102 / 167
遅効性
しおりを挟む
義父と領地へ出かけたりと慌ただしくしていたジョージアと久しぶりの楽しい夕食をともにし、席を立った瞬間、私の視界はぐにゃりと歪んだ。
そのまま私は、床に倒れ込みもがき始める。
あぁ、盛られたな……それにしても、今、なの?
思考の端の方で、思い至ったのは遅効性の毒だった。
油断してたわけではないが、こちらの国にきてから、今まで何もなかったのだ。
そろそろだろうかと準備は怠っていなかったが、さすがにこのタイミングかと思ってしまう。
一人で夕食を取るときは、全てデリアを介していたので、さすがに毒は盛れなかったようだ。
ジョージアの声がぼんやり聞こえる。
「アンナ!アンナリーゼ!!」
揺さぶらないでください……声にならない私の言葉では、ジョージアに伝わらない。
なので、ジョージアに揺さぶられると、毒が少しずつ体中に広がっていくようだった。
「若旦那さま、アンナリーゼ様を揺さぶらないでください!服毒によって倒れられたのに、余計に
広がってしまいます!!」
「なんだって!?」
デリアにジョージアは、叱られている。
あぁ、やっと揺さぶりが停まったと私は安堵した。
「しかし……」
「若旦那さまが騒いだところで、アンナリーゼ様は回復しません!少し静かにしていてください!
あと、皆さん、一歩も動かないように!」
その場をどんどん仕切っていくデリア。
かなり頼もしい……
ジョージアは、デリアに先ほどから叱られてばかりで、ちょっとかわいそうだけど……心配してくれるジョージアの気持ちが私は嬉しい。
現在進行形で、私自身は、苦しんでいるのだが……頭の方はスッキリ稼働しているようだ。
「アンナリーゼ様、飲めますか?」
痙攣をおこし、息もしにくくなってきた私は口をわずかに開くことしかできなかった。
「失礼します」
デリアは、試験管に入った解毒剤を口に含ませ、私に口移しをしてくれる。
コクンと解毒剤が喉に流れていくのがわかる。
ただ、結構な量の毒を盛られたようで、2本目も必要だと判断してくれたデリアが、もう一度口移ししてくた解毒剤を体に流すと、先ほどより断然楽になった。
普通は、すぐに効果があるわけではない。
これは、何年もかけて毒耐性をつけてきた私だからこそと、万能解毒剤のおかげだろう。
大抵の毒は、解毒できるように改良してあるのだ。
本人には言わないけど……ヨハン教授様々。
「……ん」
「気がつかれましたか……?よかった……」
涙を浮かべているデリアの涙を私が親指ではらうと、微笑んでくれた。
事前にデリアには、毒が盛られることがあると言ってあったが、さすがに突然だったため平常心を保ちつつも、解毒剤で回復しなかったらとやはり不安が大きかったようだ。
解毒剤は、いつも持っているようお願いしていたが、功を奏したようでなによりである。
「ごめんね。心配かけたわ。ジョージア様も……」
するとジョージアは、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「怖かった……いなくなるんじゃないかって……」
「大丈夫です。これくらいの毒では死にません。それに、まだ、死ねませんから!
