妾に恋をした

はなまる

文字の大きさ
3 / 44

3本日からお世話になります

しおりを挟む

 
 週が明けてミーシャはガストン侯爵邸にやって来た。

 言われた通り着替えのみだったのでトランクひとつ。ドレスは先日と同じドレスだ。

 玄関に近づく前に2階の窓からメリンダ様が私をじっと見つめている視線に気づいた。

 私は頭を下げた。

 それは心配するに決まっている。

 (でも奥様私は決してあなたの敵ではありません。私なんかネイト様が相手にするはずがないです。あなたはとても可愛らしい妻ですから。ご安心下さい)

 そう伝えたかった。無理だが…


 執事に案内され奥様に挨拶をする。

 「いらっしゃい。ベルランド嬢と呼ぶのは少し他人行儀かしら?」

 ガストン侯爵は優しそうな感じの紳士と言った感じだったが奥様は少しきつそうな感じがした。

 ネイト様は奥様似かしら?そんな事を思う。メリンダ様は20歳で年下。ピンク色の髪がふわふわして可愛い印象だったが私を見つめた瞳は氷碧色でとても冷たい感じがした。

 さっきもその視線が痛いほどだった。

 (当たり前ですよね。私は夫の閨の相手をする女なのだから…

 でも、私はただの道具。彼の子種を受ける器と言うだけの存在なんです。メリンダ様の可愛らしい容姿にかなうはずもないんですから)

 
 「はい、奥様。ミーシャとお呼びください。本日からお世話になります。どうぞよろしくお願いします」

 そう言って契約書を渡す。

 奥様はそれを受け取って歩き始めた。

 「ええ、こちらこそ。よろしくね。では、ミーシャ離れに案内しましょう」

 早速離れに案内された。

 「ミーシャ。ここが貴方の住まいになる離れです。掃除は済ませてあります。ここにあるものは何でも好きに使っていいですから…それから出掛けるときは前もって申請をしてちょうだい。食事はここに運ばせます。あなたはこの離れから勝手に出ないようにして下さい。それからメリンダには敬意を払うように。いいですか?」

 「はい、わかりました」

(まあ、当然だろう。奥様の目に触れることは気分を害することになる。だって妻は格上の公爵家。妾を迎えるのも跡取りのためと限定されているのだから…)

 私はわかっていると頷く。

 奥様は満足したようにふっと微笑んだ。

 「わからないことは使用人のカティに尋ねるように…今夜は夕食を一緒に取りますからそのつもりでいて下さい。それまではゆっくり休んでちょうだい。あっ、それから月のものはいつも決まっているほうなの?」

 「はい、契約書にも書きましたが周期は決っているほうだと思います」

 「そう、では早速ネイトにも話しておきます。今夜はまあ、ゆっくりなさい。では、オホホホ」

 「はい、ありがとうございます」

 私の肌が一気に逆立った。結婚歴のある女が閨を言い渡されて動揺するなどおかしいだろうに…

 奥様は上機嫌で離れを後にした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この幻が消えるまで

豆狸
恋愛
「君は自分が周りにどう見られているのかわかっているのかい? 幻に悋気を妬く頭のおかしい公爵令嬢だよ?」 なろう様でも公開中です。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。 ※新作です。アルファポリス様が先行します。

その愛情の行方は

ミカン♬
恋愛
セアラには6歳年上の婚約者エリアスがいる。幼い自分には全く興味のない婚約者と親しくなりたいセアラはエリアスが唯一興味を示した〈騎士〉の話題作りの為に剣の訓練を始めた。 従兄のアヴェルはそんなセアラをいつも見守り応援してくれる優しい幼馴染。 エリアスとの仲も順調で16歳になれば婚姻出来ると待ちわびるセアラだが、エリアスがユリエラ王女の護衛騎士になってしまってからは不穏な噂に晒され、婚約の解消も囁かれだした。 そしてついに大好きなエリアス様と婚約解消⁈  どうやら夜会でセアラは王太子殿下に見初められてしまったようだ。 セアラ、エリアス、アヴェルの愛情の行方を追っていきます。 後半に残酷な殺害の場面もあるので苦手な方はご注意ください。 ふんわり設定でサクっと終わります。ヒマつぶしに読んで頂けると嬉しいです。なろう様他サイトにも投稿。 2024/06/08後日談を追加。

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

処理中です...