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再会
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【クロード回想と語り】
母は、小さな隣国のプリンセスだった。それを、前王であった父が半ば強引に政略結婚をすすめ、母は16の歳に嫁がされることとなったのだ。
婚姻を結ぶと同時に母の国は統合とは名ばかりに吸収される形となり、母の祖国は消えた。母の両親である国王夫妻は政権を奪われ、あらぬ罪で投獄され、苦しみのうちにこの世を去った。
愛してもいない男との強引な婚姻、殺されたともいうべき愛する両親の死。
それでも最初は、夫となる男を愛そうと努力した。母にはもう、頼るべき人は他にはいなかったのだから。だが、金と権力に溺れ、あちこちで妾を侍らせ、気が向いたときだけ性欲処理のように扱われるような待遇に、母は次第に躰も心も病んでいった。
そんな中、母が懐妊し、半狂乱となった。愛してもいない、いや、憎むべき男の子供を宿し、その子供が王となることに恐れを抱いていたのだ。
母は、どうにかして子供を堕ろそうとしたが、ようやく訪れた世継ぎ誕生の機会を周りが逃すわけがない。
母は軟禁状態となり、一日中ベッドで監視されることとなった。そして……衆人監視の下、私が生まれた。
母は、産みたくないと思っていたものの、生まれた我が子を見て、それなりの母性本能が働いたらしく、『自分で育てたい』と申し出たそうだ。だが……育児能力に欠ける、との判断で我が子を奪われた。
私は、乳母に育てられ、その子供であるヒューバートと共に成長した。
だが、やはり母を慕う気持ちは抑えきれず、いつもベッドで横たわる母をメイドが開ける扉の隙間から覗いていた。
時々、扉の奥からは微かに歌が聞こえてきた。それは、母の祖国の子守唄だった。
どこかもの悲しく優しいメロディーに、幼心に母への思慕を募らせた。
そんなある日、重税を苦にして思い余った国民達が手に手に武器をとり、城の門へと集まる事件が起こった。母と私は秘密の通路を抜けて城を脱出し、辿り着いたのがこの城だった。
要塞を固めるために多くの者が本城に残ったため、僅かな者だけを連れてこの城に留まることになった。こんな緊迫した雰囲気の中、私は母と一緒に過ごせる事が嬉しくてならなかった。
この時、初めてと言っていいほどまともに母と言葉を交わせたのだから。
『母君、ようやく一緒に過ごす事が出来ますね』
そう言って、にっこりと微笑みかけた幼かった私に、
『えぇ、そうね……』
そう言って振り返ると、母は目を見開き、口を僅かに開けてビクリと躰を震わせた。
その時の私には分かるすべもなかったが、生後間もなくの顔しか見たことがなかった母は、父に生き写しのように成長した私を見て、驚きを隠せなかったのだ。
『は、はぎみ?』
『……なんでも、ないわ……少し疲れたようなので、休んできます……』
そう言って、寝室へと去って行った。
それでも、なんとか母の気を引きたい一心で、私は寝室に籠る母へ花を届けた。
母は花を見ると微笑み、嬉しそうにはするものの、決して私の手からは受け取ろうとはしなかった。それでも、私は母の顔を見られるだけで幸せだった。私を見るときの、切なく、苦しそうな表情にたとえ気づいていても……
私は翌日も、その翌日も、寝室の母に花を届け続けた。
その頃、本城での国民の一揆は軍の力によって、たくさんの罪のない者達の血が流れ、速やかに収束へと向かっていた。そして、私達は、本城へと戻ることとなった。
本城では母の顔を見ることなく、それからほどなくして彼女はこの世を去った。
亡くなった母の部屋には、私の贈った花が押し花にして残されていた……
母は、小さな隣国のプリンセスだった。それを、前王であった父が半ば強引に政略結婚をすすめ、母は16の歳に嫁がされることとなったのだ。
婚姻を結ぶと同時に母の国は統合とは名ばかりに吸収される形となり、母の祖国は消えた。母の両親である国王夫妻は政権を奪われ、あらぬ罪で投獄され、苦しみのうちにこの世を去った。
愛してもいない男との強引な婚姻、殺されたともいうべき愛する両親の死。
それでも最初は、夫となる男を愛そうと努力した。母にはもう、頼るべき人は他にはいなかったのだから。だが、金と権力に溺れ、あちこちで妾を侍らせ、気が向いたときだけ性欲処理のように扱われるような待遇に、母は次第に躰も心も病んでいった。
そんな中、母が懐妊し、半狂乱となった。愛してもいない、いや、憎むべき男の子供を宿し、その子供が王となることに恐れを抱いていたのだ。
母は、どうにかして子供を堕ろそうとしたが、ようやく訪れた世継ぎ誕生の機会を周りが逃すわけがない。
母は軟禁状態となり、一日中ベッドで監視されることとなった。そして……衆人監視の下、私が生まれた。
母は、産みたくないと思っていたものの、生まれた我が子を見て、それなりの母性本能が働いたらしく、『自分で育てたい』と申し出たそうだ。だが……育児能力に欠ける、との判断で我が子を奪われた。
私は、乳母に育てられ、その子供であるヒューバートと共に成長した。
だが、やはり母を慕う気持ちは抑えきれず、いつもベッドで横たわる母をメイドが開ける扉の隙間から覗いていた。
時々、扉の奥からは微かに歌が聞こえてきた。それは、母の祖国の子守唄だった。
どこかもの悲しく優しいメロディーに、幼心に母への思慕を募らせた。
そんなある日、重税を苦にして思い余った国民達が手に手に武器をとり、城の門へと集まる事件が起こった。母と私は秘密の通路を抜けて城を脱出し、辿り着いたのがこの城だった。
要塞を固めるために多くの者が本城に残ったため、僅かな者だけを連れてこの城に留まることになった。こんな緊迫した雰囲気の中、私は母と一緒に過ごせる事が嬉しくてならなかった。
この時、初めてと言っていいほどまともに母と言葉を交わせたのだから。
『母君、ようやく一緒に過ごす事が出来ますね』
そう言って、にっこりと微笑みかけた幼かった私に、
『えぇ、そうね……』
そう言って振り返ると、母は目を見開き、口を僅かに開けてビクリと躰を震わせた。
その時の私には分かるすべもなかったが、生後間もなくの顔しか見たことがなかった母は、父に生き写しのように成長した私を見て、驚きを隠せなかったのだ。
『は、はぎみ?』
『……なんでも、ないわ……少し疲れたようなので、休んできます……』
そう言って、寝室へと去って行った。
それでも、なんとか母の気を引きたい一心で、私は寝室に籠る母へ花を届けた。
母は花を見ると微笑み、嬉しそうにはするものの、決して私の手からは受け取ろうとはしなかった。それでも、私は母の顔を見られるだけで幸せだった。私を見るときの、切なく、苦しそうな表情にたとえ気づいていても……
私は翌日も、その翌日も、寝室の母に花を届け続けた。
その頃、本城での国民の一揆は軍の力によって、たくさんの罪のない者達の血が流れ、速やかに収束へと向かっていた。そして、私達は、本城へと戻ることとなった。
本城では母の顔を見ることなく、それからほどなくして彼女はこの世を去った。
亡くなった母の部屋には、私の贈った花が押し花にして残されていた……
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