【完結】これはきっと運命の赤い糸

夏目若葉

文字の大きさ
44 / 50

あなたじゃなきゃ④

しおりを挟む
「身分違いの恋なのは自分でもわかっています。桔平さんは日本が誇る大企業である志田ケミカルの常務です。そんなすごい方と、一般庶民の私は釣り合わない。住む世界が違うなら、いっそ身を引いたほうがいいのでは、とも考えました。母の事で、おふたりに反対されることも想定していたので……」

 一馬さんの気持ちも、あざみさんの気持ちも聞けた。
 だからこそ、私の気持ちもきちんと伝えなければと思った。それが誠意だ、と。

「私は、桔平さんを愛しています」

 私は他にはなにも持っていないけれど、桔平さんへの愛情は溢れるほど持っている。

「心から愛しています。だから、桔平さんの隣にいさせてもらえませんか」

 懸命に堪えていたのに、ついに目から涙が零れ落ちた。ここで泣くのは卑怯な気がして、両手で頬の涙を素早く拭う。

「俺も。美桜を心から愛してるんだ。本人同士が愛し合ってるかどうかが問題だから、俺はたとえ反対されても美桜とは別れない」

 私たちの言葉を聞いて、一馬さんの表情が緩んで笑顔になった。

「実は自分も昔、美桜さんと同じようなことを言った。会長に結婚を反対されたからな」
「そうだったの?」
「ああ。どこの馬の骨かわからんやつに、娘はやれん!って」

 どうやら桔平さんもこの話は初めて聞くようだった。穏やかな優しい表情で、一馬さんが話を続ける。

「あざみはお嬢様らしくなくて、憎めない性格でね。好きになってしまったから、いくら反対されても、どうしてもあざみと結婚したかったんだ。だから頭を下げ続けた。何度も何度も。身分違いなのはわかっています、地位も名誉もなにもいらないので結婚させてくださいとお願いし続けて、やっと認めてもらえた」

 本当だ。言葉は全く同じではないけれど、内容は先ほど私が言ったことと酷似している。
 昔の一馬さんも同じだった。
 愛しているから、他にはなにもいらないからあざみさんのそばにいたい、その気持ちだけだったのだ。

「野望はなかったの? 会長の周りにいる人たちはみんな言ってるよ。娘婿の青砥一馬は会社を乗っ取る気だった、って」

 私は桔平さんの発言に、驚いて目を見開いてしまう。一馬さんがそう噂されていることを、桔平さんはずいぶん前から知ってたようだったから。

「そんな気はなかった」

 一馬さんが笑いながらそれを否定する。

「ただ、義父ちちの会社が大きくなればいい、手足になって働きたいと思ってただけだ。誤解されてしまったけどな。それでも、あざみとの結婚を許してもらえただけでありがたかったから。左遷されてもがんばることができた」

 本当に、純粋な愛だったのだ。
 あざみさんへの、崇高な、深い愛……それが当時の一馬さんの原動力になっていたのだと思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

この裏切りは、君を守るため

島崎 紗都子
恋愛
幼なじみであるファンローゼとコンツェットは、隣国エスツェリアの侵略の手から逃れようと亡命を決意する。「二人で幸せになろう。僕が君を守るから」しかし逃亡中、敵軍に追いつめられ二人は無残にも引き裂かれてしまう。架空ヨーロッパを舞台にした恋と陰謀 ロマンティック冒険活劇!

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

処理中です...