死ぬのは、今ではありませんよ!」
ジョージアの耳に聞こえるくらいの声で話す。
「それより、少し痛いので離してもらえませんか?」
もたれかかるようにジョージアが体の位置を変えてくれたおかげで周りがみやすかった。
「どうしますか?」
デリアが問うてくる。
今、犯人を捕まえるのは、次の犯行を考えると得策に思えない。
「今日のことは、ここだけの秘密にしましょう」
「何を言っている!公爵家の者に危害が……」
それ以上は言わせないと、ジョージアの口を手で押さえて黙らせる。
「今ではありません。しばらくは、犯人を泳がせます」
「かしこまりました」
デリアは、今後のことをいろいろと考えなければならないという顔をしている。
この屋敷には、デリアの味方も多いと聞いていた。
今回の毒も盛った者は、すでに検討はついているのだ。
それほど急いで犯人を突き詰めなくていいだろう。もし、今の犯人を捕まえてしまったら、新しい人が送られて来る。
誰が犯人かわからなくなるよりかは、誰が犯人なのか掴んでいる今の方がずっと楽に感じているので、放置することにした。
「あと、明日、ニコライに会いに行くから、用意しておいて!」
「ニコライ?」
ジョージアには、会わせたことがないのだった。
そのうち、屋敷に呼ぼうと思っていたのに、先にニコライのところへ行くはめになってしまったので、説明をすることにした。
「私のお友達です」
「それより!医者を!」
「大丈夫ですよ!大袈裟にしないでください」
「そういうわけにもいかないだろ?」
「いいえ、大丈夫です。今飲んだのも主治医の解毒剤ですから!」
ジョージアの申し出を断ると、とても心配してくれる。
それでも、ヨハンの解毒剤があれば、ケロッとしてしまう私なので問題はない。
「デリア、今日はもう下がります。一緒に来て頂戴」
よろよろとジョージアとデリアに肩を借りて立ち上がる。
まだ、体が重い気がするけど……こんなところで、負けていられない。
「では、俺もついて行こう」
二人に支えてもらい、私は、ゆっくりな足取りで自室へと戻った。
部屋についてからベッドに寝かされたが、ジョージアにしこたま叱られたのは言うまでもない。
一人で真っ暗闇の外をぼんやり眺める。
今日のこれは、まだ、始まりにすぎない。
どんどん、これからエスカレートしていくはずだ。
そっと窓の外を見ると明日には新月になるのだろうか、下弦の月がもう消えかけている。
ハリーにも叱られたな……学都で毒を煽ったときのことを思い出し苦笑いをする。
耐性をつけていた私だから今日のところは助かったが、普通なら死んでいたかもしれない。
なぜ、このタイミングで毒を盛られたのかは、疑問だけど……
「まだ、死ぬわけにはいかないから……」
呟くと耳元のルビーが、ガラス越しにチカッと光ったように見えた。
守ってくれたのね。ありがとう……ピアスを触るとその光は、消えていったのである。
そのまま私は、床に倒れ込みもがき始める。
あぁ、盛られたな……それにしても、今、なの?
思考の端の方で、思い至ったのは遅効性の毒だった。
油断してたわけではないが、こちらの国にきてから、今まで何もなかったのだ。
そろそろだろうかと準備は怠っていなかったが、さすがにこのタイミングかと思ってしまう。
一人で夕食を取るときは、全てデリアを介していたので、さすがに毒は盛れなかったようだ。
ジョージアの声がぼんやり聞こえる。
「アンナ!アンナリーゼ!!」
揺さぶらないでください……声にならない私の言葉では、ジョージアに伝わらない。
なので、ジョージアに揺さぶられると、毒が少しずつ体中に広がっていくようだった。
「若旦那さま、アンナリーゼ様を揺さぶらないでください!服毒によって倒れられたのに、余計に
広がってしまいます!!」
「なんだって!?」
デリアにジョージアは、叱られている。
あぁ、やっと揺さぶりが停まったと私は安堵した。
「しかし……」
「若旦那さまが騒いだところで、アンナリーゼ様は回復しません!少し静かにしていてください!
