変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都

文字の大きさ
2 / 3
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

しおりを挟む
 授業が終わり、帰り支度をしていますと、スチュワートがハルコに話しかけているのが聞こえましたの。

「ハルコ、今日僕の部屋に来ないか? 外国から取り寄せた美味しいお菓子があるんだ」
「えぇっ、嬉しい! じゃあ、後で行くね」

 なんですって!? ありえませんわ!!

「ハルコ! レディーがおひとりで殿方の部屋を訪ねるだなんて、破廉恥ですわ。いったい、何を考えていらっしゃいますの!?」

 ハルコは分からないという表情を浮かべました。

「えっ、スチュワートはただの友達だよ。ねっ?」

 あぁ、この子……阿呆の子ですわ。

 すると、スチュワートが苦笑いしました。

「えーっと、僕は、君に結構アプローチしてたつもりだったんだけどな……」
「えっ、スチュワート、何か言った?」

 スチュワートの声量は先ほどまでとなんら変わっておりませんのに、なぜ急に耳が遠くなったのか、理解に苦しみますわ。彼女の耳にオリーブオイルを垂らしてガーゼで耳栓をし、翌日耳掃除をして差し上げた方がよろしいのかしら。

 スチュワートはガックリと項垂れながらも、健気に微笑まれました。

「なんでも、ないよ……」

 その後もハルコはスチュワートだけでなく、ロナルドのクリケットの試合の応援に行ったり、生徒会役員でもないのにセルベスのお手伝いを積極的にしたりと、それぞれの殿方に対して気のあるそぶりを続けまくりましたの。

 そうして気がつけば、保険医のアーロン先生や1学年下のアイドル的存在のベンジャミン、10年ぶりに再会したという幼馴染みのカーティスと、ハルコに好意を抱く殿方はあっというまに拡大していきましたわ。こんなことって、ありますの!?

 スチュワートがハルコに伝えます。

「ハルコみたいな女性は初めてなんだ。僕にとって、君は特別だ」

 ロナルドがハルコに告白します。

「お前のことがほっとけねーんだ!」

 セルベスがハルコに頬を染めます。

「勉強以外のことが頭を支配するなんて、今までなかった」

 アーロン先生がハルコに迫ります。

「教師が生徒に対して特別な感情をもっちゃいけないって分かってるのに、君を目の前にすると暴走しそうだよ」

 ベンジャミンがハルコに抱きつきます。

「ねぇ、年下とはいえ、僕だって男だって分かってます? 自覚、してくださいね?」

 カーティスがハルコに照れ臭そうに笑いかけます。

「やっぱハルコといると、一番落ち着くわ。お前の隣にずっといさせてくれ……」

 そんな殿方の会話を聞き、私の焦れ焦れした気持ちが大爆発し、ハルコに詰め寄りましたの。

「いったいハルコは、どの殿方が好きなんですの?」

 ハルコが惚けた表情で見つめ返します。

「えっ、なんのこと?」
「ですから、スチュワート、ロナルド、セルベス、アーロン先生、ベンジャミン、カーティスのことですわ! お分かりでしょう? 皆様、ハルコのことが好きでアピールしてますのよ。気のあるそぶりばかり見せずに、はっきりしたらどうなんですの?」

 すると、ハルコが笑い出しました。

「アハハ、みんなが私を好き!? そんなこと、あるわけないじゃない! 私なんて可愛くないし、なんの取り柄もないし。ジョセフィーンみたいに綺麗だったらよかったのに、って思うよ」

 鈍感なのか、天然なのか、それとも計算高いのか……過ぎた謙遜は人をイラつかせると、ハルコは知らないようですわね。

 えぇ、私がハルコよりも美しく、レディーとしての知識や教養もあって、ダンスが得意なことはわかっていますわ。ハルコは頭はいいけれど、それ以外は全て平均以下で、私服がダサいことも十分分かっていますわ。
 分からないのは、どうしてハルコがこれほどまでに殿方の、しかも器量の優れた殿方ばかりの気を、これほどまでに引けるのかということですわ。

 この世界に、違和感しかありませんわ!!

「ハルコ、貴女ってどれだけあざといんですの!! そうやって、殿方の気持ちを弄んで楽しいんですの!?」

 そこへ、スチュワート、ロナルド、セルベス、アーロン先生、ベンジャミン、カーティスがハルコの元へと駆け寄り、申し合わせたかのように一斉に叫びました。

『ハルコを虐めるな!!』

「ジョセフィーン、君がそんな意地の悪い女性だったなんてがっかりだよ」
「お前、悪女だな」
「君はもっと分別のある女性だと思っていたのだが」
「ジョセフィーン、女性の嫉妬は醜いよ」
「あーぁ、先輩にはがっかりです」
「ハルコは俺が守る。もう、近づくな!」

 ちょ、なんですの……!?

 すっかり私は、彼らに悪の令嬢というレッテルを貼られてしまいました。


 ……私は知らなかったのです。私がいるのが乙女ゲームという世界で、主人公のハルコを取り巻く男性キャラとの恋愛シミュレーションゲームにおいて、私が悪役令嬢というキャラだということを。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

悪役令嬢の物語は始まりません。なぜならわたくしがヒロインを排除するからです。

霜月零
恋愛
 わたくし、シュティリア・ホールオブ公爵令嬢は前世の記憶を持っています。  流行り病で生死の境を彷徨った時に思い出したのです。  この世界は、前世で遊んでいた乙女ゲームに酷似していると。  最愛のディアム王子をヒロインに奪われてはなりません。  そうと決めたら、行動しましょう。  ヒロインを排除する為に。  ※小説家になろう様等、他サイト様にも掲載です。

悪役令嬢に転生したので断罪イベントで全てを終わらせます。

吉樹
恋愛
悪役令嬢に転生してしまった主人公のお話。 目玉である断罪イベントで決着をつけるため、短編となります。 『上・下』の短編集。 なんとなく「ざまぁ」展開が書きたくなったので衝動的に描いた作品なので、不備やご都合主義は大目に見てください<(_ _)>

この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!

naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。 そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。 シオンの受難は続く。 ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。 あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。

ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都
恋愛
 ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。  そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。  それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。

処理中です...