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3本日からお世話になります
しおりを挟む週が明けてミーシャはガストン侯爵邸にやって来た。
言われた通り着替えのみだったのでトランクひとつ。ドレスは先日と同じドレスだ。
玄関に近づく前に2階の窓からメリンダ様が私をじっと見つめている視線に気づいた。
私は頭を下げた。
それは心配するに決まっている。
(でも奥様私は決してあなたの敵ではありません。私なんかネイト様が相手にするはずがないです。あなたはとても可愛らしい妻ですから。ご安心下さい)
そう伝えたかった。無理だが…
執事に案内され奥様に挨拶をする。
「いらっしゃい。ベルランド嬢と呼ぶのは少し他人行儀かしら?」
ガストン侯爵は優しそうな感じの紳士と言った感じだったが奥様は少しきつそうな感じがした。
ネイト様は奥様似かしら?そんな事を思う。メリンダ様は20歳で年下。ピンク色の髪がふわふわして可愛い印象だったが私を見つめた瞳は氷碧色でとても冷たい感じがした。
さっきもその視線が痛いほどだった。
(当たり前ですよね。私は夫の閨の相手をする女なのだから…
でも、私はただの道具。彼の子種を受ける器と言うだけの存在なんです。メリンダ様の可愛らしい容姿にかなうはずもないんですから)
「はい、奥様。ミーシャとお呼びください。本日からお世話になります。どうぞよろしくお願いします」
そう言って契約書を渡す。
奥様はそれを受け取って歩き始めた。
「ええ、こちらこそ。よろしくね。では、ミーシャ離れに案内しましょう」
早速離れに案内された。
「ミーシャ。ここが貴方の住まいになる離れです。掃除は済ませてあります。ここにあるものは何でも好きに使っていいですから…それから出掛けるときは前もって申請をしてちょうだい。食事はここに運ばせます。あなたはこの離れから勝手に出ないようにして下さい。それからメリンダには敬意を払うように。いいですか?」
「はい、わかりました」
(まあ、当然だろう。奥様の目に触れることは気分を害することになる。だって妻は格上の公爵家。妾を迎えるのも跡取りのためと限定されているのだから…)
私はわかっていると頷く。
奥様は満足したようにふっと微笑んだ。
「わからないことは使用人のカティに尋ねるように…今夜は夕食を一緒に取りますからそのつもりでいて下さい。それまではゆっくり休んでちょうだい。あっ、それから月のものはいつも決まっているほうなの?」
「はい、契約書にも書きましたが周期は決っているほうだと思います」
「そう、では早速ネイトにも話しておきます。今夜はまあ、ゆっくりなさい。では、オホホホ」
「はい、ありがとうございます」
私の肌が一気に逆立った。結婚歴のある女が閨を言い渡されて動揺するなどおかしいだろうに…
奥様は上機嫌で離れを後にした。
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