。
しかし、そんなことを意見すれば、私まで不要扱いされてしまう。
私は、気が弱く彼らに流されてしまい何も言うことができなかった。
アドナたちに従っていれば、フライが追い出されたとしても私の身分は安泰だろうと思った。
それは、全くのウソだった。
そう、フライが追い出されれば、次に弱い私が切り捨てられるということだ。
彼らはもし周囲から孤立しても加護を受けられなくなるだけで、そこそこ戦えるだろう。
流石に上級モンスターとは戦えなくても、下級ゴブリンやオークくらいなら倒すことができる。
しかしミュアは違う。近距離を戦うための術式がなく、それを補う体力や力もない。
術式は全て詠唱が必要で発動に時間がかかる。そのスキを突かれれば簡単に攻撃を受けてしまう。
下級モンスターはもちろん普通の男性にも負けてしまうだろう。
このクエストで、アドナたちはトランというSランクに相当する人物と手を組むことになった。
しかし私たちは彼の強さに目がくらむあまり、大事なことを見落としていた。
「仕方がない。あの女は囮にして捨てる。そうすれば俺たちは助かる」
そう、彼はいともたやすく仲間を見捨てるのだった。
そういえば、フライから聞いた事がある。
彼はSランク相当の実力がありながら仲間に恵まれていない。
その理由は、以前彼が所属していたパーティーにある。
「何でも、トランの奴。敵に仲間を売ったらしい。大金と引き換えに、他の仲間を売り渡していたと疑惑があったんだってさ」
そしてその仲間たちは今も消息不明。ギルド本部は彼を捜査したものの、決定的な証拠が出ることはなく、未遂に終わった。
それを象徴するかのように彼は仲間に冷たく、めったにコミュニケーションをとらない。
だからある程度仲間を選べる実力のある冒険者は彼と行動を避けた。
そして実力がなく、強い冒険者がいないパーティーがSランクという強さに目がくらんで彼を仲間に加えたのだと。
そしてポルセドラたちは私に襲い掛かってくる。
もうだめだ。私は、ここで死ぬんだ。
フライ、最後までこき使うばかりでごめんの一言も言えなかった。
彼の負担も考えず、自分のかわいい服を持って──、だもん。
彼なら、あの精霊とうまくやってくれると思う。けど、もう一度、最後に会いたかったな。
けど、そんな願いは、かなわない。
時すでに遅し、私は、こいつらに殺されるんだ。
──カッカッ。
誰かが走ってくる音が聞こえる。
誰かな。こいつらの親玉かな。
どのみち、私に対抗できる手段はない。食料にするなり、性的に食べるなりどうにでもしてほしい。
そして走ってくる音は近くなる。私はその方向に視線を向けると、その姿に驚愕した。
私は、目を疑った。
そこにいたのは、フリーゼと、もう一人の女、そして──。
「フライ? なんでこんなところに来たの?」
「ミュアか、生きていてよかった──」
そう。かつては仲間だった、しかしいらないと判断して見捨てて行った元仲間。フライであった。
※ミュア視点終了。
俺たちがミュアと出会う少し前。
三人で裏ダンジョンをひたすら駆け上がっているとき。
カッカッカッ──。
裏ダンジョンの奥から誰かがこっちに走ってくる音が聞こえる。足音からして四、五人ほど。
「おそらく、アドナさん達だと思われます。全員無事だといいのですが──」
「そうだな。けど、それは大丈夫だと思う」
理由はある。俺たちは利害でくっついたパーティーじゃない。これでも子供のころ同じ村で育った幼なじみという特別な関係なのだ。
俺はそいつらと違ってスキルに恵まれなかったためはぶられてしまったが、他の4人は別だ。実力だってそれなりにあるし、力を合わせて生き残っているだろう。
あと一人、トランとかいうやつもいたが、実力も確かだし無事だとは思う。
そして道の向かい側から走る音の正体が見えてくる。
「アドナ、ウェルキ、やっぱり生きていたか」
先頭を走っていたのはアドナとウェルキ。俺を見るなりガンを飛ばした後言葉を返してきた。
「ああ、何しに来たクソ野郎」
「お前たちが無事か確かめに来た」
その言葉に露骨に不機嫌になる二人。
そしてその後ろにはトランとキルコの姿。あれ、一人いないぞ。
「おい、なんでミュアがいないんだ?」
グォォォォォォォォォォォォォォ!
私は、身体を恐怖に震わせ、発狂しそうな心を懸命にこらえながらポルセドラを見つめている。
私達は、大変なことをしてしまった。
フライとは、子供のころからずっと一緒だった。
職業を告げられた時も、それは変わらなかった。
自分の望んでいた職業になれなくて腐る奴なんてこの世界に吐き捨てるほどいる。
彼は使いどころがない職業を与えられてしまったとしても、それに腐ることはなく、自分のできることを率先してやっていた。
しかし、それを職業に恵まれていた私達は「誰にもできる」「変わりはいくらでもいる」といって完全に見下していた。
役割対象となる精霊がいないということで完全に彼を見下し、適当なタイミングを見計らって首にした。
心の底では、わかっていた。
自分の周囲のサポート術式は、フライの下位互換であり、彼にかなうわけがないと。
フライがいなくなった後、彼の加護がなくなり、私を含めてパーティーの動きは見る見るうちに弱くなっていた。
しかし、そんなことを意見すれば、私まで不要扱いされてしまう。
私は、気が弱く彼らに流されてしまい何も言うことができなかった。
アドナたちに従っていれば、フライが追い出されたとしても私の身分は安泰だろうと思った。
それは、全くのウソだった。
そう、フライが追い出されれば、次に弱い私が切り捨てられるということだ。
彼らはもし周囲から孤立しても加護を受けられなくなるだけで、そこそこ戦えるだろう。
流石に上級モンスターとは戦えなくても、下級ゴブリンやオークくらいなら倒すことができる。
しかしミュアは違う。近距離を戦うための術式がなく、それを補う体力や力もない。
術式は全て詠唱が必要で発動に時間がかかる。そのスキを突かれれば簡単に攻撃を受けてしまう。
下級モンスターはもちろん普通の男性にも負けてしまうだろう。
このクエストで、アドナたちはトランというSランクに相当する人物と手を組むことになった。
しかし私たちは彼の強さに目がくらむあまり、大事なことを見落としていた。
「仕方がない。あの女は囮にして捨てる。そうすれば俺たちは助かる」
そう、彼はいともたやすく仲間を見捨てるのだった。
そういえば、フライから聞いた事がある。
彼はSランク相当の実力がありながら仲間に恵まれていない。
その理由は、以前彼が所属していたパーティーにある。
「何でも、トランの奴。敵に仲間を売ったらしい。大金と引き換えに、他の仲間を売り渡していたと疑惑があったんだってさ」
そしてその仲間たちは今も消息不明。ギルド本部は彼を捜査したものの、決定的な証拠が出ることはなく、未遂に終わった。
それを象徴するかのように彼は仲間に冷たく、めったにコミュニケーションをとらない。
だからある程度仲間を選べる実力のある冒険者は彼と行動を避けた。
そして実力がなく、強い冒険者がいないパーティーがSランクという強さに目がくらんで彼を仲間に加えたのだと。
そしてポルセドラたちは私に襲い掛かってくる。
もうだめだ。私は、ここで死ぬんだ。
フライ、最後までこき使うばかりでごめんの一言も言えなかった。
彼の負担も考えず、自分のかわいい服を持って──、だもん。
彼なら、あの精霊とうまくやってくれると思う。けど、もう一度、最後に会いたかったな。
けど、そんな願いは、かなわない。
時すでに遅し、私は、こいつらに殺されるんだ。
──カッカッ。
誰かが走ってくる音が聞こえる。
誰かな。こいつらの親玉かな。
どのみち、私に対抗できる手段はない。食料にするなり、性的に食べるなりどうにでもしてほしい。
そして走ってくる音は近くなる。私はその方向に視線を向けると、その姿に驚愕した。
私は、目を疑った。
そこにいたのは、フリーゼと、もう一人の女、そして──。
「フライ? なんでこんなところに来たの?」
「ミュアか、生きていてよかった──」
そう。かつては仲間だった、しかしいらないと判断して見捨てて行った元仲間。フライであった。
※ミュア視点終了。
俺たちがミュアと出会う少し前。
三人で裏ダンジョンをひたすら駆け上がっているとき。
カッカッカッ──。
裏ダンジョンの奥から誰かがこっちに走ってくる音が聞こえる。足音からして四、五人ほど。
「おそらく、アドナさん達だと思われます。全員無事だといいのですが──」
「そうだな。けど、それは大丈夫だと思う」
理由はある。俺たちは利害でくっついたパーティーじゃない。これでも子供のころ同じ村で育った幼なじみという特別な関係なのだ。
俺はそいつらと違ってスキルに恵まれなかったためはぶられてしまったが、他の4人は別だ。実力だってそれなりにあるし、力を合わせて生き残っているだろう。
あと一人、トランとかいうやつもいたが、実力も確かだし無事だとは思う。
そして道の向かい側から走る音の正体が見えてくる。
「アドナ、ウェルキ、やっぱり生きていたか」
先頭を走っていたのはアドナとウェルキ。俺を見るなりガンを飛ばした後言葉を返してきた。
「ああ、何しに来たクソ野郎」
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