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お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
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母さんの一言が、私の今後の運命を大きく変えることになるとは、この時の私は知るよしもなかった。
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
持っていたトングが手から滑り落ち、床で音を立てる。
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!?
え、で……私も王宮にって、私に王女となって王室の一員になれってこと!?
どこから突っ込んでいいのか分からない。母さんは天然入ってるから、この状況が分かってないのかもしれない。
「えーっと、夢でも見た?」
「夢じゃないわ」
「妄想?」
「妄想でもないの、フフッ」
母さんは嬉しそうに笑った。
だって、うち……村の小さなパン屋だよ?
どこに国王陛下との接点なんてあったわけ?
そう考えて、「あっ!」と叫んだ。そういえば、母さんがパンを王宮に届けに行ったことが何回かあったっけ。
でも、パンを届けに行ったところで国王陛下に会うだなんて思わなかったし、ましてやふたりが恋仲になるだなんて考えもつかなかった。
確かに、うちの母さんは村でも評判の美人だし、いい人がいれば再婚して幸せになってほしいとは思ってたけど……まさか、その相手が国王陛下だなんて、驚きだ。
「母さんは、いいの? 王室に嫁ぐなんて……苦労、しそうじゃん」
女手ひとつで私を苦労して育ててくれた母さんだけど、王室にはそれとは全く違う苦労が待ってるはずだ。ましてや庶民出身の母さんが受け入れてもらえるのかという不安もあった。
「大変なことはあるかもしれないけど……アルバスと一緒にいたいから……」
母さんが顔を赤らめてそう言った。なんだか、少女に戻ったような雰囲気だ。
こんな恋愛モードの母さん、初めて見た。村の男の人に求婚されても、笑ってサラッと躱してたのに。てか、アルバスって国王陛下のこと!? ファーストネーム呼びなんてする仲なわけ!?
「母さんが再婚したいなら、反対する理由はないけど。でも、私まで王宮に行くことはないんじゃない?」
「アルバスは、ぜひエリーとも一緒に暮らしたいって言ってるのよ? 王宮での暮らしは慣れないうちは大変かもしれないけど、そのうちきっと楽しくなるわ。
それに、エリーだけをここにひとり残すことなんてできないわ」
母さんの気持ちは嬉しかったけど、私は首を振った。
「私はここで、パン屋を続けるよ。おじいちゃんが立ち上げたこのお店を守っていきたいんだ……それに、村には友達もいるし、ここを、離れたくない」
幼い子供ならまだしも、16歳である私が王宮に入って暮らすだなんて、躊躇われた。母さんと離れるのは寂しいけど、パンの焼き方だって、店の経営だって、ひとりでなんとかやっていける。
「……分かったわ。でも、アルバスには会ってくれるわよね? とても素敵な人なの。エリーに会いたいって言ってたから、訪ねていったら喜んでくれるわ」
「うん、ありがとう」
それから、一週間後。私は母さんと迎えの馬車に乗り、王宮へと向かった。気慣れない正装のドレスが落ち着かない。
う……胃が痛くなってきた。私、絶対に場違いだよね。
案内された応接間の扉の前に立つ。
国王陛下に挨拶したら、『母をよろしくお願いします』って伝えて、すぐ帰ろう。
ゴクリと唾を飲み下し、母さんの後ろについて部屋に入った。
「アリアナ、よく来てくれたな。そちらが?」
「えぇ、娘のエリーよ」
国王陛下、写真でしか見たことなかったけど、とても精悍で威厳がありながらも優しそうで……素敵な方だな。きっと、母さんのことを幸せにしてくれるに違いない。
「初めまして。ぁ。あの……」
「私にも、君と同じ年頃の息子がいるんだ。君の1つ上のエリオットだ」
奥に腰掛けていた男性が、椅子から立ち上がった。
うわぁ、綺麗な顔立ち……こんな人、世の中にいるんだ。しかも国王陛下の息子だなんて、恵まれた境遇だなぁ。
「よ、よろしくお願いします……」
エリオットが私に歩み寄り、抱き締めた。
「妹ができるって聞いて楽しみにしてたんだけど、こんな可愛い子が僕の妹になるなんて、嬉しいよ!
これから一緒に暮らせるの、楽しみにしてるね」
な、なんか人懐っこい人だな……まさか初対面から抱きついてくるとは。
「そのことですが……母にも伝えたんですが、私は村でパン屋を続けます。
どうか、母のことをよろしくお願いします」
「そんな……!」
国王陛下の顔が青褪めた。
「王宮での暮らしに不安を抱いているなら、私がしっかりと支えるからどうか心配しないでくれ。君を家族として、娘として受け入れる準備はできている。誰にも、文句は言わせない」
「有り難いお話ですけど……私は、ここでの優雅な生活よりも、気ままに村でパンを作っている方が好きなんです。もう16歳ですし、自分のことは自分でやっていけます」
「エリー……」
すると、エリオットが叫んだ。
「待ってよ、エリー! じゃあ、僕の気持ちはどうなるの!?」
「え……?」
僕の、気持ち……とは?
「僕は、エリーと一緒に暮らしたいのに! これから楽しく幸せな生活になるのを夢見てたのにぃぃ!!」
あ、この人……顔はいいけど、残念な人なんだ。
「私には、村でのパン屋の生活がありますから」
「じゃあ、王宮でパンを焼けばいいじゃないか!」
「私が作ったパンを村の人たちに食べてもらうのが、幸せなんです」
「よし、エリーが作ったパンを村人たちに届けることにしよう!」
「友達も、大切な人たちもそこにいますし……」
「僕だって、父君だって、もうエリーにとって大切な人じゃないのかい? 僕にとって君は、大切なかけがえのない妹なのに……」
「それは……」
いきなり家族だって言われたって、戸惑うよ。もちろん、母さんを愛してくれた人だし、家族になるんだから大事にしたいとは思うけど……
「私にとって村の人たちは、家族みたいなもんなんです。母娘で暮らしてる私たちをいつも気にかけて、声を掛けて、助けてくれた……そんな温かい村の人たちと、これからも暮らしていきたいんです」
ここまで話したら、私の気持ち分かってくれるよね?
「分かったよ」
エリオットの言葉を聞き、ホッとする。母さんがいなくなるのは寂しいけど、これでいいんだ。私の家は、ここじゃないんだから。
「分かった、じゃあエリーの村を王宮の隣に移そう! そうすればエリーはいつでも村人に会えるし、僕たちも一緒に暮らせるでしょ。みんなハッピーだ♪」
エリオットは私の予想を遥かに超えて来た。
分かって、なかった……
唖然としてから、フツフツと怒りが湧いてくる。
「村を移すなんて、無理でしょ……村の人たちを、なんだと思ってるんですか。あの人たちにはそこでの暮らしがあるんです。村を移したところで同じなわけない。それに、私ひとりのためにそんなことするなんて馬鹿げてる!!」
王太子殿下だろうがなんだろうが、知るもんか。この世間知らずな坊ちゃんにガツンと言ってやらないと気が済まない。
「あんたねぇ、これから国王陛下になるって人が、国民の気持ち無視して勝手にそんなことやったらどうなるのか、分かんないわけ!? 我儘もいい加減にしなさいよ!!」
言ってから、しまった……と思ったけど、もう遅い。
母さんは口が開いたまま私を見つめてる。
ごめん、母さん……せっかくの場を台無しにしちゃって。あぁ、今すぐ家に逃げ帰りたいっっ。
「アハハハ……こりゃぁ、いい!」
いきなり国王陛下が笑い出して、ビクッとする。
「アリアナ、君の……いや、私たちの娘は最高だな。
すまないな、エリー。母親を幼くして失くしたエリオットを、私は甘やかしすぎてしまった。臣下や周りの者達は彼を特別扱いし、誰も厳しく言う者はいない。
君のような人が、エリオットには必要なんだ。エリー、私からも頼む。もう一度、王宮に住むことを考えてくれないか? 村が好きだというなら、交互に住んで行き来しても構わない」
「国王、陛下……」
心が揺れる。
母さんの瞳には、私と一緒に暮らしたいという思いが籠ってるのが伝わってきて、胸が痛くなった。村の人たちがいるとはいえ、これから家でひとりきりの生活に耐えられるのか、自信もなかった。
王宮と村を行き来するというのは、有り難い提案だ。そうすれば、私は気軽に母さんに会いに行って一緒に過ごせる時間を持てるし、村でパンを焼いて生活することもできる。
でも、そんな我儘許されるのだろうか。王宮にいれば、きっと周りの目が許してくれない。王女となった私に、相応しい暮らしをするようにと、進言されるはずだ。
それによって国王陛下や母さんは臣下たちと対立して、関係を悪くしてしまうかもしれない。
「やっぱり、私は……」
言いかけた私の手を、エリオットが握る。
ん、なに? この手は?
「エリー、どうか僕の側にいてくれ。僕には、君が必要なんだ」
「あの……王太子、殿下?」
エリオットが片膝をついた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
茫然としてると、母さんが笑った。
「まぁ、すっかり仲良くなって」
「あぁ、微笑ましいな」
いやいや、あんたたちの息子があんたたちの娘に求婚されてるんですけど!? これから、兄妹になるっていうのにありえないでしょーが! 夫婦揃って天然かいっっ。
私、村に帰らせてもらいますっっ!!
