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第十話 闇を抱える爆音波
禍の噂
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そして日が暮れたため、今日の作業が終了した。みんな作業を終えて、あちこちで食事を取っている。
ナガレ達冒険者組も固まってパンとシチューにありついていた。
ガツガツガツガツ……。
「んくんく……ぷはっ! あったかくて味も濃くてうめえや、このシチュー!」
「……スラガン地方の夜は冷えるな。まだ九月だと言うのに肌寒いぞ」
「もぐもぐ……ここは谷が多い分風が強いからなぁ。あたり一面荒野だから遮るものもねえんだ」
そんなことを話していると、現場監督のヤングさんが近寄って来た。ヘルメットを外していて、可愛い小さなお団子ヘアーがギャップを感じる。
「よう、冒険者ども! なかなかやるじゃないか。実際アンタらのおかげで、作業効率も上がってたんよ? 冒険者ってのはぁ不思議なもんだ」
そう言ってナガレを指差すヤング。
「こんな細身の女の子でも、二人がかりとはいえ重い角材を持てるんだから! いやあ弱小とはいえさすが冒険者!」
「オレは男と言ってんだろ! あと弱小は余計だ!」
「ヤングさん。我々がここに滞在できるのは一ヶ月です。ギルドマスターからそう指示されておりまして……」
サニーが聞くと、ヤングは「ああ、そりゃ大丈夫!」と言ってケラケラ笑った。
「ここにいんのはタイガスの街でもかなりのベテランやプロが集まってんだ。こんだけ良い人材がいりゃあ後二週間で終わる!」
「そうなの~⁉︎ 小さい村とはいえ、かなり早いわ~! すご~い!」
「ま、その代わりアンタらはちゃーんと村とあたしらを守ってくれよ! モンスターにも負けない家を作ってやるけど、あたしらがやられちまえば復興はずっと先になるかんな」
ヤングさんは「ふふん!」と得意げに笑う。それを見たケンガは顔を顰めた。
「うげ……そうか、俺様たちは復興を手伝うだけじゃなくて、防衛もしなくちゃいけねえのか。ああ……作業でヘトヘトのところ襲われたら、スカルウルフ一体でもやられてしまうぞ」
「だったら頑張って手伝って、襲われる前に仕事を終わらせないとな。でも……その、なんだっけ。マンゲツゴーストとやらがまた来ちゃうかもしれないぞ?」
「ナガレ君、マガツゴーストだ」
いつもの言い間違いをタネツが指摘してくれた。
「あ~、そりゃ大丈夫! ホレ、あの焚き火を見てみろよ」
「あのヤグラみたいなのね~。アレはなんなの~?」
ヤングが指差した先には、メラメラと燃え上がる白い炎の篝火があった。キャンプファイアーのように木材を組み合わせているが、ナガレたちと同じくらい大きい。ただの明かりにしては派手すぎるように見える。
「……ほう、聖なる炎か」
ボソッと呟いたのはジョーだ。
「え、なんだそりゃ?」
「……アレはゴーストが嫌がって近寄らない効果があるんだ。炎が白いのは、周囲に特殊な呪文をかけているからさ。櫓の下の地面を見てみろ」
言われた通りよく見ると、地面に何やら模様が書かれている。その周囲には鉄の杭とロープで柵が作られており、侵入を禁止しているのがよく分かる。
「……あの魔法陣で炎に魔力を送っている。あの効果は凄まじく、どんなゴーストも寄りつかない。それは危険度S級のマガツゴーストすら例外ではない」
「なんだ、そんなスゲエ効果だったんだねぇ! あたしゃ知らなかったよ」
「……は?」
キョトンとするジョー。ヤングは「あっはっは!」と気さくに笑った。
「いーや、あたしらはあの木材櫓を組んだだけ。その後王都から来たとか言う辛気臭いツラしたおっさんたちが来て、あの魔法陣書いて火をつけてくれたんだよ。ちょっとやそっとじゃ魔法陣は消えないけど、一応立ち入りは禁止しといてくれってさ」
そこまで言って、ヤングは考え込むように唇に指を当てた。
「ところでそんなにスゴいモンをよくつけてくれたねえ。マガツゴーストとか言うのは、そんなに強いのかい? あたしらも一応『マガツゴーストには気をつけろ。もしなんかの事故で村に来たら、復興はいいからとにかく逃げて生還してくれ』って本部も言ってたねぇ」
「そんなに恐ろしい相手なのかぁ……」
「……マガツゴーストは危険度S級の、極めて危険なモンスターだ。目撃情報が少なく被害もあまり聞かないが、一度暴れ出したらAランク冒険者パーティだって簡単に返り討ちだ。……しかし、ゴーストもこの村に固執している訳ではないだろう。この炎を絶やさず燃やし続ければ、いずれ諦めてどこかへ言ってしまうはずだ。そもそもゴースト自体が人を嫌うからな……」
なんだか難しい話になって来た。ナガレは肩をすくめて炎をじっと見つめる。白く燃える炎はなんだか神々しく、とても美しかった。
「ま、いいさ。あたしゃこれから明日の構想段階練ってくんよ。アンタらも夜更かしせず早いとこ休むんだよ~」
そう言ってヤングは立ち上がり、他の仲間たちのところへ歩いていった。
「んじゃ、かなり早いけど俺たちも休むか。俺はまだ動けるがな! 普段の特訓に比べたらずっと楽だぜ」
「そうかも! あははははっ……」
タネツの言葉にナガレも笑ったところで、ふとサニーに違和感を感じた。
「サニー? どうしたんだ」
「………………」
何やらサニーが考え込むような表情をしている。ナガレが声をかけても、ほとんど耳に入っていないようだ。
「……サニー? なんだよ、腹でも痛いのか?」
肩をポンと叩くと、ようやくこちらに気がついたようで一瞬ビクッとした。
「な、ナガレさん。ええ、大丈夫です。何もないですよ」
「……? なら良いけど」
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