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第四話 ジョーの過去?
マスターの対談
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~☆~☆~☆~☆~☆~
ある昼下がりの日。レンとアルクルはタイガスの街を訪れていた。今日は平日で人通りも少なく、乗っている馬車もゴトゴト揺れながら橋を進んでいく。
そう、彼らが向かっているのはタイガス冒険者ギルド本部。馬車はやがて大きな湖のど真ん中にある、砦のような建物についた。
「ようこそカーイセイン様、ハイルディン様。最上階にてギルドマスターがお待ちです」
「お荷物お持ちいたします」
「ご案内いたします」
すぐに黒いベストを着たマスターの使用人がわらわらと現れ、バッグを預かってくれる。金のあるスラガン地方ギルドでなければ、マスター直属の使用人など作れるわけがない。
「ウチにも欲しいっすねぇ、使用人」
「フン、人手は足りておる」
「掃除修理クエスト受付を全部一人でやってる状況で、人手が足りているとでも?」
「……金が無ければどうしようもなかろうて」
小声で話しながら建物を進んでいく二人。道中すれ違う冒険者たちのほとんどが、物珍しそうな目でこちらをチラチラ見ていた。
「みな良い防具を身に着けておるのう。きっとクエストの報酬も良いのじゃな……」
「ピンハネの度合いはどこのギルドも一緒っすけど、きっと羽振りのいいクエストがいっぱい来るんでしょーな」
所詮バッファローのギルドに来るクエストは、ここタイガスギルドのおこぼれだ。楽で良報酬のクエストはみーんな取られてしまう。
「……ここまでお疲れさまでした。こちらがマスターのお部屋になります」
話している間に、建物の最上階である木製のどっしりした扉の前にたどり着いた。使用人がそこで止まり、扉をコンコンとノックする。
「マスター、カーイセイン様がおなりです」
使用人が小声でドアの向こうに伝え、ドアノブに手をかける。ギィィ……と低い音を立て、ゆっくり扉が開いた。
……部屋の中は、支配人を従えるほど羽振りがいい割には、それほど煌びやかではなかった。はっきり言えば、家具が全くない。ランプ、黒革のソファーが二つ、平べったい机、本棚、作業机、クッション付きの椅子……その六つしかない。大きな窓が向かい側にあり、そこから太陽の光が入り込んで部屋を照らしている。
「……来たか、レン」
椅子に座った人物が顔を上げこちらを向いた。スキンヘッドで鋭い眼光の厳つい顔、そして筋骨隆々の巨体だ。目元には一筋の大きな傷跡がある。着ている綺麗なシャツがピチピチである。しかしその肌の色は、なんと緑! そして大きな口からは鋭い牙が覗いていた。彼は人外種族の一つ、戦闘と鍛錬と食事を愛するオーク族だ!
「クリフ! 元気そうでなによりじゃ」
レンが嬉しそうにぽてぽて駆け寄った。……オーク族の彼こそ、タイガスギルドマスターであるクリフ・アルバミンテ。彼は作業机に手を置き立ち上がって、レンに右手を差し出す。……しかし、彼の左腕が無い。肘から下の部分が見えず、シャツの袖がぷらぷら垂れているのみだ。
差し出された手を握りながら、レンは左手を心配そうに見た。
「……何度も言ったが、手術はせぬのか? お主が冒険者を辞めて、もう十年になる。片腕じゃ書類作業どころか、日常生活に支障が出るじゃろう」
しかしクリフは「ふ……」と少し悲しげに笑った。
「相変わらずだな、レンは……。何、もう慣れたさ。それに散々話しただろう? 私は前々から引退しようと思ってた……だが、私の心が意地を張って『まだやれる』と言い続けた。その結果がこれだ。使用人たちに手伝ってもらわないとマスターとして仕事もできない」
「じゃが……」
「レン、もう良いんだ。私が『破壊の剛腕』と呼ばれたのもまた、十年も昔。もう終わったことだ……それに今だって、後続の冒険者たちを支えたり、家に帰れば妻と二人の娘がいる。後悔はしていないさ。モンスターに腕を斬られるくらい落ちた実力で続けていれば、今ごろ死んでいたかもしれん」
