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第一話 最悪のギルド!?
特訓開始!
しおりを挟む~☆~☆~☆~☆~☆~
さて、家にてベッドに寝転がり本をめくるナガレ。ライトアーマーは脱いでいるが、革製のインナーは着たまんまだ。
「ふーむ……基礎は習った通りだから、技を一つ覚えてみるか! えっとなになに……『長い棒を巧みに使い、相手の攻撃を虚空に逸らす、これぞ受け流し。剣斧盾棒、矢雨や魔法、強大なる獣の重撃をも流せば、いかなる相手をも怯ませる』か……」
最初のページに書いてあった内容を読み上げてみる。どうやら長棒を使った防御手段が書かれているらしい……。
「むっ、『受け流しにおいて、反発する力に頼らず、相手の勢いを利用して流すべし。力不足を言い訳に技術を磨かぬ者、かの技を受け継ぐに精神が足らず』って。技術で受け流すってどうすんだよ……」
いまだに内容がよく分からないが、次のページはもう受け流し応用まで行ってしまっている。練習方法を教えてはくれないようだ。
(どうするか……技術は練習をしないと身につかない。でもこの全てをマスターしようと思えば実践が必要だな)
パラパラとページをめくると、ある場面がナガレの目に止まった。小さな挿絵に、おそらくスカルクリーチャーと思われる巨大なモンスターが書かれていたからだ。
(ん、どれどれ……)
内容は受け流しについて。『強大な獣、力比べを挑むは無謀なり。圧倒的な剛力に捻り潰され、あるいは要らぬ力を使い負担を増やす。さりとて敵を知り技巧を磨かば、猛攻を風の如く流し小石の如く投げ飛ばすこと可能なる』……なんだか信じがたい。
「……ようし、まずはコレだ!」
しかしナガレの心は燃えた。もっと強くなるには、あのスカルクリーチャーのような強敵とも渡り合える力が必要になる。そのためにはまず基礎の対人戦から鍛える必要があるだろう。ナガレはベッドから飛び起きて、そのままマルチスタッフを引っ掴み家を飛び出した。
「……あれ? ナガレさん、どこに行くんですか?」
途中でアリッサに何やら話しかけられたが、ナガレにはよく聞こえなかった。目指すは街の近く、あの岩山の山頂!
~☆~☆~☆~☆~☆~
オレンジ色の夕陽が、スラガン地方の荒野を照らす……。
「ぐんぬぬ……でぇやぁぁぁぁっ!」
ブンッ! ブンッ!
人気の無い山頂広場にて、マルチスタッフを振り回すナガレ。鎧姿のあちこちに、砂を入れたズダ袋を巻きつけてウエイトにしている。棒の先端には重そうな荒縄が巻かれてあった。
ブンッ……ドサッ!
「ぐへっ!」
体が重く、それを支える足の筋肉に凄まじい負荷がかかっている。武器すら重くしているのに軽快なステップなどできず、くるくる回って無様に転んでしまった。
「いっててて……」
歯を食いしばり力いっぱい踏ん張って体を起こすナガレ。すると誰かが長い階段を登って広場にやってきた。
「あ、やっぱり……ナガレさん!」
「ん? 誰……ぐぎゃっ!」
突然気が逸れたことで体がふらつき、再び地面に倒れ伏してしまう。
「はぁはぁ……ご、ごめんなさい! 邪魔するつもりはなかったんですけど、なんだか気になっちゃって……」
そこにいたのはアリッサだ。膝に手をつきはぁはぁと荒い息を吐いている。そりゃあこんな一般町娘に山登りの階段は辛いだろう。
「ふんぬっ! アリッサ、どうしてここに?」
「ナガレさんが……大荷物で……ここを……登っていくのを……うぷっ」
「え?」
「急に走ったから……ゔっ……おえぇぇぇぇぇっ!」
「ぎゃあぁぁぁぁ!」
ごきゅごきゅ……。
「どう、落ち着いた?」
「あ、ありがとうございます……」
二人でベンチに腰掛ける。アリッサはナガレが差し出した新しい水を一本飲み干してやっと一息ついた。
