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私の従者に伝書鳩をさせますので
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「宰相様、コンテ様のことを聞いてもいいですか?」
「えぇ、もちろんです。どのようなことでしょうか?」
「当時、皇太子として地位があったコンテ様ですが、皇国では、亡くなったことになっていると聞き及んでいます」
「そうですね。暗殺者によって殺害されましたが、不慮の事故として片付けています」
「それは、宰相様が差配なさったのですか?」
私は、ジッと宰相の目を見つめた。ウソやごまかしは、国の宰相ともあれば、日常的に行うだろうが、密談している今、その必要はないだろう。
私のもとに来た青年のこの地でどのように扱われたのかを知りたかった。
「暗殺者を送ったのは、当時の老院のもの。……前陛下の右腕でした。何度かは、対処しましたが、アンナリーゼ様もご存じのとおり、皇国の暗部は、かなりの数がいるだけでなく、手練れも多い。私は、当時、お飾りでしたから、力もなく、コンテ様一人をお守りすることも、難しかったのです」
「……それは、もしかしなくても、人質を取られたということでしょうか?」
「アンナリーゼ様は、どこまでも清らかな人のようで、どこまでも根の方まで知っている方ですね……。おっしゃる通り、私は、子どもを人質として皇宮に取られてしまいました。コンテ様の学友というていではありましたので、お断りすることは難しかった」
「当時の陛下は、コンテ様を時期皇帝にと望んで、皇太子にしたのですよね?」
「そうです。そうですが、決めた当時と、時世は変わります。知ってのとおり、国で1番の権力者は、ノクト将軍でしたが……」
「常勝将軍だなどと、皇宮から追い出されたということですね」
「はい。ノクト様がいらっしゃれば、コンテ様は、皇帝についていたでしょう」
「ノクト将軍はそれほどに力があったのですか?今は、亡き方だと……」
私は、コンテ以上に元気に国内外を動き回っているがたいのいいおじさんを思い浮かべながら、宰相に尋ねた。
「あの方が亡くなられるだなんて、信じられぬことです。奥方にも、何度も確認をとりましたが、亡くなったと言われるだけで……常勝将軍であるノクト様が、どの戦場で亡くなったのか……それは、定かにはなっていないのです」
「……それで、驚いていたのか」
「えっ?」
「いえ、こちらのことです。今の皇帝陛下は、実の父を切り捨て、あの玉座についたということを聞いています。その裏には、もしかしなくても、コンテ様が関わっているのでしょうか?」
「そうですね……。陛下は、私たち側近が近づけさせないようにしていましたが、二人だけで、会われていたことは知っています。表向き、仲が悪いように見せかけていたのは、無用な争いをさけるためでした。私どもは、コンテ様に言われていましたが、陛下の陣営は、陛下以上に権力にこだわりのあるものが多かった前陛下に仕えていたものばかりでしたから……御せなかったことを悔やんでいらっしゃいました」
「それで、宰相様を取り立てているのですか?」
「……陛下は、コンテ様が、どこかで生きていることを感じ取っているのだと思います。それで、いつかは、自身が座る玉座を明け渡したいと考えなのではないかと」
「……ずいぶん、やりたい放題ですけど……」
宰相は苦笑いをしながら、「そうですね」とだけ呟いた。今の皇帝は、あまりにも、その手は血で汚れている。実の父親だけでなく、その側近、自身の側近だけでなく、多くのこの皇国の地位ある貴族を切り捨てた。文字のごとく、自身の刃でだ。それだけにとどまらず、皇帝の座についてからというもの、その国の拡大は、さらに進んでいて、そこでも、多くの血が流れている。
「皇太子となる皇子は、何人か生まれています。その中から、次の皇帝は決まる予定ですが、陛下は、死ぬまで皇太子は決めないとしています」
「正当な血筋でありながら、実子には、その座を譲る気がないということでしょうか?」
「そうですね。亡くなったコンテ様を今も待ち続けているのです……」
「でも、それは、本人がどうしたいかによりませんか?宰相様は、私のもとに、コンテ様がいることをご存じのようですから言いますが、本人は、皇太子に……皇帝になりたいとは思っているようには思えません。ましてや、どんな状況であったとしても、弟が管理している国なのですから」
「そうでしょうね。あの方は、争いを求めないでしょうから……」
「宰相様は、連れ戻したいのですか?」
「いえ、元気に過ごしてくださっているなら、それで構わないと思っています。誰か、素敵な方と家庭を築き、コンテ様が幸せだと感じる人生を歩んでもらえることが、何よりだと思っていますから……」
「そうですか。宰相様、ひとつ、お願いがございます」
「なんでしょうか?」
「私のもとには、インゼロ帝国の情報は入ってきませんから、窓口になっていただくことはできませんか?ただ、お立場もありますから……鳩でも飛ばし合う仲というのはどうでしょうか?私の従者に伝書鳩をさせますので……」
私の提案に、それこそ、鳩に豆鉄砲とばかりに驚いているが、たぶん、こちらの要求は、のんでくれるだろう。その従者こそ、宰相が求めっている人物なのだから。
