28 / 50
彼の嫉妬②
しおりを挟む
「たしか志田ケミカルの常務だよね?」
「え? 蘭、桔平さんのこと知ってるの?」
「この前ビジネス雑誌にめちゃくちゃ大きく写真が出てたもん。ていうか、美桜すごい!!」
すごいのは私ではなく桔平さんなのだけれど。親友の蘭がテンション高くはしゃぐように喜んでくれた。
それにしても、桔平さんがそんな雑誌に出ているとは知らなかった。私が思ってる以上に桔平さんは業界では有名人なのだろう。
「これ、お昼に一緒に食べよ」
貰ったペーパーバッグの中身を見ると、サンドイッチがたっぷりと入っていた。
ひとりでは食べきれない量だから、蘭とふたりで食べるにはちょうどいい。
「蘭の好きな人の話も聞かなきゃね」
「私の好きな人はね……まだ全然どんな人なのかわかんないの」
そうなの? とわざと蘭の顔を覗き込めば、頬が徐々に赤く染まった。
蘭のすごく純情で女の子らしい部分で、それがとてもかわいらしい。
「もしかして、蜜山堂の若旦那?」
パーティーのときに、老舗和菓子店の若旦那を見てカッコいいと言ってたから、思い人はその人なのかと思ったのに。
蘭は一瞬ポカンとしてから、違う違うと顔の前で手を横にブンブンと振った。
「あそこの若旦那もカッコいいけどね」
「違うの?」
「うん、もっとカッコいいよ! 同じビルで働いてる人だけど、どこの会社なのか知らなかったの。でも偶然うちのパーティーに来ててね。勤務してる会社がわかっちゃった!」
あのパーティーは、実はすごい。
私も偶然に桔平さんと出会ったし、蘭も受付をしていたからこそ、好きな人がどこの会社なのかはっきりわかったのだから。
創立記念パーティーなんて、喜ぶのはコネ作りしたい年配の役員だけだと思っていたけれど、こうして出会いがあるならなかなか捨てたものではない。
「なんと! 志田ケミカルの下の階にあるIT企業の人だった」
「あそこ、ビッグデータの処理とかしてる会社だよね?」
「そう。上司の人と一緒に来てて、あとで招待状に明記された会社名を見たの。名前は以前に、同僚の人がたまたま呼んでたのを聞いてたから知ってたんだけどね、川井さんっていうの」
「へ、へぇ……」
まさかあの川井さんではなく、違う人なのだろう。
そう願いたいのはやまやまだけれど、どうしても私の知っている川井さんの顔が浮かんでくる。というのも、いろいろと情報が一致するからだ。
イケメンでカッコいいこと、あのビルに出入りしていること、うちのパーティーに来ていたこと。
IT企業に勤務していること以外は、あの川井さんで間違いないと思えてしまう。
きっと、蘭は知らないのだ。川井さんが探偵であり、このビルの中をウロウロしていることを。
彼がいつもIT企業の社員風な服装なのは、蘭が言った会社の社員のフリをしているからではないだろうか。
なにかその会社とコネがあって、うちのパーティーにも本物の社員と一緒にくっついてきたのでは? と想像がついた。
まだそれは確信が持てないから、蘭に言うべきかどうか迷うところではある。
「ねぇ、写真はないの?」
一か八かで蘭に聞いてみたけれど、蘭は首を横に振った。
写真があれば、それを見せてもらえばすぐ真偽がわかると思ったのに。
「写真はないなぁ。連絡先交換もしてないの。あのあとすぐ、盲腸になっちゃったから」
「そっか」
とりあえずまだなにも始まってはいないようだから、別人であることを祈ろう。
いや、あの川井さんだったとしてもダメということはない。
IT企業の社員ではないと蘭が知って、それでも良ければ、という条件付きだが。ふたりが両想いで付き合うのならそれは幸せなことだ。
『俺にしとけばいいんだよ』などと、あの人は私に言っていた気がするけれど、私を勇気づけるためだったのだと思って、あれは聞かなかったことにしよう。
だけど、もし蘭をひどく傷つけるようなことがあれば、私は川井さんを許さない。
「え? 蘭、桔平さんのこと知ってるの?」
「この前ビジネス雑誌にめちゃくちゃ大きく写真が出てたもん。ていうか、美桜すごい!!」
すごいのは私ではなく桔平さんなのだけれど。親友の蘭がテンション高くはしゃぐように喜んでくれた。
それにしても、桔平さんがそんな雑誌に出ているとは知らなかった。私が思ってる以上に桔平さんは業界では有名人なのだろう。
「これ、お昼に一緒に食べよ」
貰ったペーパーバッグの中身を見ると、サンドイッチがたっぷりと入っていた。
ひとりでは食べきれない量だから、蘭とふたりで食べるにはちょうどいい。
「蘭の好きな人の話も聞かなきゃね」
「私の好きな人はね……まだ全然どんな人なのかわかんないの」
そうなの? とわざと蘭の顔を覗き込めば、頬が徐々に赤く染まった。
蘭のすごく純情で女の子らしい部分で、それがとてもかわいらしい。
「もしかして、蜜山堂の若旦那?」
パーティーのときに、老舗和菓子店の若旦那を見てカッコいいと言ってたから、思い人はその人なのかと思ったのに。
蘭は一瞬ポカンとしてから、違う違うと顔の前で手を横にブンブンと振った。
「あそこの若旦那もカッコいいけどね」
「違うの?」
「うん、もっとカッコいいよ! 同じビルで働いてる人だけど、どこの会社なのか知らなかったの。でも偶然うちのパーティーに来ててね。勤務してる会社がわかっちゃった!」
あのパーティーは、実はすごい。
私も偶然に桔平さんと出会ったし、蘭も受付をしていたからこそ、好きな人がどこの会社なのかはっきりわかったのだから。
創立記念パーティーなんて、喜ぶのはコネ作りしたい年配の役員だけだと思っていたけれど、こうして出会いがあるならなかなか捨てたものではない。
「なんと! 志田ケミカルの下の階にあるIT企業の人だった」
「あそこ、ビッグデータの処理とかしてる会社だよね?」
「そう。上司の人と一緒に来てて、あとで招待状に明記された会社名を見たの。名前は以前に、同僚の人がたまたま呼んでたのを聞いてたから知ってたんだけどね、川井さんっていうの」
「へ、へぇ……」
まさかあの川井さんではなく、違う人なのだろう。
そう願いたいのはやまやまだけれど、どうしても私の知っている川井さんの顔が浮かんでくる。というのも、いろいろと情報が一致するからだ。
イケメンでカッコいいこと、あのビルに出入りしていること、うちのパーティーに来ていたこと。
IT企業に勤務していること以外は、あの川井さんで間違いないと思えてしまう。
きっと、蘭は知らないのだ。川井さんが探偵であり、このビルの中をウロウロしていることを。
彼がいつもIT企業の社員風な服装なのは、蘭が言った会社の社員のフリをしているからではないだろうか。
なにかその会社とコネがあって、うちのパーティーにも本物の社員と一緒にくっついてきたのでは? と想像がついた。
まだそれは確信が持てないから、蘭に言うべきかどうか迷うところではある。
「ねぇ、写真はないの?」
一か八かで蘭に聞いてみたけれど、蘭は首を横に振った。
写真があれば、それを見せてもらえばすぐ真偽がわかると思ったのに。
「写真はないなぁ。連絡先交換もしてないの。あのあとすぐ、盲腸になっちゃったから」
「そっか」
とりあえずまだなにも始まってはいないようだから、別人であることを祈ろう。
いや、あの川井さんだったとしてもダメということはない。
IT企業の社員ではないと蘭が知って、それでも良ければ、という条件付きだが。ふたりが両想いで付き合うのならそれは幸せなことだ。
『俺にしとけばいいんだよ』などと、あの人は私に言っていた気がするけれど、私を勇気づけるためだったのだと思って、あれは聞かなかったことにしよう。
だけど、もし蘭をひどく傷つけるようなことがあれば、私は川井さんを許さない。
0
あなたにおすすめの小説
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
この裏切りは、君を守るため
島崎 紗都子
恋愛
幼なじみであるファンローゼとコンツェットは、隣国エスツェリアの侵略の手から逃れようと亡命を決意する。「二人で幸せになろう。僕が君を守るから」しかし逃亡中、敵軍に追いつめられ二人は無残にも引き裂かれてしまう。架空ヨーロッパを舞台にした恋と陰謀 ロマンティック冒険活劇!
【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
純真~こじらせ初恋の攻略法~
伊吹美香
恋愛
あの頃の私は、この恋が永遠に続くと信じていた。
未成熟な私の初恋は、愛に変わる前に終わりを告げてしまった。
この心に沁みついているあなたの姿は、時がたてば消えていくものだと思っていたのに。
いつまでも消えてくれないあなたの残像を、私は必死でかき消そうとしている。
それなのに。
どうして今さら再会してしまったのだろう。
どうしてまた、あなたはこんなに私の心に入り込んでくるのだろう。
幼いころに止まったままの純愛が、今また動き出す……。
2月31日 ~少しずれている世界~
希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった
4年に一度やってくる2月29日の誕生日。
日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。
でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。
私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。
翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
【完結】付き合ってもいないのに、幼なじみの佐藤がプロポーズしてきた
ぽぽよ
恋愛
「俺らさ、結婚しない?」
三十二歳、独身同士。
幼なじみの佐藤が、たこ焼きパーティの最中に突然言い出した。
付き合ってもないのに。
夢見てた甘いプロポーズじゃないけれど、佐藤となら居心地いいし、給料もあるし、嫁姑問題もないし、性格も知ってる。
断る理由が、ない。
こうして、交際0日で結婚することが決まった。
「とりあえず同棲すっか」
軽いノリで決まってゆく未来。
ゆるっとだらっと流れていく物語。
※本編は全7話。
※スパダリは一人もいません笑
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる