妾に恋をした

はなまる

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36仲たがい

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 私の声を聞きつけてカティが走って来た。

 「ミーシャ様大丈夫ですか?若奥様一体何があったんです?」

 カティは私をゆっくり立たせると肩を貸してくれた。

 「何でもないわ!」

 「カティお願い」

 「ふん!あなたここから出て行きなさいよ。カティあなたもこんな女に構うんじゃないわよ」

 若奥様はまだ怒りが収まらないのか私に声を荒げた。

 「メリンダ様もうその辺にして…さあ、行きましょう」

 「だってパミラ。ネイトはこの女の所に入り浸りなのよ。私は妻よ」

 「もちろんです。ですがこの方も侯爵家の子供を身ごもっておいでなのです。どうしようもありません」

 「もう、一体何のために…」

 「ミーシャ様。奥様が申し訳ありませんでした。どうかお許しください」

 若奥様付の侍女パミラはミーシャに頭を下げた。彼女は年の頃なら40代。侯爵家の侍女長と同じ年代の女性だった。

 それだけに行き過ぎたと思ったのだろう。

 「お互い大切な身です。今後こんなことがあれば許しませんから」

 私は何とか気持ちを押しとどめた。

 (それなら先に止めればよかったのに)と思った。

 ふたりはそのまま出かけて行った。


 私は離れに入ると横になった。まだ少し腹部に痛みがあった。

 義理母も来て大騒ぎになった。

 「義理母様、大丈夫です。もう痛みもほとんどありませんし」

 「何を言ってるの。万が一と言うこともあるのよ。すぐに医者を呼ぶわ」

 そうやって医者に来てもらうことになった。


 「転ばれたとか?」

 「はい。先生どうでしょうか?赤ちゃんは無事ですか?」

 私はそこまでとは思ってはいたが何しろ不安だったので医者に聞いた。

 「ううん…少し不安定な状態かもしれません。まあ、きっと大丈夫とは思いますがとにかく安静にして下さい。今すぐ流産にはならないと思いますが今晩一晩は起き上がったり歩いたりしないように、明日もう一度診察に来ますので」

 「わかりました」

 そう言って医者は帰って行った。


 カティが我慢できないと大奥様にしゃべった。

 「若奥様がミーシャ様を突き飛ばされたんです。私は声を聞いて駆けつけた時にはミーシャ様は転んでいてお腹が痛いとおっしゃっていました」

 「まあ、メリンダが?ミーシャそうなの?」

 私は隠し通せることもないと頷いた。

 「まったく、あの嫁は世話ばかりかけるんだから。メリンダには私からきつく言っておきます。今後絶対にこんな事の無いよう十分気をつけるわ。ごめんなさいねミーシャ。とにかく安静にしてなきゃ。カティ、ミーシャに温まるお茶を煎れて」

 「はい、すぐに」


 それから数時間じっとしているとすっかり落ち着いた。

 出血もなく痛みも治まった。

 夕方になりネイト様が帰って来て事情を聞いたのだろう真っ青な顔で走り込んで来た。

 「ミーシャ無事か?」

 「ネイト様?」

 「聞いた。すまんメリンダがひどい事を…子供は大丈夫なのか?」

 「ええ、痛みも出血もありませんからきっと大丈夫だと…」

 「そうか…良かった。今夜は俺はここで付き添うからな」

 「でも、そんな事をしたら若奥様は私に出て行けとおっしゃいました。私はここにはいない方がいいのでは?」

 「あいつはそんな事を言ったのか?もう、許さない。あいつは実家に帰らせる。子が生まれるまで帰ってこないように話をする。だから安心してここにいればいい。そうだ。メリンダが実家に帰ったらミーシャは本邸に来ればいい。そうすれば俺も安心だし日中も誰かが近くにいるからミーシャも安心だろう?」

 「そんな事は困ります。私が実家に帰りますから…これ以上奥様と仲たがいするわけにはいきません。生まれてくる子供の事もあるんです。ネイト様私は妾なんですよ。私が身を引くのが当たり前です」

 
 だが、メリンダは大奥様やネイトからかなり怒られて結局ご自分が実家に帰ると言い出し翌朝実家に出発されてしまった。

 私がそれを知ったのはメリンダ様が出て行かれた後の事だった。



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