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第十二話 猛き冠、森林の蹄
美しき茶番
しおりを挟む「なんだいジーカもバードも、なんか元気そうじゃんか。あーしがレガーナちゃん連れてきた時は『かわいそう』だの『目をつけられた』だのコソコソ話してたくせに」
「げっ、先輩たら聞こえてたん⁉︎ そ、そない大したこと話してへんよ? なぁバード!」
「も、もちろんッス! 決してイカれたメンヘラレズの頭百合女に目をつけられたレガーナちゃんが可哀想とか、全然思ってねえッス!」
「あーっ、だから言ったらあかんって……」
「全部言ってんだよ、こらぁっ!」
どんがらがっしゃーん!
「ひぇ~っ⁉︎」
バードが全て白状してしまい、ベアンが台パンでグラスを全てひっくり返した! ブチ切れたのかと怯えるナガレだが、バードとジーカは驚きつつも余裕がありそうだ。……もしかしたら、いつもこんな感じなのかもしれない。
(……こんなこと認めたくないけど、不気味なほどすっげぇ上手く言ってるな。リーダーからの評価は上がってるし、ちょっとヤバいけど頼れる先輩もいるし、仲良く慣れそうな友達も出来たし……いや友達かはまだ分かんねえけど)
どこか楽しそうな雰囲気を感じて、ふとそんな事を考えてしまう。
(コレって大丈夫だよな、後からどんでん返しが来たり……しなさそうな感じするわ。それとも……オレに女性としての適性がありすぎるんだろうか)
……それはそれで、心身ともに男性であるナガレにとっては嫌である。
「ちょっとベアンさん! こんなにグラス割っちゃって……。グラスだってタダじゃないんですよ⁉︎」
バーテンダーの、ヒゲが生えたイケおじのおっちゃんがたまらず駆け寄ってきた。どうやらベアンのこともよく知っているらしい。
「良いだろうがベルナー、また弁償してやるって」
そう言ってベアンは肩に背負った麻袋から札束(⁉︎)を取り出し、ベルナーと呼ばれたヒゲのバーテンダーに放る。それをしっかりキャッチしたベルナーは「はぁ……」とため息をついた。
「全く……これいくらだい。どうせ弁償に使えっていう大金じゃないんだろう?」
「あたりめえだろ。今日は後輩に酒奢るんだから、それで良い酒注いでくれ。多分千ダラー(⁉︎)ある。釣りはちゃんと返せよ」
「はいはいっと。にしてもベアンさん、珍しく奢ってあげるんだねぇ。おや? そういえばそちらのお嬢さんは冒険者の後輩かい?」
ベルナーはナガレの方を見て、興味深そうにじっと見つめた。
「おいオッサン! うら若き乙女をジロジロみんなよ! てめーの視線でレガーナちゃんが汚れるっ!」
ギャーギャー騒ぐベアンを無視して、ベルナーはナガレにウィンクした。
「ウチはこんな常連さんもいるけど、普段はもう少し静かなところだから。次は友達と来てくれたら、良いお酒サービスするよ♪」
「じゃかぁしい! 余計なお世話だオッサン! てか早く酒持って来い!」
「注文もしてないのにお酒を持って来いだなんて、贅沢だねぇ」
「なんだとーっ! 冒険者サマをバカにしてんのかぁっ!」
「具体的には君をバカにしたんだよ、ベアンさん」
そんな口喧嘩を「うわぁ……」という目で見ていたナガレ。すると赤髪短髪元気っ子こジーカが「なーなー」と手招きしてきた。
「はい、なんですか?」
「嫌やなぁレガーナちゃん、タメ口でええねんで? そんでな先輩のことやけどさ。普段はこんな口うるさい人やが根はエエ人やから大丈夫やで」
「そうそう。嫌がる人を無理やり手篭めにするようなマネもホントにしないから、大丈夫ッスよ。……だからこそ、心のスキにつけ込まれないように気をつけるッス。どうやら相当好かれたみたいッスよ……」
ゴニョゴニョと教えてくれた。ジーカとバードはマトモなようだ。ある意味バランスが取れているかもしれない。
「う、うん……ありがとう……」
ナガレもニコッと笑った。なんだか仲良くなれそうだ。
(……って、すぐに別れちゃうんだけどなぁ)
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