【完結】これはきっと運命の赤い糸

夏目若葉

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信じる気持ち③

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「結婚後、桔平が生まれ、正蔵は真面目に働く一馬を志田ケミカルの本社勤務にした。すると一馬は娘婿だという立場を上手に使い、重役を自分の味方に付けて経営に口を挟むようになった。かいつまんで言うとこれが会社を追い出された原因だ。これは前にも話したな」
「次期社長を狙っていると、誤解されてしまったんですよね」
「いや、俺の調査では事実だという線が濃厚だ。上手く正蔵に取り入って社長になれたら良かったんだが、正蔵はよそから来た一馬に会社を乗っ取られると危惧きぐしたんだろう。一馬を拒絶した。というのも、一馬の過去を正蔵が調べたからだ」
「……過去?」

 桔平さんのお父さんの過去がどうしたというのだろう?
 川井さんの含みのある物言いが、まるで悪人だとでも言いたげだから気になってしまう。

「正蔵はなぜ調べようと思ったのか。それは、娘のあざみが騙されたんじゃないかと疑ったからだ。最初から会社を乗っ取る目的で、一馬があざみに近づいたのでは、と」

 かわいい娘が騙されて結婚した疑惑が出てくれば、それを調べたい会長の親心もわからなくはない。

「調べたら、一馬に借金等の金銭トラブルはなかったが……女がひとり浮上したらしい」
「どういうことですか?」
「大学時代から付き合っていた恋人だそうだ。一馬はその恋人がいながら、あざみと付き合った。二股ってやつだな」

 実際に言葉にはしなかったが、最低だなと思った。
 桔平さんのお父さんのことを悪く言いたくはないけど、その女性が気の毒だ。
 なぜかふと仁科さんを思い出した。世の中に二股する男性は多いのだろうか。

「一馬は以前からの恋人を振り、あざみとの結婚を取った。あざみが志田ケミカルの娘だから。それを知った正蔵はあざみに離婚しろと迫ったそうだが、夫婦仲が良好だったふたりは別れることはなく、一馬は再び系列会社に飛ばされたようだ」
「そう、なんですか」

 私が複雑な表情をしてポツリとつぶやくと、川井さんは腕組みをしながらも前のめりになって真剣な顔になった。

「大学時代から付き合っていた恋人は……“香澄”という名だったらしい。栗林香澄。数年後、結婚して苗字が“浅木”に変わり、娘を産んだ。“美桜”という名前の」
「え……」
「“浅木美桜”なんて同い年の同姓同名はほかにいないだろ。お母さんからこういう話、なにか聞いたことはなかったか?」

 ガツンと衝撃を受けながらも、質問にはフルフルと頭を横に振る。

 なんという運命のイタズラだろうか。
 川井さんの今の話では、一馬さんと私の母が昔付き合っていたということになる。あざみさんと出会うずっと前から……。
 それが、あざみさんの出現で別れることになった。

 あざみさんが母から一馬さんを奪ったのだろうか? いや、違う。悪いのは二股していた一馬さんだ。
 その上、愛情ではなく損得勘定で母を振ったのだとしたら、母がかわいそうすぎる。
 気持ちの持って行き場がなくて……
 だけどなんとも言えない感情が湧いてきて、気がついたら涙が頬を伝っていた。
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