~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ウェレン王国編

最終日

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 そして巡礼祭は最終日となった。
 ウェレンの空には真っ白な雲がかかり、パラパラと雪が降っている。

 昨日よりも少しだけ寒く。俺たちは厚手の防寒具を教会側から借りて大聖堂の前へ。

 約束の時間の時間の少し前。
 大聖堂前の広場にはすでに巡礼を行う要人たちや警備を担当する兵士や冒険者がいた。

 寒そうに体を震わせていたり、余裕のある表情で会話を楽しんでいたり。

「そんでさ。あのメイルだっけ。俺タイプなんだよな。きりっとしていてきれいじゃん」

「俺はクリムだな。幼い体に大人びた素振り。マジ嫁にしたい」

 通報しようかな、あの兵士たち。要人たちも、昨日宴でも開いていたのか、顔が真っ赤になっていたり、中には二日酔いになっているものもいる。

 とはいえ、全体的に昨日のこともあり、気持ちが緩んでいるようにも感じた。

 メイルとクリムは歩き回って冒険者や兵士たちを集めては、いろいろな話をしている。
 恐らくは、今日の警備の配置や注意事項などを話しているのだろう。

 そして時間ギリギリに国王親子、ケイルとジロンがやってくるとステファヌアが大きく叫ぶ。

「皆さん。隊列を整えたら出発します。準備の方、お願いします」

 そして俺達はメイルが示した配置につく。


「じゃあね二人とも。絶対に無事でいてね」

「ありがとうレディナ。そっちこそ無事でいてね」

「大丈夫フィッシュ。私に任せろフィッシュ」

 俺達は別れの挨拶をする。俺とフリーゼは巡礼祭に、レシアとレディナ、ハリーセルはここにとどまる。
 だからレディナ達とはいったんお別れ。そう、これが俺たちが立てた作戦の一つ。

 最終日、当然熾天使たちは動いてくるだろう。


 しかしどこに熾天使が現れるかわからない。教皇のところに戦力を集中しすぎて手薄な王都で暴れられたら相当な人が犠牲になってしまう。

 だから俺たちは戦力を分散させることになった。

 俺とフリーゼがステファヌアやクリムと一緒に大神殿へ。
 逆にレディナ達三人やメイルは王都で待ち構えているといった作戦だ。


 他に冒険者達は要人たちの元に集まったり、大聖堂の前にとどまるもの。さらに街の中へ繰り出すものへと別れていく。

 要人たちは一直線に隊列を組み、その周りを俺たちが取り囲むように配置。
 そして俺たちは最後の場所へと出発。

「皆さん、それでは出発します」


 ウェレンを離れ、森の中。広めな雪道を隊列を組んで進んでいく。

 みんなここ数日移動をしていて疲れているのか会話も少ない。国王親子は、いびきをかいて眠っている。

 移動中要人たちの観察もしていたが、これといって怪しいことをしている人はいなかった。もちろんスキァーヴィも。

 所々居眠りをしている人もいる。周囲に気配はない。
 馬車で移動すること数時間。


 小高い丘や幅が狭い谷の道を通り過ぎると、目的の場所に到着。





 王都と比べて、古風で一昔前に作られたような形状の朽ち果てた建造物が立ち並ぶ。

 今までとは違い、ただ遺跡があるだけでなく、かつて人が住んでいたような廃墟があり、 どこか違った雰囲気を醸し出している。

 そして広い道の先に俺たちが十分待機できる広場のような場所があり、馬車はそこで足を止める。

「到着よ。ここが最後の巡礼場所よ」

「──わかった」

 クリムの言葉に、自然と緊張が走り、馬車を降りる。
 他の要人たちや同伴していた兵士や冒険者達が出て来ると、彼らの前にステファヌアが出て来た。

「皆様、お疲れ様です。ここが最後の巡礼地です。私達がご案内しますので、ついてきてください」

 そしてステファヌアはクリムと一緒に道の奥へ。他の信者たちがついて行くように促すと、他の人たちもついて行く。


 うっすらとした雪にぼうぼうと雑草が生い茂る道をしばし進んでいくと、その場所はあった。

 着いた先は、骨組みだけが残る崩れ去った古代の建物。

「なんだよ。がれきの山じゃねぇかよ。間違えてるんじゃねぇの?」

 ヤジを飛ばす王子のジロン。それに対しクリムがイラッと舌打ちをした後反論。

「バカね。ここは、私が住んでいた場所。精霊と人間が交流をしていた場所なの。あんたにはわからないでしょうけどね」

「ああん? 知らねぇよこのバカ!! っていうかこの俺様に向かってなんて口聞いてんだよこのクソガキ!!」

 ジロンはカッとなりクリムに向かって叫ぶ。互いににらみ合う中、ステファヌアは作り笑顔を見せて仲裁に入る。

「待ってください。時間が押しています。お気持ちは分かりますが、周囲の目もありますし矛を収め下さい──」

「ちっ──わかったよ! しょうがねぇなあ」


「ありがとうございます。流石ジロン様。器が大きいでございます」

「あ、あったりめぇよぉ。このジロン様だぜぇ。この位なんてことねぇよぉ!」

 ジロンがその言葉を聞くなり自分の頭をなでながらニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべた。
 おだてられ、上機嫌だ。こういう難がある人の掌握も手慣れているのがわかる。
 対してクリム、ぶつぶつと文句を言っている。気持ちはわかるしどう考えてもジロンが悪いのだが、ここでキレてもいいことはない。

 何とか耐えてほしい。

 話によると、大昔は人が住んでいたが、争いがおこったり魔物が出たりして人が住まなくなったとか。

 ここはその中でも大きかった建物のようで、神殿だったらしい。
 その跡地付近であるこの場所に、地下遺跡への遺跡が発見されたのだと聞く。

 中央の奥には小さな祭壇があり、天井が抜け落ち空が一面に見えている。
 そして時折がれきに遮られた先に、地下へと続く道があるのだ。

 今は大きな石でふさがっているが、クリムが近づいてその石に手をかざした瞬間、

 ゴゴゴゴゴゴゴ──。

 なんとその石が動き出し、その石があった場所に階段が出現したのだ。
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