宰相は、私の提案をよくよく考えているようで、二度頷いたのち、「よろしくお願いします」と言ったのである。
「えぇ、もちろんです。どのようなことでしょうか?」
「当時、皇太子として地位があったコンテ様ですが、皇国では、亡くなったことになっていると聞き及んでいます」
「そうですね。暗殺者によって殺害されましたが、不慮の事故として片付けています」
「それは、宰相様が差配なさったのですか?」
私は、ジッと宰相の目を見つめた。ウソやごまかしは、国の宰相ともあれば、日常的に行うだろうが、密談している今、その必要はないだろう。
私のもとに来た青年のこの地でどのように扱われたのかを知りたかった。
「暗殺者を送ったのは、当時の老院のもの。……前陛下の右腕でした。何度かは、対処しましたが、アンナリーゼ様もご存じのとおり、皇国の暗部は、かなりの数がいるだけでなく、手練れも多い。私は、当時、お飾りでしたから、力もなく、コンテ様一人をお守りすることも、難しかったのです」
「……それは、もしかしなくても、人質を取られたということでしょうか?」
「アンナリーゼ様は、どこまでも清らかな人のようで、どこまでも根の方まで知っている方ですね……。おっしゃる通り、私は、子どもを人質として皇宮に取られてしまいました。コンテ様の学友というていではありましたので、お断りすることは難しかった」
「当時の陛下は、コンテ様を時期皇帝にと望んで、皇太子にしたのですよね?」
「そうです。そうですが、決めた当時と、時世は変わります。知ってのとおり、国で1番の権力者は、ノクト将軍でしたが……」
「常勝将軍だなどと、皇宮から追い出されたということですね」
「はい。ノクト様がいらっしゃれば、コンテ様は、皇帝についていたでしょう」
「ノクト将軍はそれほどに力があったのですか?今は、亡き方だと……」
私は、コンテ以上に元気に国内外を動き回っているがたいのいいおじさんを思い浮かべながら、宰相に尋ねた。
「あの方が亡くなられるだなんて、信じられぬことです。奥方にも、何度も確認をとりましたが、亡くなったと言われるだけで……常勝将軍であるノクト様が、どの戦場で亡くなったのか……それは、定かにはなっていないのです」
「……それで、驚いていたのか」
「えっ?」
「いえ、こちらのことです。今の皇帝陛下は、実の父を切り捨て、あの玉座についたということを聞いています。その裏には、もしかしなくても、コンテ様が関わっているのでしょうか?」
「そうですね……。陛下は、私たち側近が近づけさせないようにしていましたが、二人だけで、会われていたことは知っています。表向き、仲が悪いように見せかけていたのは、無用な争いをさけるためでした。私どもは、コンテ様に言われていましたが、陛下の陣営は、陛下以上に権力にこだわりのあるものが多かった前陛下に仕えていたものばかりでしたから……御せなかったことを悔やんでいらっしゃいました」
「それで、宰相様を取り立てているのですか?」
「……陛下は、コンテ様が、どこかで生きていることを感じ取っているのだと思います。それで、いつかは、自身が座る玉座を明け渡したいと考えなのではないかと」
「……ずいぶん、やりたい放題ですけど……」
宰相は苦笑いをしながら、「そうですね」とだけ呟いた。今の皇帝は、あまりにも、その手は血で汚れている。実の父親だけでなく、その側近、自身の側近だけでなく、多くのこの皇国の地位ある貴族を切り捨てた。文字のごとく、自身の刃でだ。それだけにとどまらず、皇帝の座についてからというもの、その国の拡大は、さらに進んでいて、そこでも、多くの血が流れている。
「皇太子となる皇子は、何人か生まれています。その中から、次の皇帝は決まる予定ですが、陛下は、死ぬまで皇太子は決めないとしています」
「正当な血筋でありながら、実子には、その座を譲る気がないということでしょうか?」
「そうですね。亡くなったコンテ様を今も待ち続けているのです……」
「でも、それは、本人がどうしたいかによりませんか?宰相様は、私のもとに、コンテ様がいることをご存じのようですから言いますが、本人は、皇太子に……皇帝になりたいとは思っているようには思えません。ましてや、どんな状況であったとしても、弟が管理している国なのですから」
「そうでしょうね。あの方は、争いを求めないでしょうから……」
「宰相様は、連れ戻したいのですか?」
「いえ、元気に過ごしてくださっているなら、それで構わないと思っています。誰か、素敵な方と家庭を築き、コンテ様が幸せだと感じる人生を歩んでもらえることが、何よりだと思っていますから……」
「そうですか。宰相様、ひとつ、お願いがございます」
「なんでしょうか?」
「私のもとには、インゼロ帝国の情報は入ってきませんから、窓口になっていただくことはできませんか?ただ、お立場もありますから……鳩でも飛ばし合う仲というのはどうでしょうか?私の従者に伝書鳩をさせますので……」
私の提案に、それこそ、鳩に豆鉄砲とばかりに驚いているが、たぶん、こちらの要求は、のんでくれるだろう。その従者こそ、宰相が求めっている人物なのだから。
宰相は、私の提案をよくよく考えているようで、二度頷いたのち、「よろしくお願いします」と言ったのである。
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