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第三十八話 恋の祭りは鬼火の如し
タンデムの過去
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タンデムは厳しくも優しい父親と、母性のある母親を尊敬していた。
父親の仕事を手伝う傍ら、母親からカタナなどの剣技を教わってもいた。母親はコウヨウ地方にルーツがあったらしい。
しかし……その日常は、いきなり崩れ去った。タンデムが十歳の時であった。
町に放浪の女がやって来て、父親に一夜の宿を申し出た。牧場主であり家も割と広いので心優しい父と母は二つ返事で招き入れた。
タンデムは子供ながらに「お胸の大きな女の人だなぁ……」と考えていたものだ。
白い髪の、美しい女。赤い目をしている。その額に、真っ黒な一本角を見た。だが幼かった彼はそれ以上何も考えず、彼女を迎え入れたのだった。
その日の深夜、タンデムは母親の悲鳴で目が覚めた。驚いてベッドから飛び起きて、練習用の木刀を掴み、転げ落ちるように階段を駆け降り居間へ行った。
そこで……血まみれのカタナを下げた母親と目があった。テーブルはひっくり返されて、床にはコップや食器が散乱していた。
そして、なんと父は、首から血を流し倒れていた。タンデムは大声をあげて接近し、必死で父親の肩を譲ったが、彼が返事をすることは二度と無かった。
タンデムは震えながら母親の方を見る。あんなに強かった母親の姿が嘘のように、青ざめた顔でヨロヨロと後ずさった。
「ち、違うの……こ、これは……」
「母さん……母さん! な、なんで……か、母さんが、父さんを……⁉︎」
「違うの! あ、あの女が……!」
その言葉にタンデムはハッとして、慌てて周囲を見渡した。家中を探し回り、窓から身を乗り出して、夜の闇に目を凝らした。
だが、その女はどこにもいなかった。
タンデムはその女のことを、今まで忘れたことはなかった。
愛する夫の命を、この手で奪ったと言う事実。母親は精神的に錯乱し、数日も経たないうちに自害してしまった。
親が残した金などすぐに無くなり、タンデムは親の葬儀を終え、牧場の全てを売却した。
そして手に入れたおかげで極東の地、コウヨウ地方へ向かった。
無論観光でも、悟りを開くためでもない。……剣豪の弟子になるためだ。強くなり、復讐するために。
母親の師匠は未だ老いていたが、まだ存命だった。タンデムから母の最期を聞き、彼に同情し身柄を預かってくれた。
最初は「復讐など父母が望んでいると思うか」と諭そうとしたが、彼の覚悟は止まらなかった。
「……儂も老いた。お前さんが何をしようが、今更止められまい。ならば鍛えてやろう。復讐のためではなく、お前さんがそれに飲まれぬ強さを持つために……」
父親の仕事を手伝う傍ら、母親からカタナなどの剣技を教わってもいた。母親はコウヨウ地方にルーツがあったらしい。
しかし……その日常は、いきなり崩れ去った。タンデムが十歳の時であった。
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白い髪の、美しい女。赤い目をしている。その額に、真っ黒な一本角を見た。だが幼かった彼はそれ以上何も考えず、彼女を迎え入れたのだった。
その日の深夜、タンデムは母親の悲鳴で目が覚めた。驚いてベッドから飛び起きて、練習用の木刀を掴み、転げ落ちるように階段を駆け降り居間へ行った。
そこで……血まみれのカタナを下げた母親と目があった。テーブルはひっくり返されて、床にはコップや食器が散乱していた。
そして、なんと父は、首から血を流し倒れていた。タンデムは大声をあげて接近し、必死で父親の肩を譲ったが、彼が返事をすることは二度と無かった。
タンデムは震えながら母親の方を見る。あんなに強かった母親の姿が嘘のように、青ざめた顔でヨロヨロと後ずさった。
「ち、違うの……こ、これは……」
「母さん……母さん! な、なんで……か、母さんが、父さんを……⁉︎」
「違うの! あ、あの女が……!」
その言葉にタンデムはハッとして、慌てて周囲を見渡した。家中を探し回り、窓から身を乗り出して、夜の闇に目を凝らした。
だが、その女はどこにもいなかった。
タンデムはその女のことを、今まで忘れたことはなかった。
愛する夫の命を、この手で奪ったと言う事実。母親は精神的に錯乱し、数日も経たないうちに自害してしまった。
親が残した金などすぐに無くなり、タンデムは親の葬儀を終え、牧場の全てを売却した。
そして手に入れたおかげで極東の地、コウヨウ地方へ向かった。
無論観光でも、悟りを開くためでもない。……剣豪の弟子になるためだ。強くなり、復讐するために。
母親の師匠は未だ老いていたが、まだ存命だった。タンデムから母の最期を聞き、彼に同情し身柄を預かってくれた。
最初は「復讐など父母が望んでいると思うか」と諭そうとしたが、彼の覚悟は止まらなかった。
「……儂も老いた。お前さんが何をしようが、今更止められまい。ならば鍛えてやろう。復讐のためではなく、お前さんがそれに飲まれぬ強さを持つために……」
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