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ずっとふたりで②
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「俺が言ってるのは、会長のこと」
「え?」
「会長への報告で、美桜は上品で真面目で、決して金目当てで近づいたわけじゃありません、って俺が言っといたからな。親同士の昔の恋仲のことは会長の耳にも入ってるから、大歓迎ってわけにもいかないだろうが、結婚は認めてはもらえただろ?」
「あの……それって……」
川井さんが志田ケミカルの会長である桔平さんのお爺様と直接繋がっていたということだ。
私の頭の中でふと、もしかして?と、ひとつの疑念が浮かび上がる。
「美桜は勘がいいから、もうわかったはず」
「川井さんがしていた調査の依頼主は、会長だったんですか?」
「御明算」
川井さんと話すと、これまでもいちいち驚かされることばかりだったけれど。
今日もまたとんでもない爆弾を落とされた気分だ。
「だって、川井さんは志田ケミカルを調べてるって……」
固有名詞である会社名を言ってしまったことに気づいて、思わず辺りをキョロキョロと見てしまう。幸い周りに誰もいなくて助かった。
「ああ。調べてたよ。会長の依頼でね。ターゲットは常務」
「そんな……」
お爺様が、孫の桔平さんの身辺調査を川井さんに依頼したなんて。まさか、と思わずつぶやいてしまった。
ふたりの関係はずっと良好で、桔平さんはかわいがられていたのに。
お爺様がそんな調査を依頼する理由がわからない。
「許してやれよ。爺さんからすれば、かわいい孫が心配でやったことだろ」
「でも、いったい桔平さんのなにを調べたかったんですか?」
別に桔平さんに怪しいところなどない。
どうして調査が必要だと思ったのか、私はすぐにその意図を理解できなかった。
「あの常務はここ数年、ビジネス誌から何度も取材を受けたりして業界では有名人だ。“日本の未来を担う実業家”なんて言われてる。会長としても祖父としても鼻が高いわな。だがその自慢の孫が、もし裏でこっそりとやんちゃな振る舞いをしていたら?」
「……そんなこと」
「ないとは言い切れないだろ? 表向きは好青年で立派でも、裏で悪いやつと繋がってたりするかもしれないし、女遊びも派手かもしれない。あちこちの女を妊娠させてた、なんて最悪なことになる前に、俺に素行を調べさせたんだ。美桜も知ってる通り、調べてもなにも悪いことは出てこなかったがな。ま、これで次期社長は常務で決まりだろ」
聞けば聞くほど、私には遠い世界のことのように思えた。大企業の人ならではの感覚なのだろうか。
待っていたエレベーターがようやくやって来て、川井さんとふたりで乗り込む。
ほかの人に話を聞かれる心配がなくなって、ホッと気が緩んだ。
「え?」
「会長への報告で、美桜は上品で真面目で、決して金目当てで近づいたわけじゃありません、って俺が言っといたからな。親同士の昔の恋仲のことは会長の耳にも入ってるから、大歓迎ってわけにもいかないだろうが、結婚は認めてはもらえただろ?」
「あの……それって……」
川井さんが志田ケミカルの会長である桔平さんのお爺様と直接繋がっていたということだ。
私の頭の中でふと、もしかして?と、ひとつの疑念が浮かび上がる。
「美桜は勘がいいから、もうわかったはず」
「川井さんがしていた調査の依頼主は、会長だったんですか?」
「御明算」
川井さんと話すと、これまでもいちいち驚かされることばかりだったけれど。
今日もまたとんでもない爆弾を落とされた気分だ。
「だって、川井さんは志田ケミカルを調べてるって……」
固有名詞である会社名を言ってしまったことに気づいて、思わず辺りをキョロキョロと見てしまう。幸い周りに誰もいなくて助かった。
「ああ。調べてたよ。会長の依頼でね。ターゲットは常務」
「そんな……」
お爺様が、孫の桔平さんの身辺調査を川井さんに依頼したなんて。まさか、と思わずつぶやいてしまった。
ふたりの関係はずっと良好で、桔平さんはかわいがられていたのに。
お爺様がそんな調査を依頼する理由がわからない。
「許してやれよ。爺さんからすれば、かわいい孫が心配でやったことだろ」
「でも、いったい桔平さんのなにを調べたかったんですか?」
別に桔平さんに怪しいところなどない。
どうして調査が必要だと思ったのか、私はすぐにその意図を理解できなかった。
「あの常務はここ数年、ビジネス誌から何度も取材を受けたりして業界では有名人だ。“日本の未来を担う実業家”なんて言われてる。会長としても祖父としても鼻が高いわな。だがその自慢の孫が、もし裏でこっそりとやんちゃな振る舞いをしていたら?」
「……そんなこと」
「ないとは言い切れないだろ? 表向きは好青年で立派でも、裏で悪いやつと繋がってたりするかもしれないし、女遊びも派手かもしれない。あちこちの女を妊娠させてた、なんて最悪なことになる前に、俺に素行を調べさせたんだ。美桜も知ってる通り、調べてもなにも悪いことは出てこなかったがな。ま、これで次期社長は常務で決まりだろ」
聞けば聞くほど、私には遠い世界のことのように思えた。大企業の人ならではの感覚なのだろうか。
待っていたエレベーターがようやくやって来て、川井さんとふたりで乗り込む。
ほかの人に話を聞かれる心配がなくなって、ホッと気が緩んだ。
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