「そうか……すまぬ、いらぬ事を聞いたのう」
ある昼下がりの日。レンとアルクルはタイガスの街を訪れていた。今日は平日で人通りも少なく、乗っている馬車もゴトゴト揺れながら橋を進んでいく。
そう、彼らが向かっているのはタイガス冒険者ギルド本部。馬車はやがて大きな湖のど真ん中にある、砦のような建物についた。
「ようこそカーイセイン様、ハイルディン様。最上階にてギルドマスターがお待ちです」
「お荷物お持ちいたします」
「ご案内いたします」
すぐに黒いベストを着たマスターの使用人がわらわらと現れ、バッグを預かってくれる。金のあるスラガン地方ギルドでなければ、マスター直属の使用人など作れるわけがない。
「ウチにも欲しいっすねぇ、使用人」
「フン、人手は足りておる」
「掃除修理クエスト受付を全部一人でやってる状況で、人手が足りているとでも?」
「……金が無ければどうしようもなかろうて」
小声で話しながら建物を進んでいく二人。道中すれ違う冒険者たちのほとんどが、物珍しそうな目でこちらをチラチラ見ていた。
「みな良い防具を身に着けておるのう。きっとクエストの報酬も良いのじゃな……」
「ピンハネの度合いはどこのギルドも一緒っすけど、きっと羽振りのいいクエストがいっぱい来るんでしょーな」
所詮バッファローのギルドに来るクエストは、ここタイガスギルドのおこぼれだ。楽で良報酬のクエストはみーんな取られてしまう。
「……ここまでお疲れさまでした。こちらがマスターのお部屋になります」
話している間に、建物の最上階である木製のどっしりした扉の前にたどり着いた。使用人がそこで止まり、扉をコンコンとノックする。
「マスター、カーイセイン様がおなりです」
使用人が小声でドアの向こうに伝え、ドアノブに手をかける。ギィィ……と低い音を立て、ゆっくり扉が開いた。
……部屋の中は、支配人を従えるほど羽振りがいい割には、それほど煌びやかではなかった。はっきり言えば、家具が全くない。ランプ、黒革のソファーが二つ、平べったい机、本棚、作業机、クッション付きの椅子……その六つしかない。大きな窓が向かい側にあり、そこから太陽の光が入り込んで部屋を照らしている。
「……来たか、レン」
椅子に座った人物が顔を上げこちらを向いた。スキンヘッドで鋭い眼光の厳つい顔、そして筋骨隆々の巨体だ。目元には一筋の大きな傷跡がある。着ている綺麗なシャツがピチピチである。しかしその肌の色は、なんと緑! そして大きな口からは鋭い牙が覗いていた。彼は人外種族の一つ、戦闘と鍛錬と食事を愛するオーク族だ!
「クリフ! 元気そうでなによりじゃ」
レンが嬉しそうにぽてぽて駆け寄った。……オーク族の彼こそ、タイガスギルドマスターであるクリフ・アルバミンテ。彼は作業机に手を置き立ち上がって、レンに右手を差し出す。……しかし、彼の左腕が無い。肘から下の部分が見えず、シャツの袖がぷらぷら垂れているのみだ。
差し出された手を握りながら、レンは左手を心配そうに見た。
「……何度も言ったが、手術はせぬのか? お主が冒険者を辞めて、もう十年になる。片腕じゃ書類作業どころか、日常生活に支障が出るじゃろう」
しかしクリフは「ふ……」と少し悲しげに笑った。
「相変わらずだな、レンは……。何、もう慣れたさ。それに散々話しただろう? 私は前々から引退しようと思ってた……だが、私の心が意地を張って『まだやれる』と言い続けた。その結果がこれだ。使用人たちに手伝ってもらわないとマスターとして仕事もできない」
「じゃが……」
「レン、もう良いんだ。私が『破壊の剛腕』と呼ばれたのもまた、十年も昔。もう終わったことだ……それに今だって、後続の冒険者たちを支えたり、家に帰れば妻と二人の娘がいる。後悔はしていないさ。モンスターに腕を斬られるくらい落ちた実力で続けていれば、今ごろ死んでいたかもしれん」
「そうか……すまぬ、いらぬ事を聞いたのう」
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