崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第九話 月に泣く凶牙

ヘトヘトの達成感

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「え? ……そ、そ、そっか……」
 必死すぎるあまり、ココリョナカイマンを倒したのにも気づかなかったようだ。しばらくキョトンとしたのち、安心して地面に座り込んだ。
「ぐ……て、手こずらせやがって……このバケモノめ……」
 ケンガも仰向けに倒れ込む。川の浅瀬なのだが、気にする余裕なんてなかった。
「ナガレさん、これを」
 フローレンスがナガレにタオルを一枚渡してくれた。
「え、何? 体でも拭くの?」
「私としてはそれでも良いんですが……ほら、鼻血出てますよ」
「あ……そっか、ありがとう」
 いつのまにか止まっていた鼻血を拭いて、ついでにこっそり顔の汚れも拭いた。
「フローレンスもだいぶボロボロになっちゃったね。ごめん……オレってモンスターやっつける時、いつもこんな感じで死闘になっちゃうんだ。圧勝したことあんまりなくてさ……」
「いいんです、ナガレさんほどボロボロにはなってませんし」
「……へへっ」
「ふふふ……!」
 そんな感じで、二人同時にニヤッと笑った。するとケンガがようやく立ち上がる。
「お二人さん、そろそろ帰るとしよう。ゆっくり休むのは帰ってからだ」
「はいはい! それじゃ行こっか」
「そうですね!」

 一応討伐の証拠として、ココリョナカイマンの羽を切り落として丁寧に折りたたみ、素材用の袋に詰める。なかなか大きい羽のためギュウギュウだが仕方ない。
 そうして一同は折り返して歩き出す。ココリョナカイマンの討伐、成功だ。

~☆~☆~☆~☆~☆~

 と言う訳で馬車に乗ったは良いが……ケンガとフローレンスは椅子で横になっている。自分のスペースを譲ってあげたナガレは、馬車の上に座って夜空を眺めていた。
 長いこと戦っていたし、もう深夜を回っているころだろう……。正直フカフカのベッドで休みたいところだが、心地よく揺れる馬車の上で満天の星空を眺めるのも乙なものである。
「…………ナガレさん? 落っこちたりしてませんよね」
 ふとナガレの下、馬車の中からフローレンスの声がした。
「ケンガ? どうしたんだ」
「ケンガさんならぐっすり寝てますよ。私です、フローレンスです」
「ん、そっか。いや大丈夫だけど……」
「そうですか、よかった……」
 そう言うと、しばらく沈黙が流れた。何か言い出すのかと黙っていると、フローレンスの声が再び聞こえてくる。
「その、ナガレさん……今日はありがとうございました。私このクエストを達成しなきゃ、ラストハーレムズをクビになるところだったんです。私一人じゃどうしようも無いことを見越して、無茶振りしてきたんでしょう」
「そうなのか? ヒドイ奴らだなぁ」
「一軍の人たちは、みんな私がキライなんですよ。全然可愛くないし、背丈だけノッポで腕も足も女の子らしくないし……だから私を追い出そうとしてるんですよ」
 それを聞いたナガレは、すーっと息を吸い込む。空にはたくさんの星が輝いてとても綺麗だ。
「……そっか。それでも辞めないんだな。そんな辛い目にあってもなお、ラストハーレムズで成り上がる夢は捨てられないんだな。……スゴいよフローレンスは」
「本当にそうですかね……」
 心の底から感心したのに、フローレンスは何やら含みのある言葉を返してくる。
「私、最近考えているんです。ラストハーレムズを辞めるべきなのかって……。リーダーたちに目をつけられちゃ、成り上がりなんて絶対に無理ですよ。それに動機だって、スゴい冒険者になってみんなからチヤホヤされたいってだけなんです」

「じゃあ辞めれば?」
「は? ……あの、話聞いてました?」
 表情は見えないが、疑心に満ちたフローレンスの声。ナガレは一人でニッと笑う。
「なんだ、辞めたくないのなら続けるしかないな」
「ケンガ……じゃなくてケンカ売ってます?」
「だって、『辞めなよ』って言われて怒るんだったら、フローレンス自身は『現時点では』辞めたくないんだろ? ほら、答え出たじゃん」
「簡単に言わないでくださいよ……何が言いたいんですかナガレさん」
 顔は見えないけど、怒るというより呆れたムードだ。
「だからさ……今んとこは続けて、もし今後嫌になったら辞めちゃえば良いさ。風の向くまま気の向くまま、その時その時で選べばいいよ」
「よく考えずに行動したらすぐ失敗しちゃいますよ」
「考えたって無駄なこともあるじゃんか。オレだって明日突然事故で大怪我するかもしれないし、突然女神様が天から降りてきて世界を滅ぼすかもしれない」
「何言ってるんですか……そんなことある訳」
「ある訳ない、だろ? でもホントにそうかな……? 女神様は流石に言い過ぎかもだけど、事故はあるかもしれないじゃん」
「はぁ……まーそうですけど」

「明日のことなんて、誰も分かんないんだ。だからその時に感じたまま決断すればいいよ。成功したらそれでヨシ、失敗しても『じゃあ次はこうしよう』って成長できるからさ」
 ナガレがそう言うと、またも沈黙が訪れた。
(ヤッベ……流石に適当すぎたかも)

「適当なこと言ってくれますね……ふふふ」
 いくらなんでも理想論すぎたか……とナガレが緊張する中、聞こえてきたのはフローレンスの笑い声だった。
「や、やっぱり? ごめん、そんなつもりじゃ……」
「いえ、大丈夫ですよ。私もとりあえず続けることにします」
「そっか、分かった。気が早いかもしれないけど、頑張れよ!」
「はい!」
 声援を送るナガレには、フローレンスの表情は見えない。それでも笑顔が想像できるような、元気な返事が返ってきた。
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