崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第一話 最悪のギルド!?

救世主

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(な、なんだ⁉︎)
 謎の人物は、服装からマスクまで黒と赤の目立たない色合いだ。シルエットからしておそらく人間だが、どうしてこんなところに?
 スカルクリーチャーはナガレに気を取られ、謎の人物に全く気づかない。彼の右手が太陽の光を反射してキラリと光る……手には短剣のダガーが握られていた!
(アイツ、あんな短剣でどうする気だよ! スカルクリーチャーの骨の鎧に効くわけがない……)
 体に纏っている骨は下手な鉄製防具よりも硬い。ナガレの長棒で力任せに叩くならまだしも、鋭いが威力の弱いダガーではとても歯が立たないだろう。
 タッタッタッタッタッ……バシュッ!
 しかし男はダガーを逆手に構えなおし、今にも拳を振り下ろしそうなスカルクリーチャーの背後へ飛び掛かる。そして背中の突起を足がかりに、天高く飛び上がった!
「カッ……⁉︎」
 自分の前に影が出てきて、やっと異変を感じたスカルクリーチャーが降り向く……が、遅い!
「はぁっ!」
 男がダガーを振り上げる。すると刃が赤黒いオーラを纏い、不吉に光り輝いた。そのまま首筋を一閃する!

 ザシュッッッ!
 その瞬間、剣の軌跡を描いたオーラが『飛ぶ斬撃』となり、大きな首を跳ね飛ばした!

「カッ……⁉︎」
 大きな斬撃に耐えられず、一発でスカルクリーチャーの野太い首がカチ割れ空を飛んだ。くるくる宙を舞い、ナガレのすぐ近くに落ちてくる。
 ドサッ……。
 それと同時に胴体も動かなくなり、膝から崩れ落ちた。骨が体から取れてバラバラになり、地面を転がっていく。
 
(な……なんだと⁉︎ あのスカルクリーチャーを一発で倒した……⁉︎ )
 自分の目が信じられないナガレ。寝そべったまま動けない彼に、黒ずくめの戦士は歩いて近づいてきた。
(ぐ……お前は何なんだ⁉︎ くそっ、体が動かない!)
 敵という可能性も捨てきれず、距離を取ろうともがいても体が動かない。もう精も根も尽き果てた状態では逃走不可能だ。
「こ……この人に手は出さないで! 彼は私を助けてくれたのよ!」
 そんなナガレを守るように少女が立ち塞がった。恐怖でぷるぷる震えながら、両手を広げて行く手を塞ぐ。
「…………」
 黒ずくめの男はしばらく二人を観察して……ダガーを鞘にしまった。そして少女に清潔そうな布と包帯を差し出す。
「これを。馬の手当をしてあげるんだ」
「あ……。あ、ありがとうございます!」
 少女はそれを受け取って、傷ついた馬のところへ駆けていく。
「ぐ……」
「これを飲め。回復薬だ」
 男はナガレのそばに跪き、どこからかビンを取り出した。コルクの蓋を開けて、中の液体をナガレの口に流し込む……に、苦い!
「ゴフッ、ゴボッ⁉︎ ぐ……げぇっほ!」
 思い切りむせたナガレは飛び起きて、ゲホゲホと咳き込んだ。しかし体に自由が戻ってくる。回復薬なのは本当だったようだ。
「いってててて……お、少しだけ元気出てきたかも」 
 立ち上がるナガレ。黒いマスクの男はフードを外して、黙ってこちらを見つめている。
 ボディアーマーをつけた、まるで忍者のような黒ずくめの姿だ。真っ赤な短髪に鉢金を巻いている、おそらくナガレとほぼ同い年であろう青年……しかしその目はこちらの心を見通すかのように鋭い。
「あ、ありがとう」
 ナガレはとりあえずお礼を言った。彼がいなければ本当に死んでいたかもしれない。
「ありがとうございます! 私とこの人を助けてくれて……」
 少女も少し震えながらお辞儀した。
「オレはナガレ。駆け出しペーペーのDランク冒険者、ナガレ・ウエストだ! 君、めっちゃ強いんだな! 悔しいけど……オレは何も出来なかったよ」
 右手を出すナガレ。青年は少し躊躇った様子を見せたが、結局その手を握ってくれた。
「……ジョーだ。ジョー・アックス。ただの旅人だ」
 なんだか態度がそっけない。急いでいるのだろうか? それに旅人というのも絶対に嘘だ……あんな動きをするくらいだから、何回も修羅場を経験しているに違いない。
「そっか……なぁ、さっきの技について教えてくれ! めっちゃカッコよかったぞ!」
「……すまないが急ぎの用事がある。タイガスの街まで行かなければならないんだ」
「た、タイガスに? そっか……」
 ナガレはガッカリして肩を落とした。タイガスというのはここから歩いて丸三日ほど(駅馬車なら大体一日)かかる炭鉱の街だ。バッファローの街よりずっと都会で、たくさんの設備や娯楽施設がある。そこそこの長旅になりそうだ……邪魔するわけにはいかない。
「あの、ジョーだっけ? その用事が終わったら、ぜひぜひオレの住んでるバッファローの街に来ないか? オレ、そこの冒険者ギルドに入ったんだ」
 ジョーはナガレの話を黙って聞いている。なんだか「とっとと終わらせろ!」と言われている気分だ。
「えと……スカルクリーチャーを倒してくれたお礼もしたいし、忙しくない時で良いからゼッタイ来てくれよな! 交通費も全部出すし、メシも酒も奢るよ!」
「……考えておこう」
 そういうとジョーは身を翻し、ナガレに背中を向ける。
「約束だぞーっ! ジョーには助けてもらったんだ! 恩返しさせてくれなきゃ恨むぞー!」
 無茶苦茶なことを言いながら手を振るナガレ。……するとジョーが振り返った。
「ナガレ」
「え、何?」

「……あの技は敵の背中に繰り出して、初めて効果を発揮する」
「へ?」
「……技を決められたのは、お前が諦めずに奴の注意を逸らしてくれたからだ」
 そう言い残し、今度こそジョーは去っていった。
「……ッ! あ、ありがとな! 約束だぞ、絶対来てくれよ~っ!」
 ナガレはぴょんぴょん跳ねながら見送ったが……。
「あ、ありゃ?」
 ドサッ……。
 突然体から力が抜けた。回復薬を飲んだから、しんどいわけではない。むしろなんだか心地良いような……。
(あれ……もしかして、眠くなってる⁉︎)
 疲労に合わせて緊張の糸が溶けたからか、猛烈な眠気が襲ってきた。
(も、もう耐えられねえ……ね、寝よ……)
 そのまま目を閉じると、意識がすぐにブラックアウトした。
「えぇっ⁉︎ し、しっかりしてください! う~ん……ブラウン、背中に乗せてあげられないかな?」
「ヒヒーン!」
 腹部に包帯を巻いた馬が、答えるかのようにいななく。少女は申し訳なさそうにニコッと微笑みを返した。
「ごめんね、よろしくブラウン!」
「ブルルルル!」


 その頃、荒野を歩くジョーはナガレのことを考えていた。
(Dランクの新米冒険者なら、スカルクリーチャーの攻撃一発でノックアウトされてもおかしくはない。あの猛攻を諦めることなく耐えたとは大した根性だ……いや、精神論では限界がある。もしや、奴の防御の才能は……)
 そこまで考えて、一人で首を振る。
「いや……俺はもう冒険者ではない。彼はナガレとか言ったか。奴に見どころがあっても、俺には関係のないことだ」
 自分に言い聞かせるように呟く。荒野の突風の音に隠れて、それ以上は誰も聞けなかった。
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