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9. 王子の心、悪役令息知らず
しおりを挟むその日は、突然やってきた。
日々の何気ない日常の中で、僕は完全に油断していた。
王子であるセドリック様とも、形式的な婚約者としてだったけど、表面上では、側から見ても、上手くいっている様に見えていたはずだし、ルークの事だって、出来るだけ関わらない様にしながらも、困っていそうな時は、何かと気にかけているつもりだった。
決していじめたりなんてしてなかったし、誤解される様な行動もしていなかった。
何なら、ルークだって、僕の事を友達だって思ってくれてるんじゃないかってぐらい、好意的だったからだ。
だから、ついついお節介をしてしまったんだ。
ルークが、久しぶりに市井にいるお母さんに会いに行くけど、プレゼントは何がいいか分からなくて、困っていると聞いて。
「じゃあ、僕も一緒に買い物に付き合うよ。どんな物がいいか、探しに行こう。」
「いいんですか?本当に?アルフレッド様と一緒に買い物出来るなんて、嬉しいです!約束ですよ!」
ぴょんぴょん跳ねながら、全身で喜びを表してくれるルーク。
その姿が、何だかウサギみたいで可愛かった。
「僕、市井に暮らしてたんで、街には詳しいんです。買い物もですが、街案内を兼ねて一緒に遊びませんか?」と言われて、浮かれていたんだ。
前世で、クラスメイトと学校帰りに、マクドナルドやゲーセンで遊んでいた事を思い出して、懐かしくて‥‥。
だから、完全に忘れていたんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(セドリックside)
アルは、私の可愛い婚約者だ。いつかの城でのお茶会で、私達は出会った。
お茶会とは名ばかりで、暗に婚約者の選定を目的としていた為、いつも私に媚を売るような態度の貴族の子息達にしか、今まで出会った事が無かった。
そんな中、一際目立たぬように、こそこそ隠れるように行動している、地味な令息が目に入った。
長い前髪が邪魔をして、顔はよく見えなかったが、美味しそうにお菓子を頬張る姿が、何とも可愛らしく見え、興味をそそった。
最初は、ほんの興味本位だった。
幼いころは、手がつけられない程わがままな子供だったと聞いていた。
しかし、ある時を境に、急に真面目に勉強に取り組みだしたとも‥。
いつも挨拶だけしたら、義務は終わったとばかりに離れて行くから、からかいついでに一言声をかけるだけのつもりだった。
「美味し~い。」
「お口に合った様でなにより。」
「!?、はい、すべてが美味しくて‥‥」
デザートのザッハトルテを頬張りながら、真っ赤な顔で、あたふたと返事をするアルフレッド。
その長い前髪の隙間から覗き見えたのは、彼の愛らしいエメラルドの様な瞳だった。
その瞬間、宝石の様な澄んだ瞳に、目が離せなくなっていた。
見つけた、と思った。
私だけの宝石を。
そして同時に、誰にも渡したく無いとも思った。
こんな感情は、初めてだった。
アルは、政略の為に婚約者に選ばれたと思ってるみたいだけど、それは違うよ。
私が望んだものだ。
そう、絶対に他の人には渡さない。
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