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06 エクアの気付き
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打たれた側の顔は暫くは感覚が無かった。
が、少しずつ痛くなっていく…
そう感じたと同時に痛みは激痛となる。
それでもエクアの心の痛みには及ばない。
(酷い!
私何にも悪くないのに!
お母さまは娘の私よりお兄さまが大切なんだ!
私を邪魔にして、2人っきりになる為に私を眠らせて来たんだ!
お兄さまも私の婚約者なのにお母さまが好きなんだわ!)
鬼の形相、
暴力、
突き放す言葉――
余りにももう誤魔化しようのない事実を突きつけられて。
『お前なんかいつだって消せるんだから!』
――あぁ。
あれ。
あの赤い立派な装丁の手書きの本。
アレは日記だ。
『エクア』と。
何度も私の名前が出てくる。
なのに自分の事と気付けなかった。
何故ならその度々乱れ度々スペルを間違える文字列は
『エクア』への憎しみを連ね
悲惨な『エクア』の最期をワクワクとした調子で繰り返しているから――
母を求める心が気付くのを阻止して来た。
だけどこうなってはもう認めざるを得ない。
アレは母の字だ。
母の日記だ。
慕い追いかけた母。
しかし母は私を憎み綿密に殺す計画を立てることでようやっと我慢していたのだ。
私の存在を。
ストン――
全てが腑に落ちた。
――母の憎しみの籠った視線、
冷たい無視…
『私は子供が嫌いなのよ』
何度も言われたあの言葉も勝手に解釈していた。
母が嫌いなのは自分の子供ではなく他の世間一般の子供の事だと。
自分は例外なはずだと。
母は『お前が嫌いだ』と言っていたのだ。
何度も
何度も
繰り返さずにいられないほど私を嫌いだったのだ…
フッと気付く。
母は私を国境沿いにあるダエモン精神病院に入れ、そこで上手く殺してもらうと日記に書いていて――
先日手紙を送ったと書いてあった。
母は私を殺す計画を立てて気持ちを慰めているわけではなく本気なのだ。
私を殺す計画は既に着々と進んでいる…
心が幼児退行しているからこそ
何のストッパーもなく頭は真実を追い求める。
その為に心は幼児のまま頭だけが13才に戻る。
次々に整理されていく頭の中。
それに反して心は乱れ悲しむ。
ヒックヒックとすすり泣きが止まらない。
――多分それが良かった。
いつもと行動が違うエクアを警戒して様子を見に来させられたメイドはドアの外に漏れ聞こえる幼児の様な泣き声に部屋に入ることなく離れて行った。
そしてお嬢様はメソメソ泣くだけで何も出来やしないとニヤケ顔で報告した。
だがエクアはすすり泣きながら大量の手紙を書き上げた。
そして手紙を学校のノートに挟んでカバンに詰めた。
翌日は月曜日。
エクアは朝の支度の手伝いに部屋に来たメイド2人に尋ねる。
「朝食は無いの?」
若いメイドは当たり前の様に
「はい。
ペクスさんが奥様の邪魔をした罰として朝食抜きだと」
「伯爵令嬢である私の罰をメイドが決めるの?」
「‥え?‥はい。
いつもそう‥」
「あなた達もそれでいいと思っているのね?」
エクアに『自分の意見』を聞かれ困惑し眉を吊り上げるメイド達。
「…だってずっとそうだったじゃないですか?
ずっとペクスさんが言う通り‥」
「そうですよ!
急に何なんですか?
ペクスさんは奥様に言われた通り‥」
「そう。
学校へ行くわ。
お弁当は?」
「ありません!
…ペクスさんが要らないと‥」
「私昨日は昼食も夕食も食べてないこと、当然知っているのよね?」
「「‥だから何ですか?
‥ペクスさんが‥」」
「行くわ。
遅刻しない様にね。
馬車を出して」
エクアは酷い空腹状態で馬車に揺られて行く。
数食抜かれているという事は――
(やはり一刻の猶予もない)
思い起こせば母は。
私に薬物を摂らせたい時は数食絶食させる。
お茶会前がいい例だ。
金曜の夜から食事を抜かれる。
だから飢餓状態の日曜15時のお茶会でお茶やお菓子の味が妙であっても食べてしまっていた。
もう私に2人の関係はバレた。
私を眠らせる必要は無くなった。
それなのに食事を抜くなら次に摂らせたい薬物は――
(私をダエモン精神病院に入れる為に正気を失わせる薬物!)
間違いない…
地下の蔵書庫の先に見つけた母の部屋の奥に位置する隠し部屋…
大量の草や液体の入った瓶、すり鉢…秤…
あの小部屋で母は薬を調合し
私に摂らせて来た――
体がガクガク震える。
途中の騎士団詰め所に寄ることも考えたが――
(馭者も信用出来ない。
いつもと違う行動を取れば疑われて阻止されてしまう。
今一番信用出来るのは学園の先生方…
兎に角いつも通りに振る舞い学園に逃げ込まなければ!)
「帰りは迎えに来るの?」
「いえ。
歩いてお帰りください。
ペクスさんからそう言われてます」
「…分かったわ」
エクアはいつも通り振る舞い馬車を帰す。
そして教室に向かうことなく職員室を目指す。
心が幼児、頭は13才だからこその考察と判断と行動。
それはエクアの精一杯で。
エクアの最強状態だ。
が、少しずつ痛くなっていく…
そう感じたと同時に痛みは激痛となる。
それでもエクアの心の痛みには及ばない。
(酷い!
