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第四十話 クリスタル・ピックアックス
見送り
しおりを挟む大雪原の大都市、マリーオウ。コナキ地方では珍しく、カラッと晴れた青空と眩しい太陽があった。
障壁の上に積もった雪を、兵士たちが慎重に掃除している。障壁は高いため、固まった雪を落としても下に誰かいたら大怪我してしまうからだ。
そんな日常の光景を横目に宿屋『トラクティール』の前で、ニンフォが立っていた。
その向かいにいるのは、タンデムとメルルちゃんだ。タンデムの髭面には新たな傷ができていた。メルルも洋服を新調している。
……メルルは相変わらずフードをかぶっていた。しかし赤っぽい肌もピンクのおさげ髪も小さなツノも見えるくらいには、顔を出していた。
「えへへ……私も、自分にちょっと誇りを持てるようになったんですかね……てへっ」
困ったように笑う彼女の様子が、心情の変化を物語っていた。
彼らの後ろには、結構大きなほろ馬車が止まっていた。荷台には細々とした荷物がたくさん積んである。
「市長誘拐の報酬で、こんな良い馬車を……本当に、我々が全て譲り受けて良かったのか」
「そ、そうですよ! マリーオウ政府から貰った一万ダラー、みなさんは半分しか貰ってないのに……」
「半分『も』でしょ。そんだけ貰えば十分よ」
市長を無事に連れ帰ったナガレたちは、市役所に連れて行かれ、役員やら議員やら市の従業員やら富裕層まで、さまざまな人物から手厚い歓迎を受けた。
ナガレたちのために舞踏会を開くだの、マリーオウ名誉市民にしたいだの、今すぐ一人ずつ全員の家と地位を作るだの……とにかくみんな喜んでくれた。
しかしナガレたちは苦笑いしながらそれを拒否して、富裕層や貴族たちから募った(それでも一億ダラーとは行かなかったが)、三万五千ダラーを報酬として受け取った。チームとはいえかなりの大金だ。
そのうちの五千ダラーは治療費や武器鎧の整備、その他諸々で使用された。
「良いのよ、ナガレさんたちもそう言ってるんだもの。一人につき二千五百ダラーくらい、儲け儲け♡」
「そんなの不平等ですよ! そ、そっちは山分けなのに。私たち二人で一万五千ダラーなんて……」
「同感だ。せめてもっと受け取ってはくれまいか……」
「良いのよ。その代わりタンデムさん。メルルちゃんを酷い目に合わせたら容赦しないわよ。そのためのほろ馬車なんだもの」
ニンフォはビシッと人差し指を突きつけた。たじろぐタンデムとオドオドしているメルルちゃん。
「もしメルルちゃんを泣かせたら地獄の果てまで追いかけて、サキュバス百体送り込んで廃人にしてやるからね!」
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