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第二話 目指せスキルアップ!
おかえり、凡才ナガレ
しおりを挟む~☆~☆~☆~☆~☆~
「……くん、ナガレ君!」
「……はっ⁉︎」
どれだけの時間が経ったのだろうか、ようやくナガレは我に帰った。あの衝撃発言を聞いてからの記憶がない。
「ここはどこ⁉︎ わ、ワタシは……」
「落ち着けって! ここはバッファローへ帰る馬車の中だ。俺がナガレくんをおぶって馬車に座らせた」
「は、はあはあ……タネツさん、それにヒズマさんも」
ようやく落ち着いて周囲を見渡す。そこは定期的にカラカラ揺れる馬車の中で、タネツとヒズマが心配そうにこちらを見ていた。
「良かった、落ち着いてくれたみたいね~。ナガレ君、待ち合わせの場所にいたんだけど、顔面蒼白のまま呆然と立ち尽くしてたのよ~! ホント心臓止まるかと思ったわ~」
「全くだ! オレたちもギャンブルで負け越してガックリしてたんだがよお、そん時に見たお前の顔、この世の終わりみたいな絶望ツラしてやがったぜ」
「絶望……ってことは夢じゃないのか。ああ……」
タネツとヒズマの証言で、この状況が現実であることを認めるしかなくなった。現実逃避はもうできない……。ナガレは頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。
「お、おいおい、どうしたんでえ? 来るまではあんなに元気だったじゃねえか」
悪人面に似合わぬ心配そうな表情で、ナガレの顔を遠慮がちに覗くタネツ。
「何かあったの~? 誰かに話せばきっと楽になるわ~。絶対に笑ったりしないから、話してみてくれない~?」
ヒズマまで……二人の気遣いを受け、ついにナガレの涙をせきとめていた理性が決壊した。
「うく……ぐぅあぁぁぁぁぁ……!」
……要するに、黙り込んで下向いたままボロボロ泣き出してしまった。
あの後悲しさが勝って、ナガレはなかなか原因を言い出さなかった。先輩二人の心配は嘘ではなく、ナガレが言い出すまで辛抱強く待ってくれた。
「そんなことがあったの……よしよし、辛かったわよね~。特訓も始めたっていうのに、残念ね、うん……」
ヒズマが優しくナガレの頭を撫でる。ヒズマはアラサーでナガレは二十歳、しかも血のつながりも大した関係も無いのだが、今の彼らには世間体など気にする余裕はない。
「他の奴なら笑い飛ばしてただろうが……お前さんは特訓を始めたばっかりなのになぁ。俺だってなんかの間違いならどれだけいいか」
「お、オレ……もうどうすればいいか。オレ、強い冒険者に憧れてこの道を選んだんですよ……こんなのって、ひどいじゃないですか」
「ああ、全くだ……もうすぐ街に着く。泣き疲れただろ、今日はもう家で寝ちまいな。あとのことはそれから考えりゃあ良い」
「バッファローの街に到着しました! またのご利用をお待ちしております!」
「金はもう払ってあるぜ。ナガレ……ほら、行っていいぞ」
「あ、ありがどうございまずっ……」
見慣れた街に帰ってくると、ナガレはフラフラしながら家を目指す。
「あ、ナガレくーん! こっちこっち……」
店先で棚の整理をしていたアリッサが、ナガレに気づいて手を振った。だが感情がぐっちゃぐちゃのナガレはその様子に気づかない。
「あれ……どうしちゃったんだろ?」
何も知らないアリッサは、キョトンとしながら後ろ姿を見送るしかなかった……。
「なあヒズマ、アイツどう思う?」
「うん……なんだか可哀想になってきたわ~」
遠巻きにそれを見つめていたタネツとヒズマ。二人並んでふらついているナガレの様子を見つめている。
「俺たちも何か手伝ってやりてえと思ったんだがよ。なんだか……」
「こんな気持ちになったのは久しぶり……でしょ~?」
ナガレがクエストをこなしつつ特訓していることは二人とも知っている。だからこそあの涙を見て、長いこと忘れていた何かが熱を帯び始めたようだ。
「けっ、お見通しだったか。俺らはこの環境にもう慣れて腐っちまったが……アイツは泣くほど本気で成り上がるつもりだったんだ。実力不足で泣き寝入りなんて、見ていて忍びねえ」
「よく言ったわ、タネツ……そして、私も同じ気持ちよ。他人だと思って見過ごすこともできるのに、不思議と彼のことは放っておけないのよね。ナガレ君まで腐ることはないわ、私たちのように……」
ナガレの必死さを目の当たりにした先輩二人。とっくの昔に夢も希望も諦めた心に、小さな火がついたのには、まだ気が付かなかった。
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