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
持っていたトングが手から滑り落ち、床で音を立てる。
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!?
え、で……私も王宮にって、私に王女となって王室の一員になれってこと!?
どこから突っ込んでいいのか分からない。母さんは天然入ってるから、この状況が分かってないのかもしれない。
「えーっと、夢でも見た?」
「夢じゃないわ」
「妄想?」
「妄想でもないの、フフッ」
母さんは嬉しそうに笑った。
だって、うち……村の小さなパン屋だよ?
どこに国王陛下との接点なんてあったわけ?
そう考えて、「あっ!」と叫んだ。そういえば、母さんがパンを王宮に届けに行ったことが何回かあったっけ。
でも、パンを届けに行ったところで国王陛下に会うだなんて思わなかったし、ましてやふたりが恋仲になるだなんて考えもつかなかった。
確かに、うちの母さんは村でも評判の美人だし、いい人がいれば再婚して幸せになってほしいとは思ってたけど……まさか、その相手が国王陛下だなんて、驚きだ。
「母さんは、いいの? 王室に嫁ぐなんて……苦労、しそうじゃん」
女手ひとつで私を苦労して育ててくれた母さんだけど、王室にはそれとは全く違う苦労が待ってるはずだ。ましてや庶民出身の母さんが受け入れてもらえるのかという不安もあった。
「大変なことはあるかもしれないけど……アルバスと一緒にいたいから……」
母さんが顔を赤らめてそう言った。なんだか、少女に戻ったような雰囲気だ。
こんな恋愛モードの母さん、初めて見た。村の男の人に求婚されても、笑ってサラッと躱してたのに。てか、アルバスって国王陛下のこと!? ファーストネーム呼びなんてする仲なわけ!?
「母さんが再婚したいなら、反対する理由はないけど。でも、私まで王宮に行くことはないんじゃない?」
「アルバスは、ぜひエリーとも一緒に暮らしたいって言ってるのよ? 王宮での暮らしは慣れないうちは大変かもしれないけど、そのうちきっと楽しくなるわ。
それに、エリーだけをここにひとり残すことなんてできないわ」
母さんの気持ちは嬉しかったけど、私は首を振った。
「私はここで、パン屋を続けるよ。おじいちゃんが立ち上げたこのお店を守っていきたいんだ……それに、村には友達もいるし、ここを、離れたくない」
幼い子供ならまだしも、16歳である私が王宮に入って暮らすだなんて、躊躇われた。母さんと離れるのは寂しいけど、パンの焼き方だって、店の経営だって、ひとりでなんとかやっていける。
「……分かったわ。でも、アルバスには会ってくれるわよね? とても素敵な人なの。エリーに会いたいって言ってたから、訪ねていったら喜んでくれるわ」
「うん、ありがとう」
それから、一週間後。私は母さんと迎えの馬車に乗り、王宮へと向かった。気慣れない正装のドレスが落ち着かない。
う……胃が痛くなってきた。私、絶対に場違いだよね。
案内された応接間の扉の前に立つ。
国王陛下に挨拶したら、『母をよろしくお願いします』って伝えて、すぐ帰ろう。
ゴクリと唾を飲み下し、母さんの後ろについて部屋に入った。
「アリアナ、よく来てくれたな。そちらが?」
「えぇ、娘のエリーよ」
国王陛下、写真でしか見たことなかったけど、とても精悍で威厳がありながらも優しそうで……素敵な方だな。きっと、母さんのことを幸せにしてくれるに違いない。
「初めまして。ぁ。あの……」
「私にも、君と同じ年頃の息子がいるんだ。君の1つ上のエリオットだ」
奥に腰掛けていた男性が、椅子から立ち上がった。
うわぁ、綺麗な顔立ち……こんな人、世の中にいるんだ。しかも国王陛下の息子だなんて、恵まれた境遇だなぁ。
「よ、よろしくお願いします……」
エリオットが私に歩み寄り、抱き締めた。
「妹ができるって聞いて楽しみにしてたんだけど、こんな可愛い子が僕の妹になるなんて、嬉しいよ!
これから一緒に暮らせるの、楽しみにしてるね」
な、なんか人懐っこい人だな……まさか初対面から抱きついてくるとは。
「そのことですが……母にも伝えたんですが、私は村でパン屋を続けます。
どうか、母のことをよろしくお願いします」
「そんな……!」
国王陛下の顔が青褪めた。
「王宮での暮らしに不安を抱いているなら、私がしっかりと支えるからどうか心配しないでくれ。君を家族として、娘として受け入れる準備はできている。誰にも、文句は言わせない」
「有り難いお話ですけど……私は、ここでの優雅な生活よりも、気ままに村でパンを作っている方が好きなんです。もう16歳ですし、自分のことは自分でやっていけます」
「エリー……」
すると、エリオットが叫んだ。
「待ってよ、エリー! じゃあ、僕の気持ちはどうなるの!?」
「え……?」
僕の、気持ち……とは?
