妾に恋をした

はなまる

文字の大きさ
10 / 44

10初めての夜(2)

しおりを挟む

  ご主人が私から身体を離したせいでベッドの敷布に液体が流れ出た。

 今度はご主人様の顔が強張った。

 「ミーシャ!まさか…はっ?どういう事なんだ?君は結婚していたんだろう?これは…ミーシャ本当のことを言うんだ。君は純潔だったのか?」

 その声はかなり焦っている。

 私はこれはまずいと思った。騙していたと言われたら追い出されるかもしれない。

 ここは誠心誠意謝らなくてはとぐっと起き上がって頭を下げる。

 「申し訳ありません。その通りです。でも、もう純潔ではなくなりましたから…」

 「ばか。誰がそんな事を…いいから事情を話すんだ」

 「実は前夫は前の奥様を愛するあまり出来なかったんです。でも、私達も色々努力はしたんです。ですが…半年余りで亡くなってしまいましたので…あっ「だったら、こんな事するべきじゃなかっただろう!」…」

 ネイト様は怒っているのか後悔しているのかわからなかった。

 (追い出される)


 でも、ここで引き下がるわけには…

 「で、でも。閨の知識だけは無駄にありますから、気にしないで下さい」

 「そ、そういう問題ではない!」

 ご主人様は怒りに唇を震わせた。きっと…

 (ああ~火に油を注いでしまったか…)

 私はもう一度ネイト様の顔をしっかり見据える。

 「ご主人様。それは私の決める事です。私はこれで良かったんです。事情は説明しました。お願いです。ここに置いて下さい」

 ネイト様は考え込んだ。

 しばしの沈黙……


 「ミーシャはそれでいいのか?」

 「はい」

 「だったら今度は時間をかけよう」

 「へっ?」

 そう言った唇はご主人様に食いつかれた。

 何度もキスをしてゆっくり身体に触られる。

 こんな経験はある。トーマスも何度か試したから…

 でも、こんな気持ち良かったかな?それに甘い気もする。

 次第にうっとり心地よい感覚になって… 

 ご主人様にされるままあちこち愛撫されて解されて勃かまったものを受け入れた。

 なぜか身体の奥が熱くなって感じたことのない快感に襲われた。

 彼のものを感じてナカが震えた。

 うごめくそれが。

 膨張していくそれに。

 例えようのない充足感が埋め尽くす。

 そして吐精が終わると彼に優しく抱きつかれた。

 「痛くなかったか?」

 「はい、き、気持ちよくなって…」

 思わず私も彼にしがみ付いた。

 (こんな事いけないのに。こんなことをすればおかしな気持ちになるかもしれない。すぐにやめるべきなのに…)

 それでもほんのひと時でいい。温もりが欲しいと願ってしまった。

 「俺もすごく気持ちよかった。ミーシャありがとう」

 「そんな…」

 彼の吐息が耳元にかかり私は彼の胸に顔を埋めた。

 どれくらいそうしていたかもわからない。



 ご主人様が優しいキスをしてゆっくり離れた。

 「そろそろ帰る。明日からしばらく忙しい。ミーシャはゆっくり休め、いいな?」

 「はい。ご主人様」

 彼は服を着るとそのまま出て行った。

 鍵を外からかける音がして彼が最初から帰るつもりだったと思った。

 (当たり前じゃない。私は妾。子供を産むためだけの道具。それを忘れちゃだめ!)

 私はそう心に言い聞かせた。


 彼が去った冷たいベッドに横になる。

 そして知った。

 身体を繋ぐことがこんなに心を満たしてくれる行為だということを。

 そして温もりが離れた時こんなに寂しいと感じることも…


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。 ※新作です。アルファポリス様が先行します。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

この幻が消えるまで

豆狸
恋愛
「君は自分が周りにどう見られているのかわかっているのかい? 幻に悋気を妬く頭のおかしい公爵令嬢だよ?」 なろう様でも公開中です。

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

その愛情の行方は

ミカン♬
恋愛
セアラには6歳年上の婚約者エリアスがいる。幼い自分には全く興味のない婚約者と親しくなりたいセアラはエリアスが唯一興味を示した〈騎士〉の話題作りの為に剣の訓練を始めた。 従兄のアヴェルはそんなセアラをいつも見守り応援してくれる優しい幼馴染。 エリアスとの仲も順調で16歳になれば婚姻出来ると待ちわびるセアラだが、エリアスがユリエラ王女の護衛騎士になってしまってからは不穏な噂に晒され、婚約の解消も囁かれだした。 そしてついに大好きなエリアス様と婚約解消⁈  どうやら夜会でセアラは王太子殿下に見初められてしまったようだ。 セアラ、エリアス、アヴェルの愛情の行方を追っていきます。 後半に残酷な殺害の場面もあるので苦手な方はご注意ください。 ふんわり設定でサクっと終わります。ヒマつぶしに読んで頂けると嬉しいです。なろう様他サイトにも投稿。 2024/06/08後日談を追加。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

処理中です...