あと、皆さん、一歩も動かないように!」
その場をどんどん仕切っていくデリア。
かなり頼もしい……
ジョージアは、デリアに先ほどから叱られてばかりで、ちょっとかわいそうだけど……心配してくれるジョージアの気持ちが私は嬉しい。
現在進行形で、私自身は、苦しんでいるのだが……頭の方はスッキリ稼働しているようだ。
「アンナリーゼ様、飲めますか?」
痙攣をおこし、息もしにくくなってきた私は口をわずかに開くことしかできなかった。
「失礼します」
デリアは、試験管に入った解毒剤を口に含ませ、私に口移しをしてくれる。
コクンと解毒剤が喉に流れていくのがわかる。
ただ、結構な量の毒を盛られたようで、2本目も必要だと判断してくれたデリアが、もう一度口移ししてくた解毒剤を体に流すと、先ほどより断然楽になった。
普通は、すぐに効果があるわけではない。
これは、何年もかけて毒耐性をつけてきた私だからこそと、万能解毒剤のおかげだろう。
大抵の毒は、解毒できるように改良してあるのだ。
本人には言わないけど……ヨハン教授様々。
「……ん」
「気がつかれましたか……?よかった……」
涙を浮かべているデリアの涙を私が親指ではらうと、微笑んでくれた。
事前にデリアには、毒が盛られることがあると言ってあったが、さすがに突然だったため平常心を保ちつつも、解毒剤で回復しなかったらとやはり不安が大きかったようだ。
解毒剤は、いつも持っているようお願いしていたが、功を奏したようでなによりである。
「ごめんね。心配かけたわ。ジョージア様も……」
するとジョージアは、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「怖かった……いなくなるんじゃないかって……」
「大丈夫です。これくらいの毒では死にません。それに、まだ、死ねませんから!
死ぬのは、今ではありませんよ!」
ジョージアの耳に聞こえるくらいの声で話す。
「それより、少し痛いので離してもらえませんか?」
もたれかかるようにジョージアが体の位置を変えてくれたおかげで周りがみやすかった。
「どうしますか?」
デリアが問うてくる。
今、犯人を捕まえるのは、次の犯行を考えると得策に思えない。
「今日のことは、ここだけの秘密にしましょう」
「何を言っている!公爵家の者に危害が……」
それ以上は言わせないと、ジョージアの口を手で押さえて黙らせる。
「今ではありません。しばらくは、犯人を泳がせます」
「かしこまりました」
デリアは、今後のことをいろいろと考えなければならないという顔をしている。
この屋敷には、デリアの味方も多いと聞いていた。
今回の毒も盛った者は、すでに検討はついているのだ。
それほど急いで犯人を突き詰めなくていいだろう。もし、今の犯人を捕まえてしまったら、新しい人が送られて来る。
誰が犯人かわからなくなるよりかは、誰が犯人なのか掴んでいる今の方がずっと楽に感じているので、放置することにした。
「あと、明日、ニコライに会いに行くから、用意しておいて!」
「ニコライ?」
ジョージアには、会わせたことがないのだった。
そのうち、屋敷に呼ぼうと思っていたのに、先にニコライのところへ行くはめになってしまったので、説明をすることにした。
「私のお友達です」
「それより!医者を!」
「大丈夫ですよ!大袈裟にしないでください」
「そういうわけにもいかないだろ?」
「いいえ、大丈夫です。今飲んだのも主治医の解毒剤ですから!」
ジョージアの申し出を断ると、とても心配してくれる。
それでも、ヨハンの解毒剤があれば、ケロッとしてしまう私なので問題はない。
「デリア、今日はもう下がります。一緒に来て頂戴」
よろよろとジョージアとデリアに肩を借りて立ち上がる。
まだ、体が重い気がするけど……こんなところで、負けていられない。
「では、俺もついて行こう」
二人に支えてもらい、私は、ゆっくりな足取りで自室へと戻った。
部屋についてからベッドに寝かされたが、ジョージアにしこたま叱られたのは言うまでもない。
一人で真っ暗闇の外をぼんやり眺める。
今日のこれは、まだ、始まりにすぎない。
どんどん、これからエスカレートしていくはずだ。
そっと窓の外を見ると明日には新月になるのだろうか、下弦の月がもう消えかけている。
ハリーにも叱られたな……学都で毒を煽ったときのことを思い出し苦笑いをする。
耐性をつけていた私だから今日のところは助かったが、普通なら死んでいたかもしれない。
なぜ、このタイミングで毒を盛られたのかは、疑問だけど……
「まだ、死ぬわけにはいかないから……」
呟くと耳元のルビーが、ガラス越しにチカッと光ったように見えた。
守ってくれたのね。ありがとう……ピアスを触るとその光は、消えていったのである。
0
あなたにおすすめの小説
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる