【完結】これはきっと運命の赤い糸

夏目若葉

文字の大きさ
39 / 50

決意のクリスマスデート③

しおりを挟む
「美桜?」
「ごめんなさい、変なこと言って」
「いや、美桜がくれたやつのほうがいい。これが一番だよ。だいたい俺がピンクの絆創膏って変だもんな」

 桔平さんは私が渡した絆創膏を器用にパパっと指に巻いて、満足そうにそれを見つめていた。

「桔平さん、お話があります」

 絆創膏みたいに、桔平さんのそばにいつまでもそっと寄り添っていられたらいいのだけれど、この話をしたら、今後はどうなるかはわからない。
 思わず尻込みしそうになった自分を奮い立たせた。今日話すと覚悟を決めて来たじゃないか、と。
 だけど意を決して話そうとしたとき、勝手に涙があふれて頬を伝った。

「美桜?」

 桔平さんが手を伸ばしてきて、テーブルの上で私の左手を覆うように握る。

「どうしたんだよ。ふるえてるし、涙も」

 桔平さんは私の異変に驚いたのか、珍しく焦ったようにアタフタと目が泳いでいる。
 そんな桔平さんも大好きだから、最悪の結末を想像したら心が張り裂けそうだ。

「聞いてください。実は私……」

 たどたどしくだけれど、桔平さんにゆっくりと話をした。
 私の母と桔平さんのお父さんが、昔、恋人同士だったと知ってしまったこと。
 それぞれの子どもである私たちが付き合うことに、私の母には反対されなかったものの、桔平さんのご両親やお爺様には反対されるのではと心配していること。

 桔平さんにとっても衝撃の事実だったに違いない。
 しばらく口元に手をやりながら固まっていたけれど、私を安心させるためなのか、困り顔のまま笑ってみせた。

「俺の父親と、美桜のお母さんが……。すごい偶然だな。で、俺たちが全然関係なく知り合って恋人になるなんて、ある意味奇跡」
「母にも言われました。運命の赤い糸だね、って」
「俺もそう思う」
「でも……私のこと、桔平さんのご両親は良くは思わないですよね」

 言いながらうつむく私に、桔平さんは「そうかな?」と、小首をかしげる。

「たとえそうだったとしても、俺はなにも変わらないよ」
「……」
「俺、もう三十だし子どもじゃないから。自分の生き方は自分で決める。恋愛も、親が反対したくらいで俺が美桜を手放すわけない」

 じっと射貫くように、意思を込めた瞳で桔平さんに見つめられると、うれしさと戸惑いの気持ちが混ざった涙が再びハラハラとこぼれた。私はこんなに泣き虫だっただろうか。

「美桜はずっと自分の胸に抱えたままで辛かったろ」
「いつ話そうかと悩んでました。身を引いてお別れしなくちゃいけなくなるかと思ったら、怖くてなかなか言えなくて……。元々身分違いですし」

 私は神妙な面持ちで言ったのに、最後の言葉で桔平さんがフッと口元を緩めて笑った。

「身分違いって、王様の家でもなんでもないから」
「でも……住む世界が」
「うちは母方の祖父が起業家だったってだけ。父のことは美桜のお母さんがよく知ってると思うけど、普通の人だし。俺の住む世界も美桜と同じだ」

 勝手に線を引かないでほしい、と慈愛を込めた眼差しで桔平さんが言う。

「それと、身を引くなんて絶対却下」

 どう答えていいかわからずに口ごもっていたら、船が出発した桟橋に戻ろうとしていた。
 あっという間に時間が過ぎていて、クルージングはそろそろ終わりのようだ。

「デッキに出そびれたな」
「私が話し込んでしまったから……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

この裏切りは、君を守るため

島崎 紗都子
恋愛
幼なじみであるファンローゼとコンツェットは、隣国エスツェリアの侵略の手から逃れようと亡命を決意する。「二人で幸せになろう。僕が君を守るから」しかし逃亡中、敵軍に追いつめられ二人は無残にも引き裂かれてしまう。架空ヨーロッパを舞台にした恋と陰謀 ロマンティック冒険活劇!

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

処理中です...