~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕

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ローデシア帝国編

唯一王 奥の部屋へ

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「余裕なのも、今のうちです。すぐに決着を付けます」

 そしてフリーゼが剣を召喚し、切っ先をスワニーゼに突き付けた。
 しかし、スワニーゼの表情に焦りや警戒するようなそぶりは全くない。

「決着? 確かにつけなければいけないわ。けれど、あなたとは、戦わないし」

「どういう、ことですか?」

 フリーゼ、スワニーゼが何か企んでいることに気が付き、問い詰める。

「これは、私の信念をかけた真剣勝負。絶対に負けるわけには、いかないの。たとえどんな手を、使ってもね」

 意味深なスワニーゼの言葉に、俺もフリーゼも首を傾げ、互いに顔を合わせた。

「鈍いわね、つまり、相手の勝ち筋を潰すってこと。こういうことよ」

 スワニーゼはニヤリと笑みを浮かべると、パッと手を上げた。
 その手は真黒に強く光始める。そして──。

「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッ!」

 人間の十倍くらいある大きさの化け物が突然この場に出現し始めた。
 どす黒い力のオーラがある、灰色の光に包まれた、四足足の化け物。

 毛深く、醜悪に満ちた体つき。まるで、オオカミのような外見。 胸には彼の目印、「黄金の印」があった。

 俺は、こいつのことを知っている。

「何故、ハスターを召喚した?」

「そうです。こいつは、魔界にいる最強の魔物のはず。それをどうしてあなたが──」

 フリーゼの言葉通り、こいつの名前はハスター。以前本で読んだことがある。魔界に住む魔物で、天使達にも負けないくらいの強さを持つ化け物だ。

「決まってるじゃない。こういうことも、当然予測してたの。そして、これが私の策よ。ハスター!」

 パン──!

 スワニーゼが思いっきり手を叩くと、一瞬だけハスターの体が光る。

 その瞬間、ハスターは大きな唸り声を上げ、フリーゼに向かって突進し始めた。

「ウヴァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!」

 フリーゼは慌てて後方に下がるが、ハスターは構わず追って来る。

「何をした!」

「怒らないでフライ。あなたの彼女さんが追われているからって」

「追われている?」

「そうよ。ハスターは私の支持で、フリーゼ。貴方だけを追うようにしたわ。こいつはやられるか、フリーゼを食い殺すまでフリーゼだけを狙い続けるの」

 フリーゼだけを追う。スワニーゼがそんなことをした理由──、それを理解して彼女をにらみつけた。

「私はソルトを人質にして、さらに奥に進む。さて、あなたはどうする? ここでフリーゼといたら私はとびらを閉める。そしたら二度とあなたは先に行けない。けれど、私を追ったらフリーゼと一緒にいれない。そしたら──」

「俺はフリーゼの力を、受け取れない」

 その事実に、思わず顔をしかめる。スワニーゼは、してやったりな表情だ。
 ニヤリと俺を見つめている。

「ご名答。警戒していたのは、フライとフリーゼの連携。それさえ絶ってしまえば、パーティーの強さは相当削がれる。以上」

 そしてスワニーゼはくるりと踵を返しソルトのところへ。

「じゃあ、先へ進むわ──。行くわよソルト」

「……はい」

 ソルトは震えながら首を縦に振った。
 スワニーゼの笑み。その中にとてつもない力のオーラを感じている。

 戸惑う俺とレディナ。
 そこにフリーゼが戦いながら声をかけてくる。

「二人とも、ここは私に任せて、行ってください」

 コクリと頷くフリーゼ。一瞬ためらってしまうが、行かないわけにはいかない。
 レディナも、覚悟を決めているのがその真剣な表情から分かる。

「フリーゼ、わかった。絶対取り戻してくる!」

「ええ。信じてるわよ!」

 そして俺たちは、扉の方へ。扉では、すでにソルトがドアを開いていて、スワニーゼと共に奥へと行くところだった。

 キィィと扉が閉まりつつある中、駆け足で中へと入って行く。
 俺を支えてくれたフリーゼはいない。けれど、絶対に勝つ。



 一番奥の部屋にたどり着く。

 真っ暗で、石畳の部屋。

 そして俺やスキァーヴィ、ソルトたちとスワニーゼが相対する。
 まず話しかけたのは、レディナだ。

「スワニーゼ、話はまだ終わってないわ──」

 レディナの言う通りだ。スワニーゼが黒幕だったのは理解したが、それ以外のことが良く分からない。
 俺もどうすればいいかわからず右往左往していると、スキァーヴィがピッとスワニーゼを指さした。

「一言で言うわ。こいつが、私を裏で操っていたのよ」

「な、なんだって!」

 衝撃の事実だ。予想もしなかった事実に、俺達は言葉を失う。

「私が行うことの命令、それは全てスワニーゼが行っていたの。逆らったら、ソルトの家族と命は保証しないってこと」

「それだけじゃないわ。あなたは決して私に勝てない。ひどい目にあいたくなかったら、おとなしく私の下僕になりなさいとも脅したわ」

 スワニーゼは、開き直っているかのように余裕ぶった笑みを浮かべている。ソルトは、全く知らなかったようで、スキァーヴィの方にただ視線を向けていた。

「そうよ、ソルト。あなたを守るため、私は暴君を演じていたの」

「そんな……。私を守るために──」

 複雑な想いなソルト。当然だ。おかしいと思っていたスキァーヴィの行動。それが自分を守るためだったのだから。
 しかし、感傷に浸っている場合ではない。レディナはにらみを利かせて反論した。

「なんでまどろっこしいことするのよ。自分でやりなさいよ。そのくらい、力あるでしょう」

 その通りだ。熾天使であるスワニーゼなら、それくらいたやすいことだ。わざわざスキァーヴィを使う必要なんてない。

 スワニーゼはやれやれとしたポーズで不敵な笑みを浮かべ、言葉を返す。

「簡単。だって私はかわいいヒロイン。汚れ役なんてスキァーヴィに任せておけばいいの。そして、私はかわいそうなヒロインということで国民受けをよくして国の重要なポストに就くの。そして、世界を支配するとっかかりとなるわ」

 ニヤリと浮かべたその笑み。それは、自分が悪事に手を尽くしておきながら、それをスキァーヴィに押し付け、自分は正しい人間でありたいという歪み切った感情だと感じた。

 俺は、ため息をついて反論。

「──もういい。早く全員でお前を、袋叩きにする」
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