妾に恋をした

はなまる

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14無駄飯食らい

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 私はあの日からネイト様が来ることを秘かに期待した。

 でも、次の日もその次の日も彼はやって来なかった。

 (しばらく忙しいと言っていたじゃない。ううん、私の事なんか嫌になったに違いない)

 そんな感情を持て余した。

 妾なのにそんな特別な気持ちを持ってはいけないと何度も自分に言い聞かせる。

 ひとり部屋に閉じこもっているとどんどんおかしな考えになってしまう。

 そうだ、実家に手紙を書こう。

 私は病気でな混んでいる母にとてもよくしてもらっているから心配ないと書いた。

 弟や妹は無事に学園に入る事が出来たし、父は相変わらず仕事に忙しくしているだろう。

 
 3日後いいことを思いついた。

 私はずっと考えていた。

 実家の子爵領は土地がやせて収穫が少ない。そんな土地でもしっかり育ついい作物がないだろうかとずっと考えていた。

 ここの庭は広い。離れの前に少しばかり更地があってここで試しに作物を育ててみてはどうだろうかと…

 早速奥様にお願いしてその土地に作物を植えることを許可してもらった。

 買い物に出かけると届けを出してカティと一緒に植え付ける苗を買い出しに行った。

 運よくここには庭師もいて話を聞くことが出来て事前に植える作物の事や土地に入れる肥料もどんな肥料がいいか相談した。

 そして決まったのがジロ芋と茶豆だった。これは最近入って来た品種で痩せた土地でも育つ作物ものらしい。


 街の花屋には野菜の苗木はなかった。

 そこで植木屋があると教えてもらいそこに向かった。

 「ミーシャ様大丈夫ですか?少し遠いですよ」

 「大丈夫よ。これでも実家ではいつもは畑仕事もしていたのよ」

 「子爵のご令嬢がですか?」

 カティは驚くが私は平然と言った。

 今日来ている服は実家から持って来た茶色のワンピースでカティが着ている服装とあまり大差がないくらいだった。

 髪も後ろで一つに束ねただけ。とても淑女には程遠い格好だった。

 だって私は与えられた仕事すらしていないのだ。用意していただいた服を着る価値もないのではという思いがクローゼットにあった服を着るのをためらわせた。

 そう言うわけで服は持って来たワンピースになった。


 植木屋に着いた。私達は植木屋の人に聞いて案内してもらう。

 「お客さんの探してるのはこれかい?」

 「これがジロ芋?」

 「はい、こっちが茶豆ですよ。でも、こんなものどうするんです?」

 「カティ見て。オッド(庭師の名前)が言ってたジロ芋があったわ。あっ、こっちは茶豆だって」

 「へぇ~こんな苗木なんですね。ちっちゃい~、こんなんじゃどうやって食べるんです?」

 カティは町育ちで作物の育っているところを見たこともないと言う。

 だからそんな事を思ったのだろう。

 「これを植えて育てるのよ。数か月したら大きくなって…あっ、ジロ芋は土の中で育つのよ。茶豆は葉が伸びて花が咲いて実が着くの。その実が膨らんで食べれるようになるのよ。ああ~楽しみだわ」

 私は久しぶりに気分が高揚した。

 「ここにある苗木全部下さい。それと肥料も届けてもらえる?」

 場所を伝えると植木屋はオッドを知っていた。

 「あんた、あのガストン侯爵家のメイドか?」

 「あなたね。この人は…「ええ、そうです。奥様がそう言ったものを育ててみたいとおっしゃって」ミーシャさ」

 私はカティにそれ以上言わないでと首を振る。

 (妾を置いたなんて知られるのはガストン侯爵家も嫌だろうと思ったからだ。それに身なりは平民に近い。メイドと思わせておこう)

 「へぇ~美人のメイドを雇ったんだな。それにあんた上級メイドだろう?身なりもこっちの女よりいいもんな。奥様のお気に入りってやつか?せいぜい旦那様に食い物にされないように気をつけな。貴族っていうのは身分の低い女を下に見てるからな。なにをしてもいいって思ってやがる。おっと、仕事仕事」

 植木屋の若い男はそんな事を言いながら言ったものを揃えて行く。

 「では、代金を」

 「はい、まいど。今日中に侯爵様の所に持って行きますんで」

 「ええ、助かります。よろしく」

 私とかティは植木屋を後にした。


 その日から私はジロ芋と茶豆を育てる事に没頭するようにした。

 ご主人様は相変わらずやってこなかった。

 きっと嫌われた。でも子供はどうするんだろう?

 奥様はまだ何も言ってこないが来週にもなれば何か言われるかもしれない。

 ここを追い出されたらどうしよう。

 そんな不安に襲われながら毎日を過ごした。

 ネイト様にときめいた感情など遠い記憶になって行く。

 私はもう用なしなのか?

 これではまさに無駄飯食らいではないか!と思う。


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