「敬語じゃなくっていいぞ。オレとアリッサは同い年だし、この街じゃむしろ後輩だよ」
「そ、そうですか? では……ありがとね、水もらっちゃって」
「良いってことさ!」
「えっと、ナガレくんはここで何してるの? こんなとこ、街のみんなは殆ど来ないのに」
ここでアリッサは、かねてからの疑問を投げかけた。ナガレがここに来た理由だ。
「ん……実はギルドマスターからすごい本を貰ってな。棒術の技書なんだ。だから今日から特訓開始ってワケ。ところでここは何なんだ?」
ナガレの方も、こんなところに公園……と言っていいのか分からない、ただの広場があるのは不思議だった。
「ここは今よりもず~っと昔、まだ国同士が争ってた頃に整備された見張り台らしいよ。でもロードバッツ共和国が大陸を統一したから必要なくなって、ただの広場になっちゃったんだって。景色はいいけどここまで登ってくるのは大変だから、誰も来なくなっちゃった」
「そうなのか……」
ナガレは座り方を変えて、オレンジ色の夕陽を見つめる。一日の終わりを告げようと、太陽が眩しいくらいに輝いていた。
「いい景色だな。オレ、明日もここで特訓しよう。いや……今日みっちり追い込むぞ!」
再びナガレはマルチスタッフを掴み体を起こした。特大サイズのズダ袋を背負って素振りを始める。
「ふんっ!」
ブンッ!
「うぎゃあっ!」
……一振りでくるくる回って転んだ。まだ体力が回復していないのだろう。
「ぬぐぐ……まだまだ!」
いつしか一人で特訓を続けるナガレ。退屈になったアリッサは、ベンチに置いてあった例の本を読んでみた。
(ん、これは……よく分かんないや。でも、一人じゃ実践できない技ばっかりだね……そうだ!)
何か思いついたようで、アリッサは「おーい!」とナガレに駆け寄った。
「ん……わぎゃ!」
ドサァッ!
「……ご、ごめんね。えっと、あたしも手伝おうかなーって思っちゃって」
「手伝う……もしかしてアリッサって、戦えるの⁉︎」
パッと表情が明るくなったナガレ。
「いや、戦うなんて無理だよ。ただのロングソードですら重くて持てなかったんだよ?」
「そっか……」
「でもさ、こんな棒切れ程度なら……」
そう言うとアリッサは、近くに落ちてあった木の棒を拾い上げた。そこそこの長さがあり、当たれば結構痛そうなもの。それをアリッサは適当に構えていた。
「痛いのは嫌だけど……これならナガレくんの役に立てるんじゃないかな。受け流しの練習は、一人じゃできないでしょ?」
「……アリッサ、それ本気⁉︎ 手伝ってくれるのか⁉︎」
思わずナガレは痛みも忘れて駆け寄り、アリッサの手をギュッと握る。そして凄まじい勢いでブンブン振り始めた!
「やったーっ! アリッサ、最高だぜ!」
「あばばばば! て、手首が痛い!」
「ごめんごめん、でも嬉しくって。よっしゃ、どっからでもかかってこい!」
アリッサから少しだけ距離を取り、マルチスタッフを構えるナガレ……重りを背負ったままだが。
「……ぷるぷるしてますけど、大丈夫?」
「大丈夫だ! 受け流すだけで反撃はしないから、安心して。鎧着てるし、思いっきり殴っていいよ!」
「いやそこじゃなくて……わ、わかった。なら遠慮なく行くよ!」
タッタッタッタッタッ……。
アリッサは棒きれを構えて走る。そしてナガレめがけて振り上げた!
「えぇーい!」
(よし! 敵の攻撃を受け止めるんじゃなく、棒を削らせるように後ろへ流す!)
本を読み込んだ分、内容は頭に入っている。……しかし体がついて来れるとは言ってない。
(あ、あれ? 武器が……重く、て……)
「やーっ!」
バシィッ……!
「んがぁ~~っ!」
……なんの防備もないナガレの顔面に、アリッサの容赦無いフルスイングが激突した。
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