私何にも悪くないのに!
お母さまは娘の私よりお兄さまが大切なんだ!
私を邪魔にして、2人っきりになる為に私を眠らせて来たんだ!
お兄さまも私の婚約者なのにお母さまが好きなんだわ!)
鬼の形相、
暴力、
突き放す言葉――
余りにももう誤魔化しようのない事実を突きつけられて。
『お前なんかいつだって消せるんだから!』
――あぁ。
あれ。
あの赤い立派な装丁の手書きの本。
アレは日記だ。
『エクア』と。
何度も私の名前が出てくる。
なのに自分の事と気付けなかった。
何故ならその度々乱れ度々スペルを間違える文字列は
『エクア』への憎しみを連ね
悲惨な『エクア』の最期をワクワクとした調子で繰り返しているから――
母を求める心が気付くのを阻止して来た。
だけどこうなってはもう認めざるを得ない。
アレは母の字だ。
母の日記だ。
慕い追いかけた母。
しかし母は私を憎み綿密に殺す計画を立てることでようやっと我慢していたのだ。
私の存在を。
ストン――
全てが腑に落ちた。
――母の憎しみの籠った視線、
冷たい無視…
『私は子供が嫌いなのよ』
何度も言われたあの言葉も勝手に解釈していた。
母が嫌いなのは自分の子供ではなく他の世間一般の子供の事だと。
自分は例外なはずだと。
母は『お前が嫌いだ』と言っていたのだ。
何度も
何度も
繰り返さずにいられないほど私を嫌いだったのだ…
フッと気付く。
母は私を国境沿いにあるダエモン精神病院に入れ、そこで上手く殺してもらうと日記に書いていて――
先日手紙を送ったと書いてあった。
母は私を殺す計画を立てて気持ちを慰めているわけではなく本気なのだ。
私を殺す計画は既に着々と進んでいる…
心が幼児退行しているからこそ
何のストッパーもなく頭は真実を追い求める。
その為に心は幼児のまま頭だけが13才に戻る。
次々に整理されていく頭の中。
それに反して心は乱れ悲しむ。
ヒックヒックとすすり泣きが止まらない。
――多分それが良かった。
いつもと行動が違うエクアを警戒して様子を見に来させられたメイドはドアの外に漏れ聞こえる幼児の様な泣き声に部屋に入ることなく離れて行った。
そしてお嬢様はメソメソ泣くだけで何も出来やしないとニヤケ顔で報告した。
だがエクアはすすり泣きながら大量の手紙を書き上げた。
そして手紙を学校のノートに挟んでカバンに詰めた。
翌日は月曜日。
エクアは朝の支度の手伝いに部屋に来たメイド2人に尋ねる。
「朝食は無いの?」
若いメイドは当たり前の様に
「はい。
ペクスさんが奥様の邪魔をした罰として朝食抜きだと」
「伯爵令嬢である私の罰をメイドが決めるの?」
「‥え?‥はい。
いつもそう‥」
「あなた達もそれでいいと思っているのね?」
エクアに『自分の意見』を聞かれ困惑し眉を吊り上げるメイド達。
「…だってずっとそうだったじゃないですか?
ずっとペクスさんが言う通り‥」
「そうですよ!
急に何なんですか?
ペクスさんは奥様に言われた通り‥」
「そう。
学校へ行くわ。
お弁当は?」
「ありません!
…ペクスさんが要らないと‥」
「私昨日は昼食も夕食も食べてないこと、当然知っているのよね?」
「「‥だから何ですか?
‥ペクスさんが‥」」
「行くわ。
遅刻しない様にね。
馬車を出して」
エクアは酷い空腹状態で馬車に揺られて行く。
数食抜かれているという事は――
(やはり一刻の猶予もない)
思い起こせば母は。
私に薬物を摂らせたい時は数食絶食させる。
お茶会前がいい例だ。
金曜の夜から食事を抜かれる。
だから飢餓状態の日曜15時のお茶会でお茶やお菓子の味が妙であっても食べてしまっていた。
もう私に2人の関係はバレた。
私を眠らせる必要は無くなった。
それなのに食事を抜くなら次に摂らせたい薬物は――
(私をダエモン精神病院に入れる為に正気を失わせる薬物!)
間違いない…
地下の蔵書庫の先に見つけた母の部屋の奥に位置する隠し部屋…
大量の草や液体の入った瓶、すり鉢…秤…
あの小部屋で母は薬を調合し
私に摂らせて来た――
体がガクガク震える。
途中の騎士団詰め所に寄ることも考えたが――
(馭者も信用出来ない。
いつもと違う行動を取れば疑われて阻止されてしまう。
今一番信用出来るのは学園の先生方…
兎に角いつも通りに振る舞い学園に逃げ込まなければ!)
「帰りは迎えに来るの?」
「いえ。
歩いてお帰りください。
ペクスさんからそう言われてます」
「…分かったわ」
エクアはいつも通り振る舞い馬車を帰す。
そして教室に向かうことなく職員室を目指す。
心が幼児、頭は13才だからこその考察と判断と行動。
それはエクアの精一杯で。
エクアの最強状態だ。
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