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第十話 闇を抱える爆音波
襲撃はいつも突然に
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その日の深夜……。
復興現場では、ほとんどの作業員が無数のテントで眠りこけていた。ナガレたちは外で地べたに毛布を敷いて横になっている。
「んぉ……すぴー……」
ナガレが呑気に可愛い寝息を立てている。そこから少し離れたところで、サニーが一人で見張りをしていた。
「我々エルフは眠らなくても良いのです。寝なくても疲れませんし……」と言って自ら見張りを買って出たため、一人で起きている。
ポー……ピー……プー…………。
サニーの方から何やら笛のような、穏やかな音色が聞こえてくる。何か楽器を演奏しているようだ。ナガレたちはきっと聞いたこともない曲だが、まるで子守唄のように心地いい音楽である。
ピー……ピー……プー……。
「……何をしているんだ」
「おや? ……ジョーさん。起こしてしまいましたか? ならすいません、すぐやめます」
突然後ろの暗闇から、ぬうっとジョーが姿を現した。闇に溶け込むのがとても上手で、夜闇も明るく見渡せる目を持つエルフであるサニーですら、声をかけられるまで気が付かなかった。
「……建物の中ならともかく、外ではあまり眠たくならん。……あの日からずっとな。それより、何をしているんだ」
「この楽器ですか? これはオカリナというものです。穏やかな音色が心地よい、私の好きな楽器なんですよ」
サニーが手に持っていたのは、小さい穴がいくつか空いた丸っこい陶器みたいなものだった。
「あ、先ほどの演奏ですか? 『森の子守唄』という民族音楽で、故郷に伝わるものなんです。ふと吹いてみたくなりまして……」
「……嘘だな」
「え?」
突然ジョーが妙なことを言い出した。困惑した視線を向けるサニー。
「お前にとっては残念な事だが、俺は『森の子守唄』を知っているんだ。リズムが違う……」
するとサニーはにっこり笑って両手を広げる。降参です、とでも言いたげなジェスチャーだ。
「いやはや、ジョーさんには敵いませんね。実はこれ、私が自作した音楽なんです。とは言ってもまだ構想中で、とてもお聞かせできるものではなく……」
「……そんなことはどうでもいい」
ジョーは冷たく吐き捨て……そして、なんと腰のダガーに手をかけた!
「貴様、なぜくだらん嘘をついた」
「じょ、ジョーさん? 一体何の……落ち着いてください」
「何か後ろめたい事があるんじゃないのか」
血が凍りつきそうなほど、殺気に満ちた恐ろしい視線を向けるジョー。これがナガレであれば、半泣きで弁解しただろうが……サニーは「やれやれ」と言うような顔で首を振った。
「いえいえ、本当の事ですよ。実は私、誰にも自作の曲を聞かせた事が無いのです。どうも自作の物を聞かせるのは恥ずかしくて……それだけの事ですよ。フフ……恥ずかしがり屋な私を、どうか笑ってください」
最後の方は自虐的な笑みまでセットでついて来た。恥ずかしいのかちょっぴり顔が赤い。どうやら嘘ではなさそうだ。意外とお茶目なエルフである。
「……のらりくらりと躱しやがって。……もう一度聞く。一体何を……」
それでも納得できないジョーが、さらに咎めようとした瞬間……。
…………ビビビビビ………………。
「ッ!」
「…………!」
エルフの高い聴力とジョーの研ぎ澄まされた感覚が、妙な音波をキャッチした。常人には聞こえないほどの高音、超音波だ……。
「何か来ます……!」
「コウモリか? ……いいや、ただのコウモリじゃない。モンスターか!」
音波はどんどん近づいてくる。感覚の鋭い二人だからこそ気づけた痕跡だ。
「……! サニー、あそこだ……!」
「あっ! あれは……は、ハイランドバットです! 他にも大勢いますよ!」
「チチチッ……ギィーーッ!」
闇の向こうから巨大なコウモリ、ハイランドバットが現れた!
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