盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹

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ローナ 13歳編

関わらない方が良い?

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「皆々様にお会いできる今夜を、わたくし心待ちにしておりましたの。陛下とは私が父に連れられて王城を訪れて以来ですわね。妃殿下とはつい先日のお茶会以来ですわ、先日のお茶会もとても素晴らしいものでしたわ」


 リーヴェを押し切って先にベーゼヴィヒトが挨拶に行った、という光景を誰もが非常識だと見ている中で、平然と繰り広げられる周りの令嬢に対するマウント取り。

 だが逆にそうする事で、そのような暴挙を王家に許していただけるほどに深い仲であると示唆しようとしている。
 カミラは直情的だが、馬鹿と一言で言うにはタチが悪い。


「お茶会といえば……あの日、殿下も参加していらっしゃいましたよね。毎回いらっしゃるわけではないようですから、前日の私は不安で不安でたまらなかったのです……けれど殿下がいらした瞬間に、不安なんて吹き飛んでしまって!嬉しかったですわ。また"二人で"お話ししましょうね」


 今、"二人で"のところ、こっちに向かって言ってなかった?今まで壁に反射して聞こえてきたカミラの音声が直接私の方に飛んできた気がする。

 いや、敵対されましても……一応、婚約破棄はされてるので……。


 というか今夜カミラがここに参加できているということは、シナリオ通りではなくなった事で、やっぱりとの関係が続いているということかしら。


 実はカミラはヒロインやアルブレヒト、セシル、ローナの一つ下の学年で、エンゲルと同い年である。


 今夜はデビュタントを迎えた13歳の少女たちを主役とした舞踏会という名目の筈なので、それ以下、またはそれ以上の女性が参加するためには、同じくデビューの年である13歳の少年たちが受け取った招待状の同伴者として参加する他ない。


 つまり、カミラにはその伝手がある。

 カミラの一つ上であり、私たちと同い年のーー『シンデレラの恋 ~真実の愛を求めて~』の攻略対象であり、ゲーム開始時ではカミラの婚約者として登場する彼に届いた招待状を利用したということだろう。


 王太子殿下とローナの婚約破棄によって、次の婚約者に選ばれる為に彼との婚約を破棄し、見事王太子殿下の婚約者の座を勝ち取る。

 その予定が何故か狂ってしまった今、カミラと彼の婚約は続いている……ということだろう。


 彼はゲーム登場時には明朗快活なムードメーカーで、王太子殿下と並ぶゲームの二大巨頭として看板を背負っていた……が。


 シナリオの中でも語られた通り、カミラの婚約者である今は、彼女のいいように扱き使われているらしい。

 止まらない口で王家の賛美と王太子殿下への愛を語りつつ、周りへのーー主に私への牽制を続けるカミラを止めようとして失敗しているのが聞こえているので。


「ベーゼヴィヒトの暴挙はリーヴェ侯爵への報告に値する。例え子供だろうと、ここは公の場。許される事と許されない事の区別ができないような者は、そもそも行かせた親の誤った判断だ。責任はベーゼヴィヒト侯爵に取らせよう」


 嘲るような響きでボソリと呟いた兄は、きっと悪そうな顔をしている。
 リーヴェ家に突っかかるようになってきたのはカミラの祖父である先代のベーゼヴィヒト侯爵かららしく、その因縁は深い。

 冷静で感情の起伏があまり無い兄でさえこうなのだから、父などは尚更で。


「陛下が何も仰らないのですから、程々になさってくださいませ。所詮、子供のしたことです」
「……だがな」


 因縁の血を相手にして感情が昂るのはわかるが、ちょっとは冷静になってほしい。
 私としては、そんな面倒な人たちとはまず関わるのをやめよう?と言いたいところである。


「……今夜の主役はお前だ。ローナの意見に同意しよう」


 渋々仕方ないと私に同意した様子の兄に苦笑しつつ、王家の血筋である公爵家よりも長い挨拶を続けるカミラの方に顔を向ける。


 見えないからこそ敏感に、場の雰囲気が険悪になってきているのを肌で感じた。

 婚約を済ませていない殿下を狙っているのはカミラだけではない。今宵の令嬢たちはみな、虎視眈々とその隣を見ているのだから。


 ついに痺れを切らした王妃様が声を上げた。場の雰囲気が最悪になる前に、カミラの暴走を止めたのだ。


「カミラ。貴方はまだ話し足りないようなので、私が後で伺います。ですから、今はそれくらいに」
「はいっ、妃殿下の仰せのままに」


 ……まさかこの言葉を引き出すために粘っていたわけではない、わよね?
 話を制止されたにも関わらず、カミラの声はそう思ってしまうほどに弾んでいた。


 締めの挨拶をするカミラたちの声を合図に、私は改めて階段を登るために足を上げる。
 そんなに段差の高くない階段なので、滑るように歩けば優雅に見えるだろうか。


 引っかかって転ばないように一歩一歩を踏みしめて歩く私の、前方より少し上のあたりから二つの降りてくる足音が聞こえる。

 兄さんが私の腰に手を回して、万が一にもまたカミラがぶつかってこないようにと体を引いた。

 露骨な動作は向こうにも意図が伝わってしまうだろうが、さすがにもう一度は嫌だ。されるがままに体をスライドさせる。


 カツン、カツンと高そうなヒールの音が耳横に近づいてきた。

 カツン、とすぐ隣で聞こえてーー。



「ブス」



 ………………………………。


 そろりと顔を上げて兄さんの方を向く。



「ベーゼヴィヒトは潰す」


 ……落ち着いてください、とは言えなかった。

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