「僕は、エリーと一緒に暮らしたいのに! これから楽しく幸せな生活になるのを夢見てたのにぃぃ!!」
あ、この人……顔はいいけど、残念な人なんだ。
「私には、村でのパン屋の生活がありますから」
「じゃあ、王宮でパンを焼けばいいじゃないか!」
「私が作ったパンを村の人たちに食べてもらうのが、幸せなんです」
「よし、エリーが作ったパンを村人たちに届けることにしよう!」
「友達も、大切な人たちもそこにいますし……」
「僕だって、父君だって、もうエリーにとって大切な人じゃないのかい? 僕にとって君は、大切なかけがえのない妹なのに……」
「それは……」
いきなり家族だって言われたって、戸惑うよ。もちろん、母さんを愛してくれた人だし、家族になるんだから大事にしたいとは思うけど……
「私にとって村の人たちは、家族みたいなもんなんです。母娘で暮らしてる私たちをいつも気にかけて、声を掛けて、助けてくれた……そんな温かい村の人たちと、これからも暮らしていきたいんです」
ここまで話したら、私の気持ち分かってくれるよね?
「分かったよ」
エリオットの言葉を聞き、ホッとする。母さんがいなくなるのは寂しいけど、これでいいんだ。私の家は、ここじゃないんだから。
「分かった、じゃあエリーの村を王宮の隣に移そう! そうすればエリーはいつでも村人に会えるし、僕たちも一緒に暮らせるでしょ。みんなハッピーだ♪」
エリオットは私の予想を遥かに超えて来た。
分かって、なかった……
唖然としてから、フツフツと怒りが湧いてくる。
「村を移すなんて、無理でしょ……村の人たちを、なんだと思ってるんですか。あの人たちにはそこでの暮らしがあるんです。村を移したところで同じなわけない。それに、私ひとりのためにそんなことするなんて馬鹿げてる!!」
王太子殿下だろうがなんだろうが、知るもんか。この世間知らずな坊ちゃんにガツンと言ってやらないと気が済まない。
「あんたねぇ、これから国王陛下になるって人が、国民の気持ち無視して勝手にそんなことやったらどうなるのか、分かんないわけ!? 我儘もいい加減にしなさいよ!!」
言ってから、しまった……と思ったけど、もう遅い。
母さんは口が開いたまま私を見つめてる。
ごめん、母さん……せっかくの場を台無しにしちゃって。あぁ、今すぐ家に逃げ帰りたいっっ。
「アハハハ……こりゃぁ、いい!」
いきなり国王陛下が笑い出して、ビクッとする。
「アリアナ、君の……いや、私たちの娘は最高だな。
すまないな、エリー。母親を幼くして失くしたエリオットを、私は甘やかしすぎてしまった。臣下や周りの者達は彼を特別扱いし、誰も厳しく言う者はいない。
君のような人が、エリオットには必要なんだ。エリー、私からも頼む。もう一度、王宮に住むことを考えてくれないか? 村が好きだというなら、交互に住んで行き来しても構わない」
「国王、陛下……」
心が揺れる。
母さんの瞳には、私と一緒に暮らしたいという思いが籠ってるのが伝わってきて、胸が痛くなった。村の人たちがいるとはいえ、これから家でひとりきりの生活に耐えられるのか、自信もなかった。
王宮と村を行き来するというのは、有り難い提案だ。そうすれば、私は気軽に母さんに会いに行って一緒に過ごせる時間を持てるし、村でパンを焼いて生活することもできる。
でも、そんな我儘許されるのだろうか。王宮にいれば、きっと周りの目が許してくれない。王女となった私に、相応しい暮らしをするようにと、進言されるはずだ。
それによって国王陛下や母さんは臣下たちと対立して、関係を悪くしてしまうかもしれない。
「やっぱり、私は……」
言いかけた私の手を、エリオットが握る。
ん、なに? この手は?
「エリー、どうか僕の側にいてくれ。僕には、君が必要なんだ」
「あの……王太子、殿下?」
エリオットが片膝をついた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
茫然としてると、母さんが笑った。
「まぁ、すっかり仲良くなって」
「あぁ、微笑ましいな」
いやいや、あんたたちの息子があんたたちの娘に求婚されてるんですけど!? これから、兄妹になるっていうのにありえないでしょーが! 夫婦揃って天然かいっっ。
私、村に帰らせてもらいますっっ!!
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