【完結】これはきっと運命の赤い糸

夏目若葉

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彼の嫉妬③

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***

 季節が二ヶ月ほど進んだ。
 十二月に入り、桔平さんは携わっていた自社の新商品の発売を控え、ますます忙しそうだ。
 だけどもう少ししたらふたりで初めて迎えるクリスマスが来るので、甘いデートプランを考えていると言ってくれた。
 どんなデートなのか聞いてみたけれど、詳しくはお楽しみということで教えてもらえなかった。
 それでもなんとか食い下がり、どうやらディナークルーズデートを予約してくれているのだとわかった。
 そんなロマンチックなデートは私は経験したことがない。

 ディナークルーズもうれしいのだけれど、桔平さんが私と過ごすクリスマスを大切に考えてくれたことが、この上なく幸せだ。
 仕事で忙しいからとおろそかにしない、彼の姿勢というか向き合い方が誠実で胸が熱くなる。
 でもその反面、私は桔平さんに、川井さんから聞いた例のことを話せていないので、すごく複雑な心境でもある。
 桔平さんのお父さんと、私の母のことだ。
 話してしまったほうがいいに決まっているのに、いざとなったら言う勇気がなくて、ずっと胸の中にモヤモヤとなにかつっかえたような状態になっている。
 嫌われるのが怖いのだ。桔平さんと付き合えている、今の幸せが壊れるのがすごく怖い。

「お疲れ。今帰りか?」

 桔平さんのことを考えているときに現れるのは、いつもこの人だ。

「川井さんもお疲れ様です」

 今日もIT社員を装ってビルに出入りしている川井さんに声をかけられた。

 結局、蘭が好きになったと話してくれた人は、現在私の目の前にいる川井さんだった。
 一ヶ月ほど前、蘭がビル内で川井さんとバッタリと再会したときに、積極的に自分から話しかけて連絡先交換をしたのだと聞いて、後で私から川井さんに密かに連絡を入れたのだ。
 私と蘭は同僚だけれど親友でもあることを伝えた。
 だから、IT社員ではなく探偵だと蘭にはきちんと自分から明かしてほしい、とお願いをした。もちろん、私に言われたからだというのは伏せた上で。

 断られるかもしれないと思ったけれど、川井さんはその申し出を聞き入れてくれた。
 蘭には探偵として活動していることは他言無用だと、彼はきつく釘を刺したようだが、蘭が真実を知って納得しているならそれでいい。
 最初に誤解をしたのは蘭のほうで、川井さんがわざと嘘をついたわけではないはずだが、IT社員だとずっと誤解したままの状態では蘭がかわいそうだ。
 あとで真実を知れば、蘭は騙されたと思うかもしれないし、そうなると私も共犯になってしまうから、それだけは避けたかった。

「ちょっと今から飲みにでも行かないか?」
「お茶を、ですか?」
「冗談だろ。飲みに行くって言ったら酒に決まってる」

 また例のカフェに引っ張って行かれるんですか? と多少の嫌味を込めたのに、間髪入れずに言い返されてしまい、私は歩く速度を速めた。

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