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申し訳なく感じています
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「アンバー領は、どんな場所なのでしょうか?」
「姫さん、そんな基本的な話、してないの?」
「そういえば、そうね」
トレビの質問に、私もセバスも、まだ、アンバー領の話をしていないことに気が付いた。職人が集まっているとか、職人に声をかけているとかの話はしたが、それだけである。
「そうね……アンバー領は、発展途上の領地かしら。元々、領主に見捨てられた領地として、ローズディアでは悪名が付いていたけど、ここ数年で、少しずつ変わってきているの」
「……それは、どういう」
「トレビがいた町は、穏やかな気候で、過ごしやすい場所だったでしょ?」
「そうですね。雪も年に数回振るか降らないかくらいで、気候はとても穏やかでした。少し山に近いので、作物は出来にくいですが、その分、私のような職人がいますし、外の町との繋がりもあったので、不便には思わなかったです」
「……それが普通だよな。うんうん」
「本当ですね」
ウィルとセバスが、当時の荒廃したアンバー領を思い出したようだ。トレビの言葉に頷き、「今は、本当によくなった」と二人で言い合っている。馬車の中にいるウィル、セバスとナタリーは、あのアンバー領を知っているので、トレビの言葉を聞いて、深く頷いている。トレビのいうとおり、町は穏やかな雰囲気であったのだから、領地運営は、きちんとされていることがわかる。
「あの……」
「わりぃわりぃ、不安にさせたよな。一言でいうと、人間が生きていくには、なかなか大変な領地だったということ。今は、改善しているところで、どんどん発展していっていること、あとは……そうだなぁ、やっぱり、人の出入りが多いな」
「人の出入りですか?」
「そう。アンナリーゼ様が主体となって、領主が経営している大店を持っているんだ。基本的には、領地で作られたものは、その店で売ることになっているんだけど、提携している行商とかもいるから、人の出入りが多い。あとは、随時領民を募集しているから、離れていた領民が戻ってきたり、新しい技術がどんどん生まれるから、それにあやかろうっていう者もいたり、学都を目指しているから、そういう人も多かったりするかな」
「……手広く領地運営をされているんですね。私では、とてもではないですが、想像はつきませんが、聞いた限りでは、わくわくと胸が躍るようです」
「それは、よかったわ。私たちは、まだまだ、発展途上だと思っているから、領地から、どんどん新しいものを輩出できることは、とても嬉しいことなの。ゆくゆくは、成長も止まるとは思っているけど、その頃には、職人たちも定着しているだろうし、どこにも負けない領地になっていると、私は考えているの。そのためには、トレビ……、あなたのその人形を作る技術も必要だわ」
私は、トレビを見ながら伝えると、なんだか照れくさそうにしている。いつもならおしゃべりなナタリーも静かに私たちの話を聞いていたので、不思議に思っていたら、人形のデザインを描いているようだった。
「ナタリーは、何を描いているの?」
「人形の姿絵を描いてみました。トレビさんの技術はとても素晴らしいので、例えば……こういう人形とかできると、ますますいいなって。技術云々より、私は作れるかどうかはわかりませんから、願望を込めているのですが……」
ナタリーが描いた絵をトレビに差し出すと、ジッと見つめていた。私たちが買った人形とは、少し様子の違う絵に、トレビは夢中で何事かを呟き始めた。もう、その表情は、職人そのもので、ナタリーの絵の構造を考えているようだ。私たちは、トレビが集中したので、静かにすることにした。馬車の隣を馬で並走していたが、少し前に出ることにする。
「隊長」
「これは……アンナリーゼ様」
私は、この隊の隊長に声をかける。急な申し出にも関わらず、私の我がままを優先してくれたことに、感謝を伝えるために並んだのだ。
「帰路の寄り道や野営にと、私の我がままに付き合ってくださり、ありがとうございました」
「いえ、それは、公からも言われていることだったので……。私の隊が、何かと足を引っ張っている場面を多々みることになり、申し訳なく感じています」
「いえいえ。隊長の隊は、公都を守る隊ですからね。野営などは、サーラー大隊長の部隊の方が慣れているだけです。お互い、役割がちがうのですから、そこは気になさらなくてもいいのではないですか?」
「そういってもらえると……甘えてしまい、申し訳ありません。ぜひとも、第13番隊からの隊員を配属してもらえるよう、上に掛け合いたいものです」
隊長がそういった側で、ウィルの隊の者たちは、ブルっと震えた。みな、ウィルの隊を出たくないものだから、心の中で、選んでくれるなと願っているように見える。よほど、『鬼のセシリア』にしごかれるのが、好きなようだ。私は、思わず笑ってしまった。
「姫さん、そんな基本的な話、してないの?」
「そういえば、そうね」
トレビの質問に、私もセバスも、まだ、アンバー領の話をしていないことに気が付いた。職人が集まっているとか、職人に声をかけているとかの話はしたが、それだけである。
「そうね……アンバー領は、発展途上の領地かしら。元々、領主に見捨てられた領地として、ローズディアでは悪名が付いていたけど、ここ数年で、少しずつ変わってきているの」
「……それは、どういう」
「トレビがいた町は、穏やかな気候で、過ごしやすい場所だったでしょ?」
「そうですね。雪も年に数回振るか降らないかくらいで、気候はとても穏やかでした。少し山に近いので、作物は出来にくいですが、その分、私のような職人がいますし、外の町との繋がりもあったので、不便には思わなかったです」
「……それが普通だよな。うんうん」
「本当ですね」
ウィルとセバスが、当時の荒廃したアンバー領を思い出したようだ。トレビの言葉に頷き、「今は、本当によくなった」と二人で言い合っている。馬車の中にいるウィル、セバスとナタリーは、あのアンバー領を知っているので、トレビの言葉を聞いて、深く頷いている。トレビのいうとおり、町は穏やかな雰囲気であったのだから、領地運営は、きちんとされていることがわかる。
「あの……」
「わりぃわりぃ、不安にさせたよな。一言でいうと、人間が生きていくには、なかなか大変な領地だったということ。今は、改善しているところで、どんどん発展していっていること、あとは……そうだなぁ、やっぱり、人の出入りが多いな」
「人の出入りですか?」
「そう。アンナリーゼ様が主体となって、領主が経営している大店を持っているんだ。基本的には、領地で作られたものは、その店で売ることになっているんだけど、提携している行商とかもいるから、人の出入りが多い。あとは、随時領民を募集しているから、離れていた領民が戻ってきたり、新しい技術がどんどん生まれるから、それにあやかろうっていう者もいたり、学都を目指しているから、そういう人も多かったりするかな」
「……手広く領地運営をされているんですね。私では、とてもではないですが、想像はつきませんが、聞いた限りでは、わくわくと胸が躍るようです」
「それは、よかったわ。私たちは、まだまだ、発展途上だと思っているから、領地から、どんどん新しいものを輩出できることは、とても嬉しいことなの。ゆくゆくは、成長も止まるとは思っているけど、その頃には、職人たちも定着しているだろうし、どこにも負けない領地になっていると、私は考えているの。そのためには、トレビ……、あなたのその人形を作る技術も必要だわ」
私は、トレビを見ながら伝えると、なんだか照れくさそうにしている。いつもならおしゃべりなナタリーも静かに私たちの話を聞いていたので、不思議に思っていたら、人形のデザインを描いているようだった。
「ナタリーは、何を描いているの?」
「人形の姿絵を描いてみました。トレビさんの技術はとても素晴らしいので、例えば……こういう人形とかできると、ますますいいなって。技術云々より、私は作れるかどうかはわかりませんから、願望を込めているのですが……」
ナタリーが描いた絵をトレビに差し出すと、ジッと見つめていた。私たちが買った人形とは、少し様子の違う絵に、トレビは夢中で何事かを呟き始めた。もう、その表情は、職人そのもので、ナタリーの絵の構造を考えているようだ。私たちは、トレビが集中したので、静かにすることにした。馬車の隣を馬で並走していたが、少し前に出ることにする。
「隊長」
「これは……アンナリーゼ様」
私は、この隊の隊長に声をかける。急な申し出にも関わらず、私の我がままを優先してくれたことに、感謝を伝えるために並んだのだ。
「帰路の寄り道や野営にと、私の我がままに付き合ってくださり、ありがとうございました」
「いえ、それは、公からも言われていることだったので……。私の隊が、何かと足を引っ張っている場面を多々みることになり、申し訳なく感じています」
「いえいえ。隊長の隊は、公都を守る隊ですからね。野営などは、サーラー大隊長の部隊の方が慣れているだけです。お互い、役割がちがうのですから、そこは気になさらなくてもいいのではないですか?」
「そういってもらえると……甘えてしまい、申し訳ありません。ぜひとも、第13番隊からの隊員を配属してもらえるよう、上に掛け合いたいものです」
隊長がそういった側で、ウィルの隊の者たちは、ブルっと震えた。みな、ウィルの隊を出たくないものだから、心の中で、選んでくれるなと願っているように見える。よほど、『鬼のセシリア』にしごかれるのが、好きなようだ。私は、思わず笑